7 四日目。福島・山形(11)
単独行の最後、国道458号による山越え約54km(ルート距離)が最大難関でした。が――現金な話ですが――この先に蘭が待っているんだと心励まし、言わば心理的に力づくで突破したのでありました。
ここはそうとう寂しく、狭い山の道で、正直きつかったです。国道にもかかわらず一部未舗装区間がありましたし、現世でも走るときは、要注意でしょう。
国道47号、鶴岡街道に到達してからは東へ進み、新庄市の市内へ。国道13号にて待ち構えていた蘭と合流を果たし、今日は終わったのでありました。
二人とも満足です。特に蘭にとっては――
本日は大半が別行動でしたが、半ば無理してそうしたことにより、結果的に得体の知れない恐怖感に打ち勝てたのです。これは、かなりの自信につながったのでした。
午後7時すぎ。
ラインにして約390kmです。
今日一日で、ラインを約116km伸ばすことができたのでした。(頑張りました)
茅ヶ崎~青森間は“まっすぐライン”にして約625kmですので、これで6割方走破したことになります。いよいよ、ゴールが意識される地点にまで来た、来てしまったのでした。
JR駅前のビジホに問題なく二部屋取れました。
お洒落なレストランで食事(とデザート)を済ませた後は、市営公園にてたまたま催されていた盆踊り祭りに飛び入り参加です。
クラゲやゼリービーンズ、あるいはシダ類の形した住民たちの輪に混じって、太鼓に合わせて、見よう見まねで手を足を、ふらふら、のそりのそり、とさせて踊ってみたのでした。
「うふふ……」「アハ……」
東北の妖怪達も、踊りの輪に混じっているのかも……。そんな気持ちにさせられたひとときだったのです。
じんわり滲んだ汗の肌にそよ風が吹き、ゆらゆら揺れる提灯と、裸電球が、光と闇をかき混ぜます。金魚すくいや綿アメなどの屋台通りを冷やかしながら、時折、その光陰が流れる蘭の体、滑らかな曲線に、密かに、はっとさせられたりしたのでした――
陽気な、それでいてどこか物寂しい笛の音に送られて。
人生の中の、今日という日が終わったのでありました。




