5 二日目。栃木(2)
朝の身支度も、ホテルレストランでの食事時も、ぶっすーーー、とした態度を貫く蘭なのであります。
このボクは全然悪くないのに、流血までしたのに、と思う行でしたが、だからこそ逆に蘭に救いがないというか、手がないというか。でも、反対にぼくの方が誤っていたのなら、それこそホントウに救いがなかったというか――
「~~~!」
頭を抱え込む行くんなのであります。
旅の二日目。7月22日、月曜日。午前8時30分。
ホテル前にコン吉、ケンケンを並ばせます。荷物の搭載です。
さすがにこの頃になると蘭のご機嫌もだいぶ回復していたのですが、まだ完全には戻り切れていません。
というのも、別の問題も発覚したからでした。
それは、この着衣、黒革のハイネック・ノースリーブトップと、ローライズショートパンツの、不思議な現象が絡んでいることであったのです。
昨夜、水洗いしたのが影響したのでしょうか? トップの丈が、上へ、つまり少し短くなったのでした。同様に、パンツの裾、サイドが少し上にあがり、逆にウエストは少し下がったのです。
さらには布地の厚さも、若干、薄くなったようです。体の線が、昨日よりも出やすくなってしまっていたのでした。
最初、単純に縮んだのかと思ったのですが、フィット感は変わっていません。つまり、形だけ、面積だけがよりビキニに近づいた、ということで、これはもう、異世界の不思議布地の仕様なのだと、受け入れる他ないようでした。
この世界の住人たちの服飾事情も、案外こんなところに理由があったのかもしれません。
――あと、蚊をはじめとする、積極的に襲ってくる迷惑害虫はいないようです。これはせめてもの慰めでした。
胸の下、鳩尾を隠すように腕を組んでいる蘭が、綺麗ながらも硬い声で宣言します。
「あらかじめ言っておきます。写真はお断りですから」
「はい……」それは、正直とても、残念至極。
「それと、殿方が前に出て、先行してください。縦列走行を基本とします」
「はい……」
「……なにさ?」
「はい?」
「コオだって、十分にお尻が丸いんだからね!」
「……」そんなこと言われても。
困ってしまう二日目の朝だったのでした。