3 一日目。東京・埼玉・群馬・栃木(7)
その方角とは、空、すなわち宇宙からでした。
SOS信号がどう通信網を巡ったか分りません。結果的に虚空から、超ド級宇宙戦艦が一隻、地べたに生くる者の心を圧するがごとく圧倒的大迫力で出撃して来たのでありました。
船外スピーカーが『ブンチャカブンチャカ』勇ましい音楽をがなり立てています。そして、敵は敵を知る。お互いの力量を察した両者が臨戦態勢を整え、ここに、グンマー対宇宙戦艦の、銀河を巻き込んだ県内局地戦が勃発したのでありました。
まず、グンマー戦士の一人が、長槍をエイヤッとばかりに投擲します。
いくらグンマーと言えどさすがにこれは話にならないだろう、そう思った瞬間でした。グングン飛んでった槍が、分厚い船艙にどかんと大穴をあけたではありませんか!? なんたるグンマーのその豪腕、神秘の力であることよ!!!
BGMが鳴り止み、かわりに『うわわわぁ! きゃー! パリンッ! ダメージコントロール!』などといった音声がスピーカーから聞こえます。してみると、驚いたことにあの勇ましい音楽は、音源から直接ラインで引張ってきたものではなく、艦内で楽団(団長=戦術長)が、生演奏していたものなのだと知れたのでした。どっちもどっちです。
お返しとばかりに宇宙戦艦が本気の陽電子ビーム砲をぶっ放す。それを鬼瓦が「がいーん」とはじき返す。グンマーが投げつける槍やブーメラン、パチンコ玉を、今度こそ真剣にエネルギー障壁で撥ね除ける。激しい応酬で艦は傷を負い、大地にはボコボコジュウジュウとクレーターが穿たれる。見てる分には互角の好勝負を繰り広げているうちに、双方とも焦れたのか、ついにグンマーはカタパルト、宇宙戦艦は巨大大砲という、各々究極兵器の発射準備に取り掛かったのでありました。
誰もが敵に気を向けてます。この一瞬こそ唯一のタイミングでした。
行はコン吉に飛び乗ると、全速を指示――!
陸橋を駆け抜け、みごと堤の向こう側へ飛び込むことができたのです。




