3 一日目。東京・埼玉・群馬・栃木(2)
予想したとおり、これまで平坦だった風景に、ポツポツと、突起し起き上がってくる物品が現れはじめたのです。
災害を免れた民家であったり、車であったり、生け垣であったり、畑の案山子だったり。
電柱もだんだんとまっすぐに生えていき、本数も増え、電線もつながり始め――
花壇や木々の緑も、そして人も増え、ようやく町並みの呈をなしてきたのでした。
中でも行を喜ばせたのは自販機の存在でした。だって、もう喉がカラカラなんですもの。期待してその真っ赤な筐体の正面に立つと、当たりでした。例によって文字こそ奇怪なセンスですが、絵面はまごうことなき清涼飲料水です。電気が点いていて、生きているようです。
となると、さぁ、お金ですよ?
ベルトの一つの革袋を開けてみます。なぜそれを選んだのかというと、体を動かす拍子にそこからチャラチャラと音がしていたからで――やはりお金、キラキラとしたコインが詰まっていたのでした。(あとで小分けにしないとね)
ざっと三種類。恐らくは本物の、金貨、銀貨、銅貨でした。
さらに細かく見ると、それぞれにも大きさの種類があり――
金貨は一種類。
銀貨は大小の二種類。
銅貨は大中小の三種類あることを知ったのです。
「……うん」
これはもう簡単でしょう? 勘を働かすまでもありません。
金貨は、一万エン。
銀貨は、五千エンと、千エン。
そして銅貨は、五百エン、百エン、十エンの、それぞれの価値を有しているに違いありません。試しに“百エン銅貨”一枚を放り込んでみると、見事にソーダ水一本を、ゲットすることができたのです。それで!
このソーダ水の、なんとウマいことよ――!?
ハジける!
染み渡る――!
この冷たさが、甘さが、クゥゥゥっと!!!
「っぷはーあっ、ハハハハハ!」
いつまでも笑ってしまっちゃうのをどうすることもできなかったのでした。
この桶川市にはコンビニらしき店舗さえあり、感動で胸が一杯になったのでした。とうぜん突撃します。いえ買い物ですよ。普段なにげなくやってることが、何て新鮮なんでしょう! ドキドキしながらお金を出し、物々交換な感覚でお菓子を手に入れたのでした。不思議です!
ついでにトイレも借りたりします。ピンク人をはじめとして、住人たちは基本的に着衣がない(必要ない、或いは着用できない?)状態なので、そのせいもあるのでしょうか? 設備が綺麗に保たれてあり、好印象を受けると同時に――自分が汚してしまってはいけないという戒めの気持ちが起こるのでした。