2 一日目。神奈川・東京(11)
そのときでした。
『ピポッ』
という電子音が一度、パムホから聞こえました。画面を確認すると、『通信解析完了』の文字が表示されています。
この日本の標準電波と、衛星電波を捕らえ、解析することに成功したようです。これで少なくとも、時計機能と、マップ(現在位置確認機能)は使用可能になります。つまり――
これまでの道のりから推察するに、この世界は、少なくとも道路をはじめとする地理に関しては、現世と同じです。つまり、現世の地図と重ねれば? この世界でもナビが使えるということで、これは正直、とっても有り難い朗報でした。
他方、電話回線とネット回線解析には、さすがの現代科学の粋・パムホをもってしても失敗したもようです。一度周囲を見渡し、この惨状ではやむなきかなと思いましたし、仮に平常時であったとしても、仕様が異なりすぎてどうやっても無理だったのかもしれません。そもそもこの世界には存在しないのかもしれませんし、ともかく。ここでは電話とネットの利用は、諦めるしかないようでした。
となると、ネットがらみで頼りにできるのは、DL済みでオフラインでも閲覧可能、ワープイン直前まで絶えることなく自動更新し続けていた巨大データ、フリー百科事典“グエン”だけだ、ということです。
あの、「人に聞かずグエりなさいよ」のグエンです。
これと、G-MAPがあれば、“ゾーンアウト”など、旅の進路に関することで、危機に陥ることはないでしょう……。
安堵の息をつき、異世界の撮影に関心を戻す、行なのでした。