11 八日目。青森(10)
蘭が背中に隠れました。行もまた、少し恥ずかしく顔を赤らめます。それはいいとして――
「口上をどうぞ……」
促します。今度の今度こそは、分かるように事情を語ってもらいたいものでした。
「※(申し上げる)」
少年戦士が口を開きました。それが案外張りのある美声だったので、軽く驚かされもしたのでした。
「(畏まって申し上げる。神・ブンタローならび預言者・ハナコの、両御子どのよ)」
「どうぞ」
「(御子どのにおかれては、どうぞ速やかに天上界にお帰りあそばされ、神の怒りをお宥め下されたくお願い申し上げるしだい。これはこの世界の総意であり、畏れ多くもこの身が代表して旨、言上するしだいでございます)」
さぁ、さっそく分からないことだらけです。
「その文句を述べるため、それだけのために、君たちは追いかけて来たと言うのですか」
「(然り)」
「危害を加えに来たのかと思っていました」
「(誤解)(不可能)」
「うーん……」
行は一息いれます。どう、聞き出したものでしょうか。
「簡単なことから確かめよう。君らが、この世界の代表なの? ならなぜ、争いがあった?」
「(多少の行き違い)」
そんな一言で済ましていいものか疑問が残ります。自称しているだけのように思いましたが、マジに本当だったとしたらです。真意が判明して、ナマハゲ軍団とも今頃は、和解がなっているかもしれません。そうだといいな……。
行はズバリ訊きました。
「神の怒りとは、なんのことか」
「(全天の震え)」
「それは、なに?」
「(御子どのの力)」
「それは――」言葉を切らす行。
またしても、混沌の渦の向こうに謎が隠れようとしています。
そのときでした。後ろから、蘭が言葉をかけたのです。
「わたしたち、貴方に何かしたっけ?」
戦士は、その声に目を向け、瞬間、慌てたように目を伏し、顔を赤らめて答えたのでした。
「(切ないお言葉。我の追求を断ち切らんと、大鉄橋を山ごと崩し落とし、先程もまた、大地ごと我を退けたもうた――)」
空を見上げて、付け加えるのです。
「(それこそ、宇宙を揺るがす、偉大な御力――)」
「――」
それこそ、大変な誤解、勘違いというものでした。




