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第一章:惨刑の歩

僕はとても楽しいことをしている。

言葉というもので遊んでいる。

だけど、言葉とは真偽のわけめがわからない。

嘘や本当。

どれが本当で、どれが嘘か。

わからないのが言葉の特徴なのである。

そんな中に住んでいる世界の中には、人間という生物、いや物体がある。

その物体は突然、死んだり殺したり、笑ったり泣いたり、怒ったり悲しんだり。

こんな感情を持ってるのがこの物体の特徴のようなものである。

その物体はなにをするのかわからないのが信実である。

そんなお話。








「ねぇねぇ!あそこの喫茶店のマスター、この前人身事故で死んだんだってよ」

「なぁ。そこの店長さぁ、一昨日殺されたってよ」




「バーカ。それは嘘だろ?」

「はぁ?これはホンとの話だよ」



どれが本物?

どれが偽り?

言葉の永遠の謎。

それを解いてくれ、若き者たちよ。

それができるのはお前達なんだよ。





晴れた日はなんだか、こう、騒ぎたくなる。

だけどこの場所はかなりの静けさを持っていた。

鉛筆のなぞる音。

音をわざとたてるチョークの音。

まぁ、眠たくなるような演奏の中観客はほぼ真面目に聞いている。

だが、ただ一人だけ眠りの世界に入り込んだものがいた。

刻は昼時。

鐘の音が鳴った。

ここ1−Bの教室に緊張感が解かれた安堵のため息が流れる。

そそくさと弁当の蓋を開ける者や友を待ち階段を下りる者。

それぞれが過ごす昼時。

一つの絵となっている。

んが、未だに長い眠りにいる者がお一人様。

「・・・おーい。如月君〜?」

「・・んあい?」

「んあい?じゃないですよー。もうお昼ですよ?」

「あぁーそうっすね〜・・・・」

「そうそう、頭を起こし・・・ってこらー!」

頭の上下運動を一度だけしてまたもや眠りの世界へ。

この如月というのはこの学校では有名な存在なのである。

この学校は超エリートの頭の持ち主の集まる学校。

だが、この如月きさらぎ かえではなかなかのバカで学年2位というブービー賞を貰えるほどの力があるのだ。

そんなことはさておき。

「んもう。如月君?寝ててでいいですから聞いてくださいね」

楓はうずくまるように“うごぅ”といって返答した。

「あのですね。30分前に希さんが岡田先生に連れて行かれたのを」

また“あぐぅ”と。

「それで、迎に行こうと思ってるんですが、如月君一緒にいきませんか?」

“うぐぅ”と言う。

「ホンとですか?やったです。では、早速です。」

「・・・って。里崎がいなんか。つーか和美っちはなんで僕をさそったわけでしょうか?」

「それは簡単です。暇そうなので。」

「いやいやいや。今から僕は深い深い人には言えないよな用事が・・」

「わかりましたー。希さんを見に行くんですね〜。優しいですね〜如月君は〜」

和美っちは楓をひぱって外に出た。





「あのさー。吉前さん?」

「はい?なんですか?如月楓さん?」

楓は足を止めた。

「ここに里崎がいるんですよね?」

「小里先生に聞いたらここだと言ってました。」

「だけどさ〜・・・」

ふと部屋を眺めるとただ紙が散乱しているだけだった。

「いないじゃん。」

「おかしいてすねぇ・・。こことだといっていたんですけど」

「まぁなんだ。もう昼休みは終わりなんだな。もどろうぜ」

「そうですね・・。では、また放課後にでもさがしましょう・・」

「んまぁ・・・がんばってくださいまし。」

「嫌です。一緒にですよ?あ、そうだ。この前の返事聞きたいんですけど?」

楓は一瞬、魂が抜けたように体が浮いて、そして猛ダッシュで走り抜けた。




学校の鐘はうるさいほどに鳴り響く。

「んぁ〜・・終わった終わった。」

「き〜さ〜ら〜ぎ〜君♪」

「さぁて!帰って勉強でもするか!」

「・・・約束を破るんですね・・?」

“うっうっう”と泣く和美っち、またの名を吉前よしまえ 和美かずみという。

勿論、ウソ泣き。

楓はいつもの事だが周りの目線が痛い。

なので、

「あーそうだったなぁ。里崎を探すんでしたなぁ。あーそうだった。」

大根役者の棒読み。

「だったら早くいきましょう。」




歩いて歩いて歩き疲れて。

1時間程度歩いたのだが見つからない。

「おい・・・あれ・・・・見ろよ」

くるくると見渡すと見えるのは美術室のドアから見える白いキャンパス。

「あれって・・・・希かな・・?」

もう夕暮れ時。

赤い陽射しが射すこの美術室に映る人の影。

「入るぞ?いいですか?」

無言で頷く和美。

ガラッと少し勢いがないあけ方。

そして漂う鉄の匂い。

見える残骸。

「・・!希!?」

「おぅ・・なんだこの匂い・・」

和美が近寄るととっさに引いてしまった。

「どうしたんだ・・・って!・・里崎?」

そこに見えたのは―――――――――――――――赤い里崎さとざき のぞみ

「・・和美?あはっ・・きてくれたんだ。」

「えぇ・・希どうしたの・・?」

「あはっ・・ほらぁ見て指がもうなくなったのよ・・」

左右の指の半分より上が無くなっていた。

そしてそこからは流れる赤い血がある。

そして笑う歯は前歯が全てない。

「誰がやったの・・?」

「・・・岡田先生。・・おぅが!」

口から吐き出る赤い液体。

白いキャンバスの下半分が赤く染まった。

「・・・なんかねぇ。もう駄目っぽいんいだぁぁ・・・!?」

「・・・希!?」

「あぁぁぁぁ!!がふぇぇあぁ!」

突然、希は爪のない指で顔を削った。

剥がれる肉と右目の眼球。

舌を噛み切りもう、唾液と血がわからない。

右目はというと脳とつなぐ一本の細胞の線は、ふやけてしまい力ない様子だがいまだ右目に血を送るようにとビクビクと動いていた。

それにまだ動く右目の瞳。

「・・・ねぇ?私、死んじゃってもいいいかなぁ・・」

「・・!?なにいってるの!?死なないでよ!」

「だぁって・・ほらぁ、もう皮膚とか破けてるじゃん・・」

「・・でも、でも!」

「吉前!これ見ろよ・・」

とっさに楓は床に落ちていた注射器を持ち上げた。

「・・・トリロクメロタン。これって科学薬品だったはず。それに人体には非常に危険な反応を起こす・・」

「希!」

和美は叫び、楓は驚き、希は白く・・なっていたキャンパスに両手をつっこませ破き、大量の血を口から吐き出した。

もう、あたり一面絵の具の水が氾濫したように場所となってしまった。

「おうっ…」

なにか腹から湧き出るような吐き気が漂い、楓は床に膝をつき左手で溢れる泡だらけの大量の唾液をうけとめた。

だが、思った以上に出てきて希の血と混ざった。

「うぅ…希?…!?希!?」

紅い絵の具をすべて使い果たし床に溶ける里崎希。

ズルッと俯せから仰向けに戻る音がした。

予想通りに人間ではない変形した人間だった顔。

グチグチと響く口からは折れた歯が血の泡と一緒に流れて、床に落ちそして、噛み切った舌の先端が出てきた。

大きく開いた目は瞳の部分が丸みを保つが、歪んだ神経の管が現れ、血管を引き抜き確実にこの場で人体解剖をひとりでにしているようだった。

「……‥なんでこんなことに…。なんで希が死んじゃうの…?」

「吉前…な、なぁ?早く先生にいったほうがいいんじゃないか?早く犯人を見つけたほうが里崎のためになるんじゃないか?」

ようやく吐き気がおさまり少しばかり弱々しい声で話し掛けた。

「大丈夫だと…思います。こんな異臭が漂ってるんです。絶対、誰かが見つけにくるはずです。…それよりも、私たちはここから出るのが適切な判断だと…」

「ん…。た、たしかにそうだな。俺らが疑われる可能性もあるし…」

無言で頷く和美。

二人はあまり物音を出さずにそっと学校をでた。

 

 

 

 

 

 

 

これはあまりにも深く心を抉られた気分。

若い二人にはなにができるのだろうか。

そう、わかるのは放たれた言葉の真偽である。

誰が人を信じ、誰が人を疑うのか。

人間とは愚かな存在。

だから、伝えてあげたいんだ。

彼達は何もわかっちゃいない。

俺が教えないかぎり誰が本当のことを教える。

だから、身をもって教えてあげるのさ。

―――人間の恐ろしさをな。


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