Level5-3:彼ら
※この小説は『デュエル・マスターズ』を題材にした小説です。
※あくまでもフィクションです。
実在する地名、氏名年齢住所電番などとはまったく関係がありません。
※なおカードの効果などはココ(http://www27.atwiki.jp/duel_masters/)で調べるといいと思います。
夜、闇が訪れた。辺りが静寂に包まれる。僅かに光を灯す電灯が一つあるものの、それを除けば何物も闇を打ち消すものは無かった。
「…………はぎぃっ!」
鈍い音があたりに響く。狭い路地裏に二人の男が居た。一人は頭を壁に打ちつけヘナヘナと座り込んでいる。もう片方の男はその頭に銃を構えていた。
「貴方はミッションに失敗したんです。分かっていますよねェ……No number?」
男が装弾する。ガチガチと歯を鳴らす音が響く。
通りすがりの車のライトがその路地裏に差し込んで二人の顔を照らした。
座り込んでいる男の顔には見覚えがあった。服はボロボロになり薄汚れ、髪もボサボサではあったが―――春の『トランプ』でのデュエルロードで、翔に倒されたあの男だった。
銃を構えている男の顔は見えなかった。というより見えるわけが無かった。
彼の顔には真っ白な仮面が嵌められていた。その仮面はまるで《アクア・ジェスタールーペ》の様。黒いスーツやネクタイ、白いワイシャツといった極普通の格好がさらにその「仮面」の異常さを際立たせた。
「『組織』のルールは理解していますよねェ?失敗=死だと。……まったく貴方には失望させられました」
仮面の男は銃をまるで玩具のように弄りだした。
No numberと呼ばれた男はまだガチガチと歯の音を鳴らし、怯えきった目でその銃を見つめている。
「しかし……貴方はまだ正式な『組織』の一員ではない。一度だけチャンスを与えましょう」
その言葉が彼に衝撃を与えた。一体何を言っているのだろうか?
仮面の男がパチンと指を鳴らす。すると、僅かに光を灯していただけだったはずの電灯が激しい閃光を放ち、その影を照らし出した。
そのパーカーも、ズボンも、首まで隠れるタートルネックの上着も、靴も…………靴下でさえも、すべて黒に染まっていた。背は翔と殆ど変わらない。顔はフードに隠れていてまったく見えない。手には黒いスリーブに包まれたデッキを持っている。
「彼に勝てたら、その罪、帳消しにしてもいいですよ」
仮面の男がフェードアウトし暗闇に消える。No numberが立ち上がる。
これが最後のチャンスだ。生き残るための。
彼は、『組織』の実力を良く知っていた。例え、今この場を逃れたとしても『組織』にいずれ潰されてしまうだろう。
時が経ち、闇がさらに深まる。音が消えていく。
No numberの場には翔と対戦した時とほぼ同じ様な状況が作り出されている。《白騎士の精霊アルドラ》が2体、攻撃した事によりタップされて置かれている。その攻撃で影のシールドは全て吹き飛ばされ、彼を守るものはもう何も無い。
次のターンの一撃でNo numberの勝利は確実となるだろう。対して影のバトルゾーンにはアンタップされている《ボルメテウス・武者・ドラゴン》と何故かクロスされていない《竜装ザンゲキ・マッハアーマー》しか置かれていない。
No numberのシールドは無傷の5枚。確実に勝利できるであろうこの状況に彼が満足した瞬間、その言葉が彼の脳裏に浮かんだ。“物事に100%等存在しない”―――。あの時の翔の言葉だ。
彼の頭から沸々と怒りが込み上げていた。全ての原因はアイツにあるのだ。彼に負けたことのより自分はこのような事になっているのはアイツに負けたせいなのだ、と。
怒りがその言葉を打ち消した。
「―――召喚」
刹那、No numberは何をされたのか理解する事が出来なかった。
全てのシールドが一度に吹き飛ばされた。まるで、元から何も無かったかのように。
彼に最後の一撃を加えるために、影は諸手を高々と上げる。その拍子に、フードがその頭からずり落ちた。
黒く透き通った瞳だった。彼の身につけている物よりも、この闇よりもさらに深い。
「0に還れ―――。トドメだ」
その瞬間、彼は全てを失った。生命さえも。
座り込み震えだすNo number。
「嘘だ…………、そんな馬鹿な」「そういうこともあるんですよ」「!!」
再び仮面の男が姿を現した。今度はその銃を、ピッタリNo numberの頭の右側面につけ狙いを外さないようにしている。
「貴方の負けです、No number。それじゃあ―――――――死ね」
「待ってくれ、俺はまだッ」No numberは叫んだ、最期の言葉を。
暗闇に、銃声が響いた。
Next Level ~輝ける切札~
To be continued...
**しばらくの間更新出来そうにありません。大体次の更新は早くて2月、遅くて3月、4月になってしまうでしょう。
それまでに出来るだけ更新したいとは思ってはいるのですが……。まぁ、仕方の無い事なので。
5ヶ月後、この場所でまた会いましょう!