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Level4:桜と少女[2]

※この小説は『デュエル・マスターズ』を題材にした小説です。


※あくまでもフィクションです。

実在する地名、氏名年齢住所電番などとはまったく関係がありません。


※なおカードの効果などはココ(http://www27.atwiki.jp/duel_masters/)で調べるといいと思います。

桜の花びらが舞い落ちた。その姿は、今の翔を映し出しているようで―――。


Next Level~輝ける切札~


「《龍炎凰エターナル・フェニックス》で《ギガ・ホーン》に攻撃(アタック)!」

翔が舌打ちする。先程とは違い、この状況での0体はピンチだ。

《龍炎凰エターナル・フェニックス》は自分のドラゴンとフェニックスに「アンタップされているクリーチャーを攻撃できる」を与える能力を持っている。それは自身にも適用されるので、少なくともこの《エターナル・フェニックス》を何らかの方法で除去しなければ、翔のバトルゾーンは永遠に空のままとなってしまう。

しかも、彼のデッキには《エターナル・フェニックス》のパワーを超えるクリーチャーは入っていなかった。つまり、バトルでは破壊できない。

そして彼のデッキに入っている除去系のカードは《アクア・サーファー》しか入っていないため、例えバウンスしたとしてもまた進化V(ボルテックス)されてしまう。

つまり、今翔は、圧倒的なピンチに立たされているということだ。

「俺のターン!」

翔が勢いよくカードを引く。そのカードをチラリと見るが、また直ぐに元に戻した。

どうやらこの状況で逆転できるカードでは無かったようだ。

「《幻緑の双月》を召喚!手札を1枚マナブースト!さらに《隻眼の粉砕脚ポン吉》!M(マーシャル)T(タッチ)で《幻緑の双月》を戻し、《青銅の鎧》を破壊!」

とりあえず、飛鳥の頭数を減らしたものの、痛くも痒くもなっていない。まるで意味を成さない。

「私のターン。《武装竜鬼ジオゴクトラ》召喚。そして《エターナル・フェニックス》で《ポン吉》に攻撃(アタック)!」

《ジオゴクトラ》によってさらにパワーが上がる《エターナル・フェニックス》。ココまで来ると翔にとって「オーバーキル」だ。

「くっ……」

《ポン吉》が破壊されてまた0体に戻る。このまま行けば、確実に翔は負けてしまうだろう。



「《アクア・サーファー》召喚。《エターナル・フェニックス》をバウンス!《斬込隊長マサト》を召喚し、M(マーシャル)T(タッチ)!《アクア・サーファー》を手札に戻し、スピードアタッカーに!」

飛鳥の手札に《エターナル・ファニックス》がバウンスされる。どうせまたすぐに出せるが。

しかし、そのバウンスをした《アクア・サーファー》自身も手札に戻っているので効果が無いわけではない。今は《ジオゴクトラ》がいるから良いものの、次にもう一回手札に戻されてしまったら、もう場に進化元はいない。つまりすぐに進化は出来ない。

翔の手札は何枚もある。M(マーシャル)T(タッチ)で何枚も稼いでいたからだ。

その僅か一ターンで翔は大量展開することが出来るだろう。

「《マサト》でシールドをブレイク!」

死亡が確定している《マサト》が飛鳥のシールドをブレイクする。そのシールドはS(シールド)・トリガーでは無かったようだ。

「私のターン。G(グラヴィティ)・0で《レクタ・アイニー》を召喚し、再び進化V(ボルテックス)!《エターナル・フェニックス》!」

再び召喚される不死鳥。

「《エターナル・フェニックス》で、《マサト》を攻撃!」

また翔の場が0になった。しかし、先程よりはまだマシな状況といえるだろう。

しかし、飛鳥にはまだ余裕があった。彼女はまだ切札(・・)を隠しているからだ。

どんなに大量展開されても、一撃でそれを吹き飛ばす―――。

彼女の切札は、彼女のまだ見ぬ世界の中で静かに息を潜めていた。



飛鳥は驚愕していた。翔が《アクア・サーファー》をマナゾーンに置いたからだ。

この局面での大量展開に必要な条件の一つに《エターナル・フェニックス》の一時的な除去(バウンス)だ。

しかし、彼のデッキでそれが行える唯一のカードであろう《アクア・サーファー》をマナにしてしまった彼にはそれを行うことが出来ない。

彼の手札にもう1枚《アクア・サーファー》があるからなのだろうか?しかし、それでもマナに《アクア・サーファー》を置く必要は無い。不自然である。

この展開―――《エターナル・フェニックス》が鎮座しているこの盤面を考えると除去札は一枚でも多くもっていたほうがいいはずだ。

では何故、《アクア・サーファー》をマナにしたのだろうか?それは次の彼の行動で分かった。

「《アクア・ジェスタールーペ》を召喚!連鎖成功!《アクア・ドッペル》をバトルゾーンへ!《アクア・ジェスタールーペ》の効果で1枚ドロー!さらに《大冒犬ヤッタルワン》を召喚!」

連鎖―――。コストを使わずにクリーチャーを展開する能力の一つだ。

山札の一番上を表向きにし、それが自身よりコストが小さいクリーチャーならばコストを支払わずにバトルゾーンに出せる。M(マジック)・ソウルの能力だ。

飛鳥は忘れていた。「シルヴェスタビート」の利点を。それは“(マジック)・ソウルとK(カンフー)・ソウルの両方の性質を持っていること”。バトルゾーンのコントロールが得意なK(カンフー)・ソウルと展開力を誇る(マジック)・ソウル。それらが合わさった時の爆発力は凄まじい。だから「シルヴェスタビート」は強力なデッキタイプなのだ。

「……くっ。私のターン!」

彼女がこの状況を打開するには唯一つ、“切札”を引く必要がある。

しかし、引けたのはまったく違うカードだった。

「《武装竜鬼ジオゴクトラ》召喚!《エターナル・フェニックス》で《アクア・ドッペル》に攻撃!」

翔のクリーチャーの数は減った。しかし、2体―――《アクア・ジェスタールーペ》《大冒犬ヤッタルワン》が残ってしまっている。彼の逆転が始まる(・・・・・・・・)



「《ドスコイ・イチバンボシ》召喚!その能力で《アクア・ジェスタールーペ》を強化!」

翔が動いた。《アクア・ジェスタールーペ》が強化され、一度に2枚シールドをブレイク出来るようになる。

「さらに《斬込隊長マサト》召喚!M(マーシャル)T(タッチ)で《ドスコイ・イチバンボシ》を手札に戻し、スピードアタッカーに!そして《ドスコイ・イチバンボシ》の能力発動!さらに《アクア・ジェスタールーペ》を強化!2体目のクリーチャーなので1枚ドロー!」

《アクア・ジェスタールーペ》がさらに強化され今度は3枚ブレイク出来るようになった。

「余ったマナで《幻緑の双月》も召喚!」

さらに頭数も増える。

「《アクア・ジェスタールーペ》でシールドをブレイク!」

飛鳥のシールドが3枚奪われる。残りのシールドはたったの1枚で、翔の攻撃(アタック)出来るクリーチャーは2体。このままだと直接攻撃(トドメ)が通ってしまう。

1枚1枚を捲っていく飛鳥―――。一枚目……二枚目……三枚目…………。

「!」

飛鳥の表情が変わった。彼女はシールドだったカードを表向きにし、その名を叫ぶ。

(シールド)・トリガー!《ナチュラル・トラップ》!《マサト》をマナゾーンへ!」

何とかこの場は凌げた。飛鳥は安心する。そして彼女は自分の手札を見て微笑んだ。そう、先程のシールドから“切札”が手札に入ったのだ。

「…………」

翔の動きが少し停止する。考えているのだ。《ヤッタルワン》で殴るか殴らないかを。

殴って最後のシールドを削ったとしても、このターンで決められるわけでは無い。

翔の最終的な結論は、

「ターンエンド」

だった。



デュエマの魅力は何といっても切札を決めた時の爽快感だ。一度決めると病み付きになる。

彼女は、今日、初めてその切札を使う。今まで数少ない決闘(デュエマ)の中でこの切札を決めたことは一度も無い。

「私のターン。《ボルシャック・NEX》を召喚。山札から《ルピア・ラピア》をリクルート。

そして―――」

今、彼女はその未体験の世界(・・・・・・)へ踏み込もうとしている。

「呪文!《無限掌》―――対象は《エターナル・フェニックス》!」

「!!」

《無限掌》―――クリーチャー1体に「バトルに勝ったらアンタップ」を与える呪文。光の全体タップ呪文や火のアンタップキラーと呼ばれるクリーチャーとよく組み合わされる呪文だ。その中でも《エターナル・フェニックス》は最上級のアンタップキラー。この不死鳥(フェニックス)と並ぶアンタップキラーは滅多に居ない。

「《エターナル・フェニックス》で攻撃!攻撃!攻撃!!」

翔のバトルゾーンが壊滅する。

「さらに《エターナル・フェニックス》でW・ブレイク!」

5枚あったシールドが削られていく。どちらも、S(シールド)・トリガーでは無いようだ。

「ターンエンド」

今の飛鳥には幾分か余裕があった。

バトルゾーンには《エターナル・フェニックス》と《ボルシャック・NEX》《武装竜鬼ジオゴクトラ》《ルピア・ラピア》の4体。対して翔は0体。

シールドも4枚削られ1枚になりかなり厳しいところではあるが、何とか持ちこたえられそうだ。相手の残りシールドは3枚。トリガーが無ければ次のターンで決められる。

つまり、翔にとって、次のターンがまさにラストターンなのである。



舞い落ちた桜の花びらが舞い上がる。それらは渦を巻き、周りの景色を彩っていた―――。

「俺のターン!」

翔が高らかに宣言する。彼のこのデュエル最後のターンが始まった。

飛鳥は彼の表情に多少変化があることに気付いた。まだ、何か策を隠している…………。

手札を握り締め、飛鳥は身構えた。

「《カスケード・ガイド》召喚!山札の上から3枚を見て元に戻す!」

ゆっくり、1枚ずつ確認していく。何か仕掛けたようだ。

「そして《母なる紋章》!《カスケード・ガイド》をマナゾーンに戻し―――」

これで彼のマナは8マナになった。8マナ―――。

飛鳥は気付いた。水のM(マジック)・ソウルの8マナの連鎖持ちクリーチャーの存在に。

「《サイバー・G・ホーガン》をバトルゾーンに!」

彼のデッキの中でも最もマナの高い彼の最終兵器(リーサルウェポン)。それがこの《サイバー・G・ホーガン》だった。

「能力発動!激流連鎖!山札の上から2枚見て、コイツよりコストの低いクリーチャーをバトルゾーンに出す!」

翔が、山札の上から2枚を表向きにする。そのカードは―――。

「《爆裂大河シルヴェスタ・V・ソード》と《爆竜GENJI(ゲンジ)XX(ダブルクロス)》!どちらもバトルゾーンに!」

《サイバー・G・ホーガン》の上に《シルヴェスタ・V・ソード》が重ねられ、さらに《GENJI・XX》がバトルゾーンに出される。どちらも召喚酔いはしない(・・・・・・・・)

「《シルヴェスタ・V・ソード》でシールドをW・ブレイク!」

飛鳥の最後のシールドが削られていく。

(来い、S(シールド)・トリガー…………)

もしこのシールドがS・トリガーならば、彼女の勝利は決まる。

ゆっくりと飛鳥がそのシールドを捲っていく―――。

「…………」

飛鳥の肩が落ち、ため息をつく。

Checkmate(チェックメイト)!《GENJI・XX》でトドメだ!」



「あー、負けちゃった……」

飛鳥がベンチに座り込む。いつの間にか立ち上がっていたようだ。

「流石だね、火渡君。とっても強かったよ」

「いいや、俺なんてまだまだ。それよりも始めたばっかりなんだろ?桐谷さん、すごかったよ。まさかあのタイミングで《無限掌》が来るとは思わなかった」

翔が空を見上げた。太陽はまだ揚々と彼らを照らし続けている。

「じゃ、もう一回デュエマしない?」

彼女はデッキを前に突き出した。しかし、翔は自分のデッキを鞄にしまう。

「……どうしたの?」

翔は自分の腕時計を見る。2時半―――。

「今から、『トランプ』に行かねぇか?」



「…………」

長い沈黙が流れる。

「いや、無理でしょ、変な目で見られるだろうし」

ようやく飛鳥が声を絞り出せた。

「そんなことない。皆仲いいし、絶対桐谷さんも仲間になれる」

「えっ、え~~無理だよ」

「大丈夫。行こうよ、そっちの方が絶対桐谷さんのためにもなる。いけばいつでもデュエマできるし」

「え……でも…………」

「だから、やる前から無理って言っても何も始まらないだろ!大事なのは一歩踏み出すことじゃないのか?」

翔が声を荒げる。彼女のためだ。人は、いつも始めの一歩が踏み出せない。恐れているからだ。その一歩を踏み出さなければ、見えない景色があるというのに。

「…………」

大事なのは「踏み出すこと」。彼はそう思っている。

「…………」

「…………」

「うん……。わかった、行くよ、私も。『トランプ』に」

飛鳥は翔の思いを感じ、受け止めた。彼女は今、「一歩」を踏み出そうとしている。

「本当か!?ホントに?」

「うん!私、翔君を信じるよ!」



二つの自転車が景色を、人を、風を切って走っていく。

(確かに、私、一歩踏み出してなかった……)

先頭を走るのは翔、その後ろが飛鳥だ。翔の赤と青の車体から見える背中を追い飛鳥はペダルをこいでいる。

(踏み出さなきゃ、始まらない。当たり前のことだったのに……)

「ついたよ」

「!」

ココがトランプ―――彼女の一歩を踏み出す場所。

翔が手馴れた作業で自転車を置く。彼女はその横にとりあえず止めておいた。

飛鳥が息を呑む。翔が、扉を開けた―――。

「…………」

周りが急に静かになったのを感じた。皆の視線がこちらに集まっているのを感じる。

飛鳥は翔の後ろでただ固まっているしかなかった。

ああ、翔君を信じたのが間違いだった―――。と、飛鳥は思った。

「あれ?翔、来ていたんだ。え、後ろの女の子、桐谷さんじゃない?」

飛鳥の目に青いチェックのパーカー姿が映る―――同じクラスの蒼木 優也だ。

「もしかして、桐谷さんってデュエマやってるの?」

彼女の顔が赤面していく。優也が今何を考えているのか飛鳥には分かる。

どうせ(え……、女子がカードゲーム…………)だろう。

しかし、彼の放った一言は彼女の予想を大きく反したものだった。

「じゃ、デュエマしない?」



(え…………?)

一瞬の沈黙が流れる。

「あ~、桐谷さん。どんなデッキ使うんだろ~。楽しみだなあ~」

一人喜んでいる優也。横を見ると、翔は微笑んでいた。

「あれ?女の子?珍しいなあ」

店の奥から女の人が現れる。一体誰なのだろう?

「あ、店長。こんにちは」

翔が軽く挨拶する。

て、店長!?と、飛鳥は思った。

ここはカードショップだ。もし仮にこの女の人が本当に店長ならば、この人もデュエマしていることになる。つまり、飛鳥以外にデュエマをやっている女子がいるということだ。

飛鳥は翔を見る。彼は「言っただろ?」と笑いながら言った。

ここから、私は始められる。と、彼女は思った。彼女はココから一歩を踏み出す。

「じゃ、デュエマしよっか」

彼女は笑いながらデッキの準備をする。


桜の舞い散る中、彼女は新しい道への一歩を踏み出した。


というわけで、初の前後編は完結しました!

今回のお話ではデュエマ小説の物語のタブーである、「ヒロイン=女子がデュエマをやっている」に挑んでみました。

書くのが辛かったです。もっと女子のデュエリストが居てくれれば良いのに……。

友人からのアドバイスで、今回から登場したデッキを公開してみようと思います。


『Eternal』


■クリーチャー

3/火《龍炎凰エターナル・フェニックス》

4/火《ボルシャック・NEX》

3/火・自然《武装竜鬼ジオゴクトラ》

3/火・自然《ルピア・ラピア》

3/自然《青銅の鎧》

4/《コッコ・ルピア》

4/自然《レクタ・アイニー》


■呪文

3/火《超次元ボルシャック・ホール》

4/《未来設計図》

1/自然《母なる紋章》

2/火《無限掌》

3/火《地獄スクラッパー》

4/自然《ナチュラル・トラップ》


■超次元ゾーン

2《時空の嵐ストームXX/神風の覚醒者ストームカイザーXX》 


《ショーブ・アイニー》も入るかもしれません。一応、4話時点でのデッキなので。


コレであったプロットの分を使い切ったので更新は少し先になると思います。

それではまた次回ー。

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