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時を戻すなら、二度とこの未来は来ない

作者: あかね
掲載日:2026/06/21

 やあやあ、君が所望した悪魔だよ。

 人の子の嘆きはよく聞くけど、君の嘆きはとても語り口が良かった。小説家にでもなればよかったのに。


 ああ、そんなにまくしたてなくても大丈夫、ちゃんと把握している。

 君はただの男爵令嬢。それも平民だったけど才能がありそうと養育された。地元の期待を背負いやってきた王立学院で運命の出会いをした。

 初めて見る王族はキラキラして見えた。優しくされてのぼせ上がって、その寵愛を得るためになんでもした。その結果が、今の牢獄。相手は被害者面して、こんな恐ろしい子だとは思わなかったと嘆いている。

 いやぁ、派手にやったよね。今回は。


 ん。なんでもないよ。

 君が砂時計をひっくり返して、時間を元に戻したい。何もない頃からやり直したい。そういうお願いだったよね。

 わかってるよ。


 代償はあるんだ。

 今と連続した未来を諦めること。今って、まあ、今現在だね。死を待つだけの今。そんなものいらない。良い返事だ。

 いつも躊躇ないよね。


 君の時間はこの砂時計だ。最後のひと粒が落ちたらおしまい。その前にひっくり……もう、焦らなくてもいいよ。あと5粒くらいはあるから。2日くらいかな。

 待つ? 待たない?

 今すぐひっくり返してほしい。


 うん。

 わかってるよ。


 やり直そう。

 君だけの世界で。




 ああ、本当にせっかちな人だ。

 まあ、いいか。都合の良い時戻しなんてあるわけがないといつになったら気がつくんだろう。世界を戻すなんて、神の如き存在でも容易ではない。ただの一介の悪魔にできるのは、箱庭で遊ぶだけ。もう、魂だけの存在で、あの子以外はすべて魂なき人形でしかないのに。

 あの子が見てないところでは、なにもない。


 何度繰り返しても、未来はない。もらってしまったからね。

 だから、いつも最後は牢獄。

 いつか、待ってくれたら返してあげてもいいけど。


 おや、お客様だ。

 箱庭は片付けておかないとね。壊れてこぼれてしまってはもったいない。


 ああ、殿下。なにかご用ですか? え、お茶会のお誘いですか。もう、だめではないですか。殿下ともあろうものがただの男爵令嬢の部屋にやってくるなんて!

 ちゃんと侍従とか使わないと!

 お友達だから、って、ほんと殿下は可愛らしいですね。一度は私を疑って牢獄にいれたのに。

 ふふっ、根に持ってます。

 あのときは本当に助からないと思って、神様にやり直しさせてくださいって祈ってたんですからね!

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