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第44話

 それからのポウザンは、熱心に勉強と鍛錬を続けている。


 家庭教師からも「ポウザン様は物覚えも早く、今から将来が楽しみです」と太鼓判を押されるほどだった。


 しかし家庭教師は、言いにくそうに言葉を続ける。


 教師曰く「ただ……現在の後宮を否定するようなお考えをお持ちのようで、そこはじっくりとご説明していく必要がありそうです」と。


 ポウザンは授業の合間を見ては後宮という場所や制度について教師に尋ねたり、自ら書物で調べたりしているということだった。


 わたくしの言うことを守ってくれているのだなと、わたくしは穏やかに微笑んだ。


 そして家庭教師に伝える。


「彼の考えはどうか否定も肯定もせず、真実のみを答えてあげてください。それがこれから彼が作り上げる未来のロン国に繋がるのですから」


 わたくしの想いを聞いた家庭教師は、驚きに目を見開いていたけれど「お願いしますね?」とさらに笑顔で伝えると、慌てて「かしこまりました」と答えた。


 けれど家庭教師はわたくしの考えを飛躍して受け取っていたのか、誰かがわたくしたちの会話を盗み聞いていたのかしていたらしい。


 現在、王宮や後宮では『次期皇帝となるポウザン様は、後宮を廃するかもしれない』という噂が広がっている。


 ミン様曰く、王宮で役人たちから「御子息の代で後宮が廃されるというのは真ですか?」と尋ねられることが増えたらしい。


 彼はそう尋ねられると「息子の世になった時のことは、私にも分からぬ」と、威厳のある表情に薄く笑みを浮かべて答えているとのことだった。


 それを役人たちは肯定として受け取っているらしい。


 すると自分の娘を次期皇帝の妃に、次期皇后にと目論んでいる役人たちは大慌て。


 後宮という場所が、多くの妻を侍らせることがいかに素晴らしいのかをぜひ御子息にお伝え下さいと、ミン様に懇願しているとのことだった。


 ミン様は「子どもに聞かせるような話ではない」と退けられているとのことだったが、わたくしの宮に来ると、ポウザン本人にぼかしながらではあるが伝えている。


 私には分からないが、役人たち曰く、後宮にはこういう魅力もあるらしいぞと。


 一つの側面だけを見て決めつけず、多方面からの話を聞いたほうがポウザンのためになるということらしい。


 わたくしも傍でその話を聞いていたけれど、役人たちの言う後宮の魅力というのは男性本位な……何とも自分勝手な話ばかりでほとほと呆れた。


 これでぼかしているというのだから、役人たちは一体どんな風に恥ずかしげもなく皇帝陛下に伝えているのだろうかとげんなりとする。


 愛し合う夫婦に憧れているポウザンにそんな話が響くはずもなく「そうですか」と冷めた反応をしていた。


 そしてその翌日には、いつものように後宮について調べたり話を聞いたりする。


 自分たちの説得が意味をなしていないことに気がついた役人たちは、いよいよ大きく動き出す。


 ――わたくしはその日、突然、王宮の玉座の間に来てほしいと呼び出された。


 不思議に思いながらも、王宮へと赴き玉座にいる皇帝陛下の隣に立つと、前に出てきた数人の役人たちが口を開く。


「ポウザン様ではなく、他のお妃様の御子息を次期皇帝にしてはいかがでしょうか」


 あまりのことに驚き、言葉を失っているわたくしに向けて……そして静かに怒りの感情を抑え込んでおられる皇帝陛下に向けて言葉を続ける。


「後宮を廃するとのお考えを持たれているポウザン様に、次期皇帝という席に座っていただくのは臣下としていささか不安です。これを機に、次期皇帝をお考え直しに――」


 そう提案する役人に向けて、皇帝の顔をなさったミン様が答える。


「……そなたたちには日頃から国と民のために働いてくれて感謝している。だが、次期皇帝を変えたいという話は果たして国や民のためか?」


 そう尋ねると役人たちは口ごもり、目を泳がせていた。


 そんな彼らに、ミン様は言葉を続ける。


「私は野心を持つこと自体は罪に問わぬが、そのことを公の場で露わにするようであれば、罪に問うことも考えなければならぬな」


 そう告げ、威圧的な視線で役人一人一人の顔を確認するようにすると、役人たちは慌てて頭を下げて顔を隠す。


「で、出過ぎたことを申しました! どうかお許しください!」


「許す。だが二度目はない」


 皇帝陛下が威厳ある表情でそう告げて、この話は終わった。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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