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001+7.間章 アレス糞餓鬼第二金蔓王子、魔法教室。

※外伝整理も兼ねた、冬休み連続投稿中です。詳しくは001+6前後書き参照。

 年末年始はほぼ毎日になってしまった……。

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「王族になったくらいで、エロ姉さん通いは止められないんだ!」


「悉く人聞きが悪いなぁ君は!」


 女はモテる同性を嫌うというが、それはライバルが増えるからだ。

 恋バナが好きなのはライバルが減るからだ。

 偏見に満ちていると言われればそれまでだが、真実の一側面は突いている。

――すなわち。


「最近とみに私に可愛い服を着せたがるオバちゃん達が多いんだよ。

 絶対アレ君の所為でしょう?」


「ふほほほほ!感謝してくれてもヨロシクてよ!

 君サイズの服をワザワザ特注で作ってくれるんでしょ!寸足らずの中古服しか売らない癖に、ビッチとか男好きとか言って来るお方々とかとは、最早永久に無縁になりましたでしょ?」


「畜生め!感謝はしているさ!

 だからこうして君に錬金術も教えているんじゃないか!」


 教えてあげましたとも、ギャップ萌えって奴をね!

 『アレス君のセンスじゃ今一信用出来ないから、君が判断してくれ』と言って、おニューの服を見せびらかせと囁いたのさ!

 オイラはその時のむっつりドルゴン君の様子をお駄賃と引き換えにオバちゃん達に提供する!FuHAHAHAHAHA、いやぁ甘ずっぺぇ!

 ダモクレスでは希少な、甘酸っぱさ満点の恋バナさぁ!


 そもそもエロ姉さんことマリーテ嬢とて年頃の娘なのだ。

 結婚に憧れない歳でも無いし、実際初心なだけでそういう知識もある。初めてを捧げる相手が誰で、誰にを妄想しない理由も無い。

 何のかんのと言っても、今迄では無かったドルゴンの反応に手応えを感じているからこそアレスの提案を受け入れてるのだ。


 序でに言えばアレスがエロ姉さん呼ばわりを止めないのは、ドルゴンを絶妙な匙加減で不安にさせるためだ。

 もう自分が口を出さなくても大丈夫と思えば、今仕事に充実感を感じているドルゴンの事だ。自分が憎からず思ってる癖に、恋人作りの邪魔をしてはいけない等と頓珍漢な事を考え出すのは明白である。

 今の今迄こんな露骨な好意に気付かなかった、稀に見る鈍感男だというのを忘れてはならない。自制している暇があったらとっとと口説け。


「えぇい、いい加減授業を始めるぞ。

 今迄君には散々魔術文字を学習して貰ったが、既に一通り理解したと思う。

 なので今一度、魔法の手順を改めて復習しよう。」


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ええと。魔術に専用の文字が必要な理由は、これが最も簡略化された文字だからだったよね?誕生は確か古代王国期だったとか。」


 古代王国期。この世界の歴史は概ね三つか四つの歴史区分に分かれている。


 最初は神代。神々が世界を創造した当初から後の歴史を指す。

 因みに天地創造に関わった神の数は判明していない。唯一神だったかも知れない程度には曖昧で、この理由に神々自身が自分達を区別しなかったからだと言われているが、証拠に関しては全く残っていない。

 単に各地の伝説が物語っているだけだ。


 そして全ての神話で共通しているのが、世界は人々に与えられたプレゼントだという点。要は私物として与えられたので、神々はその扱いに口を挟まないのだ。


「そう。実は魔術言語の成立に神々は全く関わっていないんだ。

 むしろ魔法が人々の手で産み出された結果、神が神聖魔法を人々に与えたという流れになっている。」


「そうなの?!ていうかそれ記録に残っているの?」


「ああ。教会にはっきり伝わっているよ。

 教会は記録の正しささえ否定しなければ政治には不介入を貫く組織だからね。

 信憑性は極めて高いとみて良い。」


 何でも神への祈り方が分からないという信者の声に対し「便利な言葉」が出来たようだからコレを使いなさいと神託を下したのが神聖魔法の始まりらしい。

 フランクだな。厳かにするには内容が実に庶民的というか。

……やっぱり奴は本物の神だったか…………。



「さて。神代に続く古代王国期だが、実は終焉ははっきりしていない。

 そもそもが古代王国は人だけの国家だった。要は人の最大勢力だったんだ。

 だが世界には他に二つの大勢力が存在し、我々人族は苦境に立たされていた。」


 古代王国期。神が神託や奇跡以外では世界に関わらなくなった時代であり、同時に世界を三強種族、竜族、巨人族、人族が鎬を削っていた時代だ。

 この古代王国滅亡がどんな形だったかに、諸説があり過ぎるのだ。


「取り合えず現在の学説では「一、竜帝国の登場によって滅ぼされた。」と「二、邪龍ヨルムンガントによって滅ぼされた。」の二説に分かれている。」


「最初の説一の場合、歴史区分は四つ。

 神代、古代王国期、竜帝国期、そして聖王国期だ。

 説二の場合は三つ。竜帝国期を竜帝国時代とし、古代王国が健在だった頃に成立した一王朝として扱う訳だ。

 竜帝国は竜達が人族を支配下に置いた国家の事だ。」


 ぶっちゃけ古代王国の滅亡がはっきりしないのと同様、竜帝国の最大版図も明確なものが無い。国境は一応あったらしいが竜は砦や城以外に住まなかった。

 竜達は基本敵だった上に、魔術文字以外の文字を使わず記録も余り残さなかったらしい。国境を証明するものが特に無いのだ。

 まあ長命種族故に。文字を使うのは長老達だけだった様なので。


「三強種族の内、最初に脱落したのが巨人族だった。これははっきりしている。

 時期以外はね。彼らは数が容易に増えず、長年の戦争によって大集団の維持が不可能になったという。その結果、今の様に各地で隠れ住む様になった。

 この巨人族の脅威が無くなった事で成立したのが竜帝国だと言われている。」


「竜達が魔法を生み出したとかって無いの?」


「無いっぽい。だってドラゴンブレスって魔法で防げないし……。」


 ああ、うん。防御貫通に『竜気功』あれば小細工要らないよね。ていうか神様は何でこんなに種族格差をつけたんだか。


「戦わせるためじゃないからね。どうも神々は仲良く共存出来る種族として個性を付けたという話らしいよ。」


 他の亜人達にも長所が与えられてるらしいが、人は「開発」、巨人は「開拓」、竜は「守護」の力を授かっているという。



「さて。最後の時代区分は聖王国期、つまり我々の時代だ。

 邪龍ヨルムンガント封印によって始まり、聖王国の成立によって誕生する。

 逆に言えば、魔龍ヨルムンガントは百年と経たずに竜族を今の数にまで追い込み竜帝国あるいは古代王国までを崩壊に導いたんだ。

 それこそ、聖王が討伐に成功するまでね。」


「せんせー。ヨルムンガントって邪龍なんですか魔龍なんですか?」


「記録によって違う。ていうか邪悪な龍と呼ぶか魔性の龍と呼ぶかの違いだ。

 意図して呼び分けられてないんじゃないか?」


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「さて長々と歴史を語ったが、何故魔法が誕生したか。

 これは偏に人族が、他の二強種族に対抗するための手段だったからだ。

 王族達が継承する《紋章》技術も広義で言えば魔術だ。原理は知らないし、半ば失伝しているが〔昇格の儀〕、クラスチェンジの類似技術だと言われている。

 だから〔昇格の儀〕で魔法使い系の職業を獲得しないと魔法が使えないと言われているのは、実は間違いだ。」


「え?そうなの?!」


「ああ。そもそも魔法が先で〔昇格の儀〕、次か同時期くらいに《紋章》が誕生したと言われている。

 紋章が完成したのは聖王家によるものらしいがね。」


「要は道具と呪文があれば、理論上は職業の枠と関係無く魔法は使えるのさ。

 但し実用的か、と言われれば否だ。準備にかかる手間、費用、器材。

 更には呪文を完璧に使いこなす技術と記憶力、唱え切る時間も必須だ。」


「魔力を貯めて呪文名一つ。

 それが〔魔法クラス〕を習得した魔法使いの魔法使用に必要な手順だ。戦場ではどちらが有益かなんて考えるまでも無いだろう?

 これが魔法クラス以外に魔法は使えないなんて言われる要因さ。」


「魔力が足りてれば呪文と道具だけで出来るのなら、戦場に限らなければ使いどころくらい在りそうでは?」


「あるかもね。但し〔魔法クラス〕なら時間も道具も必要無い。

 経費は桁違いだ。魔法クラス習得の利点は、全ての魔法に及ぶんだよ。」


「ほうほう、それほどまでに。では何故魔術文字を覚える必要が?」


「魔法が使えないから。設計図があったって読めなきゃ意味無いだろう。

 実は魔術文字が読めれば〔魔導書〕を使用するだけで魔法は使える様になる。

 さっきの講義も実はそんなに重要じゃ無いんだ。私みたいな研究者や、錬金術師以外にはね。」


 言いながらエロ姉さんことマリーテは書架から〔魔導書〕を一冊取り出す。


「という訳で、魔法の修得数は〔魔導書〕を使用した数で決まる。

 これは【下位火球(フランマ)】の書で、これを君に使わせれば、私は君との契約は完遂した事になる。授業は終了だよ。」


「で?【木材錬成】その他諸々は?そもそも魔導書を作るのって錬金術師だよね?

 使うのと教えるのは違うの?回数制限どうなってるの?」


 わくわく。ワクワクワクワク。


「ち。嵌ってくれなかったか。

 〔魔導書〕に回数制限は無い。但し〔魔導書〕抜きに、魔法クラスと同じ魔法を習得させるは不可能と言って良い。複雑過ぎてね。

 で。魔導書の販売価格は聖王国が定価を定めている。軍事物資だからね。

 基本譲渡はともかく高く売るのも安く売るのもご法度、犯罪だ。

 聖王家の法は、各国諸侯よりも強制力が強いぞ?」


 譲渡自体も条件が付き、基本は弟子か血縁のみだ。とはいえ積極的に調査される程では無く、要は連座の対象、責任者になる。

 血縁か師弟関係を証明出来ない場合、一発アウトで処刑な訳だ。


「つまり些細な罪状が処刑案件に化ける?」


「そういう事だ。元々高額商品だ、金目当てにしても割に合わな過ぎるだろう?」


 因みに褒賞としての譲渡は合法。こうなると国も褒美の価値を保つため積極的に法を守りたがる。何せ魔導書を増やせる錬金術師を保護し、抱え込むだけで元が取れるのだから当然だろう。魔導書に中古は関係無いのだ。


「〔魔導書〕の使用は〔魔法クラス〕が魔導書に魔力を込める。

 術の使用に必要な条件を満たしいていればこれだけで修得出来る。だから購入の際は実際にその場で使えばいい。真贋が分かる。

 何で魔法屋も購入前に魔導書は触らせてくれないよ。魔法屋自体、国の許可必須だから詐欺は許されない。金の持ち逃げをした日には一族全員財産没収の上で処刑だから、安く魔導書を売ってる店は詐欺だ。」


 そう言うと、マリーテが今度は四冊の魔導書を机に並べる。

 自覚無いだろうが、実に並べ方が煽情的でエロい。こう、微妙に谷間がね?


「とはいえ実は、例外がある。それが〔生活魔法〕と呼ばれる魔法群だ。

 更に補助魔法、神聖魔法、戦闘魔法の三分類に属さない魔法は制限が無い。

 理由は幾つかあるが、単純に新しいか古過ぎて聖王家に認識されていない、単価が安く軍事的な意味合いが弱い、需要が多過ぎる等があるな。」


「後者は詰まるところ希少魔法だ、価格も入手難度も高いだろうね。金で買えるとは思わない方が良い。」


 当然ながら、私も実例は知らないと話を進める。



「そして二番目が〔生活魔法〕と呼ばれる所以。


【スペック】指で作った枠の中で、自身の「クラス、LV、HP、MP、スキル、状態値」を視認出来る。見えるのは自分だけだ。


【ランプ】数時間程度の間、松明くらいに輝く魔法の明かりを灯す。


【ボイル】コップ一杯~鍋一つ分程度の水を沸騰させられるが、量が増え、水から離れるほど難易度が増す。


【イグナイト】火を点けるだけの魔法だ。燃やす物が無いと持続しない。


 実はこの魔法群、クラス未修得者には使えないが魔法クラス()()()使える。」



「へ?それって知られていないの?」


 その通りと頷くマリーテは驚いたアレスに満足気だ。


「殺傷力は無い上に効果も微妙だろう?

 しかもこれ、全部自分が便利だけど人に使うと途端に大変になる。薪も油も不要になるから、引っ張りダコ間違いなしさ。

 だが戦士系はMPが簡単に尽きる。人に頼られるには不便なんだよ。」


 魔法の練習用にと、実際に習得して良いよと勧められた。

 これって習得魔法数に限界が出たりしないのだろうか。


「ほほう、そこに気が付いたか。実際俗説では習得限界があると言ってるね。

 だが実際は迷信さ。何せ魔法文字も術式の数も、最初の登録数から増えてない。

 魔法の習得限界は、術者の制御力と相性によるんだ。数じゃないのさ。

 説明してあげるから、先ずは〔魔導書〕を使ってみたまえ。」


 アレスが勧められるままに魔導書に手を置き、魔力を流すと。


「……へぇ。こりゃ凄い。」


 脳裏に必要な手順と呪文全てが流れ込む。呪文一つと必要な魔力を唱えれば直ぐにでも使えそうだと感覚的に分かった。


「分かるかい?それが修得上限があると思われる理由さ。

 必要な情報が全て入って来るし、一旦習得したらいつでも思い出せる。この忘れない特徴が上限疑惑を抱く理由だよ。

 実際には術者の苦手属性と、魔力の制御力。後は元々の魔術文字への理解力不足で術式の一部が読めていない、等もあるねぇ。」


 そういや学識不足だと魔法が習得出来ないんだったな。そういう解釈なのか。

 あと妙に用いられた魔術文字が少ないのも気になった。


「それも生活魔法の特徴。必要な術式の数が他の魔法と比べて遥かに少ないから、クラスの補助効果が不要なんだろうね。

 あと雑用仕事を回され易くなるから、人に教えるのもデメリットがある。」



「最後に属するのが別名〔錬金魔法〕と呼ばれる三種の魔法だ。

 君が欲しがっている【木材錬成】【石材錬成】【金属錬成】の三種は資材調達という面で有益過ぎて、国が規制したくない、使い手を増やしたい魔法に属する。」


「つまりその三種の入手単価は安い?」



「魔導書の中ではね。だが欠点もある。


 この三種は元となる素材を再現する魔法なんだ。形状が複雑だったり複数素材の混合物だったりすると途端に跳ね上がる。

 単純構造のインゴットや板を複製するのが一番楽な点、これが一つ。


 二つ目は資材創造という特性上、現物が残り続けないと意味が無い魔法だ。その分必要となる魔力量は多く、増やせる数も余り多くない。


 最後に、生産品の単価は決して高くないんだよ。

 元手ゼロという点では物凄く優れているがね。建材とか骨組みとか、安く大量に用意出来るからこそ価値がある魔法だというのは君も分かるだろう?」



 理由が世知辛いなぁ。どうやら魔法部隊に工兵をさせるのは効率が悪そうだ。

 素材の加工はあくまで職人の領域らしい。



「後ね。その三魔法は素材、材質に対する理解力が必須だ。

 だから下手な攻撃魔法より習得難易度が高いんだ。

 幾つか専用の記号や術式を覚える必要がある。」


 マジかい。

※外伝整理も兼ねた、冬休み連続投稿中です。詳しくは001+6前後書き参照。

 年末年始はほぼ毎日になってしまった……。


 本編の魔法解説兼、歴史設定微解説。

 エロ姉さんは大学出身なので、庶民の中では大分詳しいです。

 学説の枠を出ない最大の理由は、専攻が考古学では無く魔導具開発だからです。



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