001+6.間章 アレス糞餓鬼第二金蔓王子、王族入り。
※年末年始、投稿予定表。
本編。21日、22日、24日、25日、28日、31日、1日、2日、3日、4日、5日、11日。
零部。20日、26日、27日、29日、30日。
??、31日。ちょっと整理してたらごっちゃになってつい……(吐血。
◇◆◇◆◇◆◇◆
グレイス宮廷伯の養子アレスは何故か聖人認定されて異世界に転生したが、自分が聖人に相応しいと思った事は一度も無い。
敢えて言おう。アレスは自分が俗物である事に誇りを持っている。
先日正式に王族入りしたと説明があり、今後はダモクレス城の中で暮す事になるのだが、実は未だ誰が次の義父になるのかは聞いてなかった。
尤もアレスとしては誰の子でも構わない。少なくともさほど悪い扱いを受けないとは予想が付くし、何より今は密偵として本格的な知識や技術を学んでいる。
先日一般常識方向で色々抜けた、大分偏った教育を受けた可能性が発覚したので座学の量は増えたが、正直頭が上がらない程に有難い。
単純な読み書きとダモクレスの歴史は問題無かったが、一般常識は含まれない。
今では逆に記憶喪失じゃ無いとは誰も疑わなくなった程だ。
『子供に〔昇格の儀〕を行わないのは負荷に耐え切れないからだ。
まして一桁の赤子同然の相手に行うなど狂気の沙汰と言って良い。君の実の両親は、相当に追い詰められていたのかも知れん。』
ハイロードに関しては、少なくともダモクレスでは記録に無いクラスだった。
だが特殊クラスに転職出来るのは聖都のみで、それ以外は意図せぬ偶然の産物でしか成立しないらしい。
極端な話、今回歴史上初めて観測されたクラスと言う可能性も有り得るのだ。
そして実際、アレスにはそれが成立する背景がある。分からないなら分からないままにしておくしか無いだろう。
というかぶっちゃけ、神様絡みだと確認する手段が無いかも知れない。
兎にも角にも今回は王族入りしたので養父との対面と陛下への報告を行い、今後アレスが住む事になる部屋へ案内される手筈となっている。
そして同時に顔合わせをする事になる。
原作主人公である、アストリア王子その人に。
「さあ、君の父親になるダモクレス王陛下だ。
先ずは、御挨拶を。」
…………心の準備をさせるべきだったと思います。
「いや流石にヒドくない?国のトップに会わせるのに礼儀とか作法に問題があると分かった上で黙っておくとか。
思いっきり国外逃亡の手段検討してたんだけど?」
「まあぶっちゃけダモクレスで礼儀作法を使うようにしているのは他国と交渉する時に忘れんようにするためじゃからのう。
王城内は作法の練習場所みたいなものなのじゃ。失敗したところで皆が教え合うだけの話じゃ、誰も目くじらなど立てはせん。
……いや、グラットン将軍だけは目くじら立てるから、奴の前だけは注意せい。」
……儀式が終わったら普通に雑談が始まりました。城内では基本的に敬語だけど、今の様に人払い出来る私室や庭園なら私語自由だそうです。
思った以上にフレンドリー。というか王家も言葉遣い気にしないの?
「えっと。そのグラットン将軍はどの様な立場の?」
「うん?将軍だぞ?戦場での大将を勤める三人の一人じゃ。」
「一応役職以外では……、あの山の領主になるのか?
それとも砦頭?しかし住民は……。」
「えっとつまり?」
「向こうの山の管理者、森番の様な立場だな。猟師達の元締めになるが、厳密には王家の直轄領になる。奴自身の所有物は砦を兼ねた館一つになる。
一応対外的には騎士爵の一人だな。爵位は把握しているか?」
「えっと。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵、貴族位の順。
上位五爵位は領地持ちを指し、騎士爵までは聖王家のみが任じられる爵位。
貴族位は王家が承認出来る貴族身分。だよね?」
「宮廷爵も王家が役職として任ずる事が出来る爵位だ。主に大臣や直轄領の代官一族などを任じる際に用いる。但し各王家に、聖王家が定めた上限爵位がある。
有効なのは任じた王家の領地内に限り、他国では爵位が優先される。」
「つまりグラットン将軍はあくまで将軍位に就いている騎士爵だと?」
「いや、騎士爵は息子に譲っとるから只の重役職持ち貴族じゃな。」
なるほど?微妙にめんどい立場?
「まあぶっちゃけ王家と貴族以外は割と形骸化しとるがのぅ。」
「え?」
「王家は聖王家が統治権を認めた紋章持ちの複数領地管理者だ。五爵位以下を家臣として従える事が出来る。
だが謀反を起こしたり王家が滅んだりで、爵位持ちだけが残った場合もある。」
「爵位は罪状が無い限り、基本没収されないからのぅ。
実は王家から爵位持ちが独立しても咎められはせん。王家側に咎める権利が与えられているからのう。処罰出来ぬ方が悪いという方針じゃ。
噂では男爵以下の領地しかない公爵もいたと聞く。」
まじかい。
「爵位より王家の方が上だし、聖王家の前では爵位を優先せねばならんのは古来と変わっていない。儀礼的な場では作法が優先される。
だが実際の外交では王家なら地方で中央より東部、北部が格下扱いだ。
西部や南部の情報は全く入って来んが、概ね東部と同じかそれ以下だろうな。」
「大抵は爵位より国力と国益を優先するが、まあ優位に立てそうな方でマウントを取るのは常識じゃろう?
国力なら聖王家の大公は大抵の国より上じゃが、向こうは陪臣で王家は直臣。
王家なら可能な限り頭など下げん。他国への対面もあるんでの、経済力なら多分百倍くらいダモクレスと差があるが、儂も頭は下げん。」
「ひぇえ。」
「まあ話を戻すとグラットン将軍とグレイス宮廷伯は一代限りの将軍職で今は対等になっとるとはいえ、元は騎士爵じゃ。
今のダモクレスには男爵位以下しかおらんが、宮廷伯までは任じられる。つまり昔は伯爵までは居たという事じゃな。
そこのグレイスも対外的には生涯騎士爵じゃよ。」
あぁ、何となく関係が見えてきたぞぉ?
宮廷伯は代々の密偵職の統領な訳ですね?王家の懐刀的な。
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紋章の事を知っている彼らとしては、アレスを他国に連れて行かれると隠し子として担ぎ出される事を警戒しなければならないそうです。
マジか。紋章があるだけで血縁証明出来るとか雑過ぎでは?
本物かどうかより紋章が有る方が大事?そっかー。
何というか予想以上に王様がぶっちゃける人だったが、距離の近さという面では歓迎すべきだ。あの場にアストリア王子が居なかったのは王子に何かあったという話では無く、軍馬のお産で人手が足りなかったかららしい。
直系王家が馬のお産の手伝い、か。うん。まあ未だワシに王位継承権が与えられたという話でも影武者を頼まれたという話でも無いのは安心だ。
ぶっちゃけアレスがする事は書類にサインして陛下に承認印を捺して貰うだけなので、準備が整うまで雑談で時間を潰していたのだが。
「伝令が戻って来たが、大分難産みたいでいつ終わるか分からんとの事だ。
グレイス、先に部屋を案内してやってくれ。」
「まあ養子に王位継承権が即座に与えられたりはしないから安心しろ。
基本的には傍流王族の仲間入りだと思って良い。」
一応無関係な者が脅迫で玉座に就けないように、養子に継承権を与える場合には陛下自ら聖都へ出向く必要があるらしい。
「ん?それって例えば王様が病床で養子を必要とした場合は?」
「聖都にお願いして権限を持った王族にお越しいただく必要がある。」
経費?当然申請側負担だよ?嫌なら素直にお家取り潰しになり給え。
◇◆◇◆◇◆◇◆
部屋へ向かう途中、直系王族しか入れない庭園にアストリア王子が寛いでいた。
「……アストリア王子、何故ここに?」
「お産が終わったから、入浴してからここで待つって連絡したからだけど?」
グレイス宮廷伯の問いにアストリア王子が事も無げに答える。
しれっと言い放っているが、風呂を沸かすのにかかる時間を考えれば明らかに早過ぎる。一体何故と更に問われれば。
「彼が広めたんだろう?温泉への入浴は。
小父上達が張り切って遂に数日前温泉橋が完成したから、今後王族は好きな時に風呂に入れるようになったんだ。」
アレスへの説明を兼ねてくれる辺り如才無い。発言内容だけなら気が利いている筈なのに、現状の寛ぎっぷりが良い空気吸っている様にしか見えない。
「まあ彼が私の弟になる少年で合っているのだろう?折角だからここで紹介を済ませてくれないか?
私は第一王子、アストリア・ダモクレスだ。」
早速庭園で雑談序でに、今後の予定を聞く事になった。
「まあそうは言っても十歳以下の王族に勉強と稽古以外する事って無いからな?
下手に婚約結んで早逝されても娘を傷者にされたって賠償求められたり、侵略の口実にされる事もある。
ある程度急死しない年齢まではとにかく一人前の知識と体作りだ。後は城内の仕事を覚えろ。外交も内政もそれからだ。」
「強いて言うなら私には同年代の子供がいない。
今は差が開いているだろうけど、いずれ一緒に勉強する事になるだろうね。」
それが普通なんだぞ、と言外の圧力を眼光に込めてグレイス宮廷伯がアレスに説明し、アストリア王子が補足する。
え?内政の真似事をした幼児が居るって?ソイツは誰の事だい?ハハハ。
簡単に城内の役割を説明されると、概ねこんな感じだ。
侍女が掃除と世話を担当。服飾の管理も侍女集が行う仕事の一環らしい。
従者が城内の資材管理を担当。特に人事や書類仕事の補佐がこちらだ。
役人が領内の管理を担当し、大臣が統括し、王が決定する。税収を管理するのも役人で、不足分の調達などを行う。
治水事業など公共事業に駆り出されるのも基本的に役人達だ。人手不足の時には人足として住民が呼び出されて強制徴用される。
元々税金は田舎ほど貨幣が足らず、時に物々交換される程度には量が無い。
税金分の貨幣が流通していない土地もあるので、全額金銭で支払われる事は寧ろ少なく、開墾地ほどこの傾向が強い。
大抵は荘園での労働を対価としたり、公共工事の人足として徴収されるのだ。
因みにダモクレスの場合、荘園など無い。
全て公共工事か交易品の生産手伝いでノルマが消化される。但し臨時で兵卒仕事に消化される方が多いので、王家は公共工事の為に金を稼ぐ必要がある。
城内の中庭はほぼ農地か畜舎か薬草園で出来ておりますよ~?鍛錬場も勿論確保されてますとも。集団戦闘を教えられる場所は基本的に城のみです。
農地か牧場以外の空き地なんて、ダモクレスには無いよ。
市場は全部城内だよ。安全安心は貴族達が保障してくれるよ!
え、貴族身分?司法関係者の事だよ?役人は全員貴族だ。一代貴族もあるぞ!
兵役は持ち回り仕事なので、給料が出る分住民には評判が良い。盗賊退治の成果は兵の治療費を装備品売却費で賄い、残りが報酬として支払われる。
敵の将兵や貴族を捕縛した場合は身代金を支払える場合のみ、手足の一本を斬り落とした上で交換に応じる。
兵卒?捕虜など取らん。全員畑の肥やしだ。畑を焼かれた金額を払える盗賊などこの世におらん。生活に余裕があったら他領など襲わんわ。
「何言ってる?人命の替えは利くが、飯の種の替えは無い。
牛や馬の方が盗賊より遥かに高級品なんだぞ?だからせっせと予備を貯えねばならんのだ。敵兵を食わせる食事などこの世には無い。常識だぞ。」
わぁ、末法乱世。家畜の権利は保障されているが、人権は税収と引き換えだそうでゲス。賊盗の価値など持ち物以外にありません!
家畜ってつまり、人の喰えない物を食べる超長期保存食なんですぞ!?
「まあ王家だって国を運営するために働く必要があるんだよ。
差し当って君は、傷薬用の薬草栽培に従事しつつ各種勉強だ。」
違うからね皆!ゲーム画面外の皆!
国家は税収で運営されるものだから国債なんて借金が存在するんだからね!
王家が稼ぐ(政治で)じゃなくて(労働で)とか絶対間違ってるからね!
「そもそも人口って足りてるんですかぁ?」
「「一番家に足りてない部分かなぁ。」」
「で?どうでしたアストリア殿下。」
「彼は凄いね。特殊クラスにも間違いないし、自覚があるかは分からないけど既に何らかのスキルに覚醒しているよ。」
「ではやはり。」
「ああ。父上には早急に東部外交序でに聖都まで出向いて貰う必要がある。」
「では表向きの口実はやはり。」
「まあ十中八九、私の婚約者探しだろうね。
その間、国の事は任せたよ。」
「あいつが大人しくしてくれれば、何とか。」
※年末年始、投稿予定表。
本編。21日、22日、24日、25日、28日、31日、1日、2日、3日、4日、5日、11日。
零部。20日、26日、27日、29日、30日。
??、31日。ちょっと整理してたらごっちゃになってつい……(吐血。
※年末中に十話まで投稿予定です。第零部完結はもうちょっと先。
多分次にまとめて投稿する時に完結すると思います。
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