001+5.間章 アレス糞餓鬼第二金蔓王子、エロ姉さん。
※前回8/9~10日からお盆投稿を開始してます。
今回は12日~16日の5日間投稿となります。第零部5日目の連続投稿となっておりますので御注意を。
次回からは第三部の投稿に戻ります。
※本編からシリーズ枠に移転させました。内容に変更はありません。
本編側の第零部は年内に削除予定です。以後の第零部は此方で投稿します。
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ぶっちゃけた話、ドルゴンに似顔絵が描けた時点でアレスがその気になるだけで全部どうにか出来る目途が立ってしまった。
強いて言うなら救出作戦だが、捕虜の無事も海賊達の位置も確認出来た。
しかも近くの無人島を経由すれば、割と安全に海賊達の拠点に行けそうだった。
(こ、困るなぁ……。調べられなかったら諦めろって言った手前、全部出来そうな時点で止める方法無いぞ。)
というか救出したい。それに長期的に無事とも言い切れない。
今無事なのはどうやら誰が手籠めにするかで海賊達が牽制し合っているからだと判明してしまった。
先日の襲撃はもう数人くらい女を攫って妥協しようという話だったらしい。
色々ヒドイが要は海賊達の話だ。いつまでデレデレと鼻の下伸ばしてくれるかは分からない。いつ忍耐の限界が来て暴走しても不思議はない状況だ。
アレス限定なら戦う手段も実はある。
非売品アイテム〔忍術極意絵巻〕。
特殊クラス忍者の使う固有魔法『忍術』を使える様になる装備アイテムだ。
基本的な武器だけなら他の面々も持っている。
正直前世の子供と違ってアレスが友人付き合いしている面々は、全員ある程度は戦える。将来的には兼業兵士になる事が決まっているからだ。
無人島に食料を運び込んで、人質を解放したら島に隠れて海賊達をやり過ごす。
それだけなら出来なくはないと言えそうな子供が揃っているのだ。
というか。
「食料持ってきましたぜ隊長。」
「武器は一応盾と短剣持って来た。俺達が大人用の武器使っても無理だからな。」
「舟はこっそり借りるのはギリギリ出来そうだ。」
全員、むっちゃ乗り気。
実際エロ錬金術師ことマリーテは、絵だけで分かるエロさだった。
先ず胸がデカい。魔乳。ちょっと普通の服だと零れそうなレベルで襟を広げないとはみ出すくらいデカい。つーか多分零れる。
尻もデカい。なのに腰が細い。絶妙にだらしなくて隙がある。
本人も気にしてるらしいが裁縫が得意では無いので、近所の服屋のお嬢さんが特注に応じてくれなかったらしく、下着はギリギリサイズ。実際アブナイ。
アレスも発見した時思わず真顔になった程だ。
料理だけはそこそこ出来るのもツボに来る男は多いだろう。今彼女が無事なのも海賊達の食事当番を、他の捕虜達と共に引き受けているからに他ならない。
食事に毒を盛られる警戒はしている様で、料理を配る前に全員牢に戻している。
彼らに何かあったら捕虜達は脱出出来ず、飢え死にするという訳だ。
ここまでエロだけを追求した見た目、仕草が狙って出来る女が果たしているのかと問いたい。というか狙って出来るレベルじゃない。
(お、恐ろしい子ドルゴン……!何て自制心なのかしら……!)
本人曰く、距離が近過ぎてだらしなさの方が気になるらしい。
というか嫁に行けるのかを心配している様だが、向こうの気持ちを絶対に本人の口から確認したい。彼女何で他の男の誘いを断ってたんでしょうね?
「舟なら盗まなくても二つある。けど言った事を忘れるなよ?」
「分かってるって。忍び込むのは三人、俺達は無人島待機だろ?」
「『伏兵』を習得したのは三人だけだからな。
流石に子供だけじゃ勝てねぇって。」
「俺が言うのも何だが乗り気だなお前ら。」
夜。作戦決行の為に集まったのは砂浜じゃなくて崖際の岩場だった。
こっそりと舟を出しておくために、アレスは一番先にここへ来た。
この場に揃ったのはアレスとドルゴンの他は。
密偵志望ジョニー。騎士志望カーター、アラン、エミール。
魔法使い志望トミー。神官志望で紅一点ケイトリー。
「……あの。ケイトリーさん。」
「あなた達だけで女の世話とか無理でしょ。
そもそもあんた達があたしに隠れて何かするって出来ると思ったの?」
「ハイ。」
無人島までは問題無く上陸出来た。どうやって調べたかは一切教えないし気付いても秘密にする条件でアレスは協力している。
だから目の前で《紋章》を使わない限り問題無いだろうと、アレスは目的の洞窟の中へ一同を案内した。
「俺達三人以外はここで待機な。
出入り口からは明かりも漏れないから、声だけ気を付けろよ。」
ここは舟のまま途中まで入れる洞窟だ。全員で船を引き上げてしまえば外からは見えない。一応ランプの明かりが漏れない位置も確認した。
空気の流れに付いても頭上に外へ繋がる亀裂があるので問題無い。
彼らと別れた後は、海賊達が拠点にしている島に漕ぎ出す。
「あそこを拠点にしている連中は近隣の勢力争いに敗れた連中だ。
数は十数人程度。ダモクレスに近過ぎて昔放棄された廃虚に住んでる。」
元々はダモクレスと争ってた国が作った橋頭保で、見張り塔だった場所だ。
三階建ての塔で地下一階。但し穴が開いているため快適とは言えない。
なので森の影に小屋を建てて、今はそちらをメインに使っている様だ。
「この条件が揃ってなきゃ救出は無理って言ったんだけどな。」
ぶっちゃけ見張りさえ倒せば何とかなりそうだ。島に上陸しても見張りは見当たらないという、驚きの警戒心の無さだが、一応理由はある。
見張りがマリーテに手を出さないかを警戒し、今全員が広間で雑魚寝している。
(警戒対象、身内かよ!)
救出し易いので文句は言えないが、突っ込みどころしかない。
こうなると一番心配なのは捕虜達が騒がないかどうかだ。
三人は問題無く見張り塔に忍び込み、上はジョニーに見張りを任せて先頭をドルゴンに頼んで降りていく。
牢屋の中の捕虜達は男女別に分かれていた。男は筵、女は毛皮を布団にしている様子で、実に分かり易い。
二人は頷き合って、顔見知りのドルゴンが女側、アレスは男側に向かう。
先に小声で声をかけ、騒がない様に頼むと、気付いた人間から仲間の口を塞ぎながら次々と起こしていった。
「……おや、ドルゴン?まさか生きて再会出来るとはねぇ。」
「声を控えろよ?助けに来たのは俺達だけだ、兵士はいない。」
「国まで逃げれば助かるけど、その前に見つかったら終わりだ。
慎重に行動してくれよ?」
鍵を開けて出て来た大人は男が三人程度、全員船大工だった。小屋の修理要員として連れて来られたらしい。
女性陣は難破船の厨房に努めていたオバちゃん達四人とマリーテ姉さん一人。
こちらもマリーテ以外は似た様な理由だった。
「船を沈めた理由?どうもわたしを誰が連れて行くかで揉めたらしいよ?
弾みで船底を壊して慌てて船長がわたしを抱えて飛び出したんだってさ。」
想像以上にひどい理由だった。
「ところでこの人数を乗せる船はあるのかい?」
「「「あそこ。」」」
敵の海賊船、そんなに大きく無いんですよ。
準備している間に小舟は全部縄を外して貰いました。
「あ!船だ!船が盗まれたぞ!」
「ち、気付きやがったか!」
遠ざかる序でに小舟の方も一艘だけ船に載せられたが、これ以上は運任せになる様だ。船大工さん達と協力してドルゴンが音頭を取って船を漕ぐ。
帆付きの櫂船だが帆を拡げるには船員の人数が足りない。櫂の数は左右十本ずつの最大二十人漕ぎでたった四人では速度が出せない。
だがこの船に追跡されると逃げ切れないからと、奪った方が一番生還率が高いという結論に達した。
後は彼らが小舟さえ回収出来なければ逃げ切れるという公算だったのだが。
「あたし達も漕ぐよ!」
「「「あいよっ!」」」
オバちゃん達のお陰で大分早かったので、無人島の面々も連れ帰る事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
港近くでは当然の様に大人達が篝火を焚いて待ち構えていた。
「当然、手紙に事のあらましは書いて残しといたわよ。」
「「「ひ、人助けだったんです!仕方なかったんです!」」」
「でもエロくなかったら大人に任せてたよね?」
全員大人しくなった。というかケイトリー、そこ知らなかったんだ……。
「で?お前は?」
「エロくて優秀な錬金術師とか絶対国に必要な人材じゃないでs!」
思いっ切り海に蹴り飛ばされてしまった。
「ねぇわたしはこういう時どんな反応をすれば良いのかな?」
「余計なことは言うな。絶対にだ。」
やっぱりマリーテ姉さん、ドルゴン君にしか話しかけませんねぇゴボボ。
「難民達の職が大体決まった。全員の移住を受け入れる事になった。」
手に入れた中型船で海賊達を襲撃に行ったダモクレス軍だったが、これで海賊問題が片付いた訳じゃない。むしろ片付ける目途がようやく立った、という所だ。
船大工達が定住してくれて、漸く小型船以上の船が作れるようになったお陰だ。
木材自体は足りているが、討伐用の中型船が揃うのは他の大工達がある程度仕事に慣れる必要がある。今年中に討伐を開始出来るかどうか。
正直アレスも本当にエロ姉さんの件が無ければ関わる気は無かったのだ。
あの後の訓練は本当に辛かった。ちょっと虐待入ってたと思う。というかアレスだけ別メニューだった。
「お前がいなければあれ程大事にはならないだろう?」
おかしいな。その気は無かったのに否定出来ない。
「まあまあ、塩田も基礎技術は確立した事ですし。
この資料で機嫌を直して下さいな。」
「……お前は、どうしてこれを儂に手渡す?」
グレイス宮廷伯が探る様な視線を向ける。
「塩の生産量増やして欲しいから。」
「……うん?」
「料理用の塩の生産量を増やして欲しいから。
新しい調味料を生産するために、必要なんですよ塩の増量が!」
椅子から転げ落ちた。
ふむ。変だな?正直に全て打ち明けた筈なのだが。
「その顔芸止めろ。ホントに止めろ……。」
「本能ゆえ。本能故にぃぃぃ…………。」
一息吐いて椅子に座り直す。実際アレスがやりたい事は塩造りでは無い。あくまで塩造りは国内の貨幣量を増やすための梃入れだ。
子供に出来る事など体を鍛える以外は頭脳労働しかない。
「……この際聞くぞ?お前、他にも幾つか産業の当てがあるのか?」
「ほぼほぼ飯関係ですが。」
バッチリよ、と太鼓判を押す。
実際応用は出来そうだが飯関係なのは間違いない。そもそも個人で出来る改革に限度があるのだ。重要なのは他の協力者を集められるかどうかだろう。
グレイス宮廷伯は、是非とも味方に付けておきたい一人だ。
「つい先日、新種の酒の開発に成功したと、献上があった。
お前が絡んでいる様だな?」
お、成功したのか。最近行けてなかったから心配してたんだが。
「お前、砂糖の件も未だ終わって無いんだからな……!」
「だってだって!砂糖作りの道具発注するためだったんだもん!
含蜜糖はもう完成したじゃない!分蜜糖は未だ器材不足だもん!」
「片手間でやる様な事じゃ無いんだよ……!」
ぜーはぜーはと荒い息を吐いて、揃って椅子にもたれかかる。
「取り合えず砂糖作りも含蜜糖なら売りに出せると思う。
こっちも量産体制整えたら交易に回しても良いんじゃない?
船を作れるようになったなら本格的に交易規模を拡大してよ。どの道他所の国と取引しないとこの国の発展は頭打ちだよ?」
いつか方針転換しなきゃいけないなら今して貰いたい。その為に必要な知識ならある程度は出せる。だがこの世界の住民の協力は必須だ。
「簡単に言うな、急に人出は増えないんだぞ。」
「まあね、計画自体は十年単位で良いさ。
でもまあ、増やす当てはあるだろ?」
「難民か。だがおいそれと信用して国を乗っ取られる訳には行かん。」
「けど多過ぎる。特にあれ程の人出が、簡単に国を捨てられる訳が無い。」
異変は感じ取っている筈だ。今だ北部には届いていないが、それは元々北部が他より変事に鈍いからだ。
なのにこれ程多くの海賊が蔓延るまでに、近隣以外で造られた船がある。
「……お前が商売を始める気は無いのか?」
「将来的に他人に譲り渡して良いのなら。」
グレイス宮廷伯はアレスの言葉に考え込む。やはり地頭が良過ぎる。
子供の知性とは思えない程の見識がある。だが、知識だけでこうもなるまい。
既にグレイスは子供と話しているとは思えなくなっている程だ。
(他人に譲り渡す、か。商売で得られる利益に興味が無いという事か。
だが、野心とは全く違う。コイツは、必要があるからやっているだけだ。)
交易を手段としてしか見ていない。趣味はあるだろうが、それだけでは無い。
開示する以上は結果を追求しているのだろう。明らかに描いている盤面がある。
だがその利益は、果たしてダモクレスを見ているのかどうか。
(……いや、違うな。問題は何が起こるか、起きているかだ。
ダモクレスが使えるのなら、使うタイプだ。)
目的のために手段を選ばないのでは無い、目的に合わせて手札を選ぶ。
いっそ趣味趣向に叶った手段を選んでいるのか。
「お前は次に、何をやる気だ?」
「錬金術を学びたいですね。いずれは魔法も。
ですが、先ずはその基礎知識から。」
無償で教えて貰えるとは思わないが、授業料程度の支払いはお願いしたい。
報奨金の類を頻繁に出すのは簡単じゃ無いだろうから、王族入りが確定しているのならそちらで相殺する形になると思う。
(……下積み、か。)
では早急な変事を予想している訳では無いのか。
「魔法、か。どちらの分野を目指す心算かは知らんが、知識は必要だな。」
(ん?)
「基礎クラスの選択はよく考えておく事だ。
修得出来る魔法は〔成人の儀〕でどのクラスを選択するかで決まるのだから。」
「……成人の、儀?」
「ん?どうした。」
そう言えば何で、基礎クラスの獲得を〔成人の儀〕って呼ぶんだ?
いや、待て。確か何処かでその辺の話を聞いた事が、合った様な……?
『レジスタ大陸の住民はこの秘術を成人の儀として行い肉体を強化する事で、長き戦乱や他種族との闘争を生き延びてきました。
クラスチェンジは何段階か存在し、条件を満たす事で更なる強化が図れます。』
by攻略本。
「あ~~~~!せ、成人の儀!?だから成人の儀?
もしかして段階が必要的な?!成長にデメリット的な?!」
「な、何だ?どうした、何か問題でもあるのか?」
思わず立ち上がったアレスが呆然とする様に驚き、腰を浮かせたグレイス宮廷伯が慎重に様子を伺う。だがアレスは思わぬ事態に動揺の脂汗を滲ませる。
【アレス、LV2。“ハイロード”。~】
「……ああ。うん。ワタクシ、魔法修得に障害無いですわ。」
「おい?何を言ってる、魔法は基礎クラスで魔法職を選ばない、と。」
そこで口に上った言葉の意味がグレイス伯の脳裏に引っ掛かる。
「……おい、お前まさか……。何だ?」
「ハイロード。成人前の子供に〔昇格の儀〕を受けさせるって、普通?」
「んな訳無いだろお前まさか特殊クラスかよ……。」
伯曰く、普通は不可能。〔成人の儀〕は集団で行う〔昇格の儀〕の事だった。
特異体質的な理由で基礎クラスに変化が起きる事が稀にあり、これによって基礎クラスのハイクラス化が成立する事はあるという。
そしてそれらも含めて想定外の昇格が生じた転職全般を指して〔特殊クラス〕と呼ぶのだ。ゲームと違って、全てが事前に分かるとは限らないのだ。
無論、ハイクラスから特殊クラスへの昇格も存在しており、それらは事前に条件を満たせる事が分かるので、計画的な昇格は可能だ。
つまり〔特殊クラス〕とは、基本的に上位クラスの事であり。
1.選択した基礎クラスがハイクラス化する。
2.ハイクラスから更なる上位クラスへ転職出来る。
3.ハイクラスへの転職が上位クラス化する。
基本的にはこの三通りしか成立しない。
そしてどうやら伯も知らない隠しクラスの御様子。
ハイクラスを経由しない〔特殊クラス〕を成長期前の子供が獲得しているなど、当人が居なければ与太話と一笑に付される話である。
二人は揃って俯き、声も無く頭を抱えた。
※前回8/9~10日からお盆投稿を開始してます。
今回は12日~16日の5日間投稿と言ったな?
アレは嘘だ、何故なら通常投稿は17日、明日だったw
※本編からシリーズ枠に移転させました。内容に変更はありません。
本編側の第零部は年内に削除予定です。以後の第零部は此方で投稿します。
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