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交差点に立つ少女 ~水谷聖香のサイコメトラーシリーズ

作者: 白音 藍奈

 水谷聖香(みずたにきよか)が見えたのはそこに立っている一人の少女だった。少女はバーチャル・アイドルで歳は16歳だという。彼女の名前は桜井美咲(さくらいみさき)と言った。もちろんアイドルなので芸名だろう。聖香は事件が起きた交差点にいた。


 彼女は10月12日生まれ、生まれ育ちは東京、誰とでも気さくに話すが心を許す相手は彼女が選んだ人だけである。全て自己基準で考えて選ぶため、一見オープンに見えるが実は慎重なタイプに見られたという。彼女が心を許すタイプは全て彼女が自分と対等な立場で話せると判断した人であり、そうでない人には心を開かないタイプに映ったようだ。


 彼女の所有欲は人一倍強く自分がアイドルであることへのこだわりは時に彼女を強くし、時に苛立たせる原因にもなった。アイドルとしての姿勢を打ち出すために努力をしたいと思った。一方でそんな自分を自負したくて、周囲とトラブルも起こりやすくなっていた。


 彼女は時に自分を大きく見せようとした。気分がいい時は人におごってあげたりもしていたらしい。一度心を許せると思った人への対応は良くて、ボス的な存在だった。


 プライベートな彼女は郷に入っては郷に従え的なタイプだ。自分のルールが通じる世界が彼女にとっての世界だ。それ以外は認めないという性格らしい。良く言えば自己ルールにうるさく、悪く言えば人に合わせられない頑固な面もあるということだろう。


 彼女は自分の価値観が通じる世界を探し求める性格だった。それは学校や自分が属するコミュニティという狭い範囲を超えた場所でもあった。その点、アイドルというのは彼女にとって理想の仕事だったと言える。アイドルを応援する人は、今はネットを通じて世界中に自己をアピール出来るからだ。自分が得たい物を今いる場所に囚われずに拡散し求めることができる彼女の性格はアイドル向きだと聖香は思った。


 客観的に見た彼女自身は人を支えるポジションでることで安心感を得ていると考えていた。グループの中で自分を目立たせることで周りが安心できるような人であること。リーダーシップを発揮することや、例え目立たなくても影からサポートできるような不思議な魅力を持った彼女であること、彼女自身がそう考えていたわけではない。それはきっと無意識にそう思わせていたのだと思う。ちょっとミステリアスな人に見えて、でも心の支えになるといった感じだろうか。


 彼女が心を許した相手はどうだろうか?相手には彼女がどう映ったのだろう?それは彼女がいつも自分を見てもらいたいと内なる積極性を持っていた。その相手とは恋人や好きになった人、親友、心赦せる仲に見せる人だけの彼女の顔でもあるのだろう。

  彼女のことが聖香の脳裏に見えた。彼女は3年前、この交差点でファンだった人物に襲われ命を落としたのだった。仲間のメンバーやファンたちも一同に悔しがった。事件を事前に防げなかった運営はその管理体制を悔やんだ。だが時遅しで世間から批判されグループは解散した。


 彼女が命を落とすトラブルに巻き込まれたのは彼女の持つ性格や人間性が原因だったのか?それともたまたま外れファンに当たってしまったのか、今となっては解決の糸口はない。


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