どっちが上?
陰陽師が心配そうに九朗に近づき、顔を下からうかかがう。
「あれ、なんだか、いい香りがしますね」
「今の今まで、お香がたかれた部屋に居たもので…」
「オメェ…、覚えてろよ…」
四郎がひきつった笑顔で九朗を見と、陰陽師が四郎を見ながら鼻で笑った。
四郎が陰陽師を睨む。
九朗が急に立ち上がって壁に肩でもたれかかると、はらりと縄が落ちた。
「はあ…。これからどうします?」
九朗の手に、キラリと光る八方手裏剣が握られていた。
(アイツは刃先が一つあったが、この子は刃先が8つある…)
九朗が八方手裏剣で、陰陽師の縄だけを切る。
「手は痛みますか?」
九朗が仏頂面で問いかける。
顔は陰陽師の方を向いているが、目線が下を向いている。
「え?あ、まあ、少しは…」
九朗が陰陽師に薬を投げた。
薬がゆっくりカーブを絵描きながら、スポッと、自然にB丸の手に収まる。
「塗り薬です。擦り傷にどうぞ…」
九朗は、陰陽師を見ずに顔を横に向けたまま話す。
「ああ、どうも…」
(はっ…。アイツの道理じゃ、この子の方が力量不足になるが、世も末だな。なんで格上の奴がクズなんだ)
ぎこちなく、自分の赤くなった手首に薬を塗りながら、心の中で悪態をついた。
「俺も手が痛いなー」
「もう、薬はないです。というか、薬を塗るほどでもないですよ、それ」
手首を痛そうにさする四郎に構わず、九朗がそっぽを向いた。