3人目
「ぐう…」
「おい、忍者様をなめるんじゃねーよ、タコ助が」
四郎がB丸の整った髪を手で撫でてぐしゃぐしゃにする。
「っ!縄で縛られているんじゃ…」
「あ?」
陰陽師が自分の顔を背中の四郎の方に向ける。
「なんだよ。こんくらいの縄、抜け出せないんじゃ、忍者って言わないぜ」
四郎が手をひらひらさせながら、不敵に笑う。
「忍者は服にたっくさん隠し袋を持ってろのさ」
いつも間にか、A四郎が棒手裏剣を持っている。
「こーゆー、手裏剣を持っている忍者は腕がいいんだせ?腕が悪ければ悪いほど、手裏剣の刃先の数が増えるんだ」
四郎がさらに体重をかけ、陰陽師が顔をゆがませる。
タン、タン、タン、タンー。
かすかにだんだんと牢屋への階段を下りる足音が聞こえてきた。
「やべっ」
四郎が慌てて切った縄を拾い集め、縄の両端を両手で握り、両手を背中に回す。
四郎の正面からは縛られているように見えるが、後ろから見れば縄を切ったことが分かる。
「私はお前が縄を切ったことを言うぞ」
「はあ⁉」
小さな声で二人が話す。
「誓え。ばらされたくなかったら、後で私の縄を切ると」
「チッ…。分かったよ」
「ガチャン」と鍵が開き、「ギィー」と扉が開く。
真っ暗な扉の向こうから、縄で縛られた青年が倒れ込む。
「ガチャン」と鍵がかかる。
新しく入った罪人は牢屋の内側の扉の下に、うつ伏せのまま動かない。
「……」
「……」
「……」
四郎と陰陽師が、お互いの顔を見る。
「おい、大丈夫かい?」
四郎が体に巻いた縄が、はらりと落ちる。自由になった四郎の手が、倒れた男の肩を揺さぶる。
「……」
閉じていた目を開け、ゆっくり起き上がり、四郎と陰陽師の顔を交互に眺める。
「?」
四郎が首をひねる。
「どうか、いたしましたか?」
陰陽師が少し身を乗り出す。
「……」
目覚めたばかりの男はまたゆっくりと、うつ伏せになる。
「ちょい、ちょい、ちょい、ちょい!」
「起きてください!」
四郎が、青年を無理矢理座らせる。
人形のように扱われ、死んだ人のように首を垂れている男は九朗と言った。