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甘えんぼう
こうして、伍の宮の中庭に、茶色い毛の子犬が住まうこととなる。
名前はリン。
セリがすぐに赤い布で首輪を作ってくれ、昔、狩のためにたくさんの犬を飼っていたというサモンが、いっしょにしつけをしてくれた。
リンは賢く、アシや役神たちに吠えることもせず、用を足すのも、決められた場所ですることをすぐに覚えた。
ただ、ひどく甘えん坊な犬だった。
子犬なのでしかたがないが、仕事をしているシュンカを見かければ甘えた鳴き声で呼び、頭を撫でたり遊んでもらえたりするまでずっと続ける。
「・・・うるせえ」
「・・はい。すみません・・」
初めに文句をつけたのは、やはり坊主だったが、下界で遊び歩いて帰り、宮で昼寝する予定のセイテツも、これでは眠れないと、アシにこぼした。
しつけをしたサモンも、これだけおてあげで、何をしても治る様子はない。
仕方がないので、シュンカは、犬に呼ばれれば、なるべくすぐに相手をするようにした。