表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 あとは なし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/53

ずっと


 今は暗い場所にいるのではなく、『黒いもの』に飲み込まれているのだと悟ったのは、先ほどまで見上げてみた黒い切り傷のようなそこに、己がいた明るい空間が見えたからだ。



 逆転した



 口を開けていた黒が、おのれをのみ、徐々に閉じてゆく切り口のむこうが、元いた場所だった。



 ―― 本物の闇にのまれている。



 近くにいるはずの、ほかの人間はもとより、もがくように振り回した手、駆け出したいのに固まっている足元すら、 自分でも、 見えない。

 

 音が、 しない。


 耳が、 空気の動きさえ、 拾わない。


 本当に、自分のほかにも、ここに人がいるのか、 わからない。

 




「―――・・・おれはな、この、四の宮が飼っている、『ウツロ』の口をあけられるのよ。 ウツロはいつでも腹が減ってるから、何でも喰う。 ああ。おまえら、高山から来たのなら、もうひとつの方が通りがいいか。 ―― ウツロの別名を教えてやろう」


 ぱくりとあいていた口が、徐々にしまってゆき、明るいそこに見えたコウセンの緩い笑顔も狭まってゆく。


 別名はなあ――、と、もったいぶると、笑顔を消した。


「 ―― 『 冥界 』だ 」



   ぱしん 

 


  音とともに、口が完全に閉じた。



 恐怖に叫びをあげるが、開いた口からでるそれが きこえない。



 あの男は言わなかったか?


    固まるのを、『首まででとめてやる』 と。



 ―― ならば、首から上の感覚だけは、これからも、ずっと、残るのだ。


  なにも聞こえず、見えず、感じ取れぬまま

                      

  光も、音も、何もないこの ウツロ の中で。




      頭だけが 感覚を保ち、 ずっと ずっと  ――― 

  

  

  

  



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ