なじんできた
「拾った。 おれの宮ではもちろん、シャムショで飼うのは出来そうもなくてな。 チョクシやアキラには連れて帰るなといわれたが、どうしても、おまえに会わせたくてよお」
わ、わ、と声を出すシュンカは、懐から出ようとする子犬をいそいで抱き取った。
「かわいい!」
子犬は激しく尾を動かし、抱えたシュンカの顔をなめる。
「・・・コウセン」
セイテツの困ったような顔に気付いた男が、口の端をあげる。
「まかせておけ。あのわがまま坊主には何も言わせねえからよ」
「だがなあ・・。帝はなんと?」
この天宮に住まうからには、アレに許可を得なければならない。
「『好きにしろ』と。なんだか、楽しそうに言われたのが気には、なるがな」
絵師もそれに眉をひそめたが、なにしろすぐそこで子犬に語りかける子どもを見ては、そ
れ以上は聞けなくなる。
ともかくも、天帝に認められた子犬は、天宮にいて良いこととなり、セイテツとは違う用事で下界へ出かけていた坊主がもどれば、それはそれは渋い顔で、「イヌだあ?」とシュンカの抱える茶色いそれをのぞきこんだ。
きゅん、とこえをあげた犬が、子どもの懐へ頭を隠す。
「・・・誰が食うんだ?」
シュンカは引きつった顔で首を振りながら、懐を必死に押さえた。
坊主のそれが冗談ではないのをわかっているからだ。
ある意味、スザクに馴染んできたなと苦笑するセイテツは、くわねえよ、と坊主におしえてやった。