燃える札(ふだ)
残虐場面あり。ご注意を
さあ、と捧げられた刃物をしばらく眺めてから、コウセンはそれをつかみあげた。
もう片手で字をつづれば、光を放ち浮き上がった刃物はすぐに、立ち姿のゆがんだ顔色も悪い、長い黒髪の女になる。
床に膝を立てたカイが、それに聞く。
「おまえは、あの犬を刺したな?」
「はい」
「誰がおまえをつかった?」
「シュンカ――」
「やはり」
「――のカタチをまねた、おまえだ」
「な!」
長い髪がゆれ、のぞいた顔が、セリのものへと変わっていた。
一瞬で生き物のようにのびてうねった黒髪が、蛇のようにカイへと襲い掛かり、その懐にもぐり込み、何かを巻き取り、引き出した。
「この、型写の札、誰に渡された?」
髪を乱した女が聞けば、ぼっ、と音を発し、札がいきなり燃え尽きる。
火はそのまま黒髪を伝い、セリの顔をした役神も燃やし、やがて包丁だけが、からん、と床に残った。
いきなり奇声を発したカイが、踊るようにおのれの身を叩いて暴れると、懐から火のついた札をいくつか投げ捨てる。
「――ふん。見放されたな」
聞いたこともない、冷たい笑いをコウセンがもらした。
そんな――と信じられない表情で、カイと他の男たちは顔を合わせる。
そんなはずはない、 あの方は ――、とその名を口にしようとした者が、いきなり、ぼん、と炎にのまれた。
恐怖と苦しさの叫びを上げ続けた炭のかたまりがゆっくりと倒れるまで、ほかの男たちは、動けず声もだせなかった。




