人を喰う宮
ひどい場面はひとまずおわりです
かすんでゆれる視界に、床に捨てられ動かないリンがいるのに、どうすることも、できなかった。
「 ―― みの ほど しらずめ 」
ぜえぜえと息を切らせるほど、シュンカを踏みつけた男が、一度足を止め、さらに憎しみを溢れさせる。
「この犬もそうだ!!――あの、だらしがない男が拾ってきた汚い犬が、天宮に住むことを簡単に許され、わがもの顔であちこちうろつくなどと、めざわりだ! おまえも!この犬も!とっとと天宮を去ればよいものを、図々しくいすわりおって!いなくなれ! ええい、いっそのこと、コウセンとともに、この死の宮で消えてなくなれい!」
身体も動かせないシュンカの口が、「し、の・・・」とそれをなぞった。
「そうよ!この四の宮、なにゆえ従者がおらぬか知っておるか? ここはな、昔から『天の墓場』とよばれているのだ。下界でひどい罪を犯した人間はここに連れて来られ、二度とこの世には戻れなくされるという。 どういうことか、わかるか? ―― いいか、よく聞けよ。 なんでもここはな、この宮が、―― 人を、喰うらしいぞ 」
「ほお。どうやって?」
「こ!?・・・コウセン、様・・」
音も気配もなく、四の宮の住人が現れた。




