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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 ここのつ

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39/53

リン


 ひと安心して戻れば、アシはまだ帰っていない。

 男たちに茶をいれているだろうから、まだしばらくかかるだろう。


 

 ―― そうだ、リンだ


 今のことですっかり遅くなってしまった。気付けば水の催促にも現れていない子犬のところへいそぐ。

 




 中庭は静かだった。


「リン?」


 行儀が良くなったとはいえ、飯を運ぶこちらを見つければ、そのときはさすがに甘えた声をだすのに、それがない。


 いつでも月明かりがある天宮の夜。

 暗い中でも、青白い光に照らされ、小屋の場所はわかる。

 石の卓が冷たく白い色で浮かび上がる。



 自分の心音が聞こえた。



       おかしい



  「リン?」

 

 卓をすぎたのに、鳴声も、気配もしない。



 少し痛いが歩みをはやめる。

 

 小屋が見え、再度、犬の名をよばおうとしたとき、それがぼんやり光った。

 


  「っ―――――」  首から背に、寒気がはしる。


   怒った暗い目の男が急に思い浮かぶ。




 犬の小屋に、立てかけられた紙が、青白く光を放っていた。

 

 触ってはいけない気がするのに、すでに手がのびている。

 おそるおそる、指が触れた瞬間――

  

  ばしん!

 

 「っつ!」

  はじかれるように痛みがあって手を引いた。

  指先が切れ、血があふれる。

 


 それをにぎりこみ、もう一度、今度は奪うように紙を拾った。

 

 


          『    四の宮    』

  



  ただ、それだけの文字なのに、シュンカは何かにあてられたように、吐き気に襲われる。



  コウセンの笑顔が浮かぶ。

  頭を撫でてくれる、暖かく大きな手を思い出す。

  


        なにかあったら すぐに来いよ?




「 ――――― 」


      拳をにぎる。   歯を、くしばる。


            


         紙を握り締め、四の宮をめざした。

 

 

 

 

これよりあと、残虐場面となりますので ご注意ください。

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