仕事
だが着いてみるといつにもまして、ぴりぴりとした雰囲気のそこへ、表から入ることはできなかった。
そうっと裏へとまわる。
まだ、他の者の食事は届けていない。
建物の横をまわるとき、側の樹が、がさりと音をたて、身が縮む。
『 おい 』
と、かけられた声を思い出す。
あのときの、あの男たちは、まだ、ここにいるはずだ。
昼に見かけなかったが、山崩れのほうに出ているのだろうか?
身構えて見つめた樹の影から、小鳥が飛び立つ。思わず安堵の息をついてしまった。
「おお、わざわざすまんな」
裏からまわり、中庭から奥の間へ声をかければ、衝立のかげからすぐにアキラが顔をだした。
奥をのぞくように首をのばしたシュンカに気付き、コウセン様はな、とシャムショの表になるほうをみた。
「チョクシ様と下界から呼んだ八百屋たちと、今後の野菜の分配を話し合っている」
今回崩れた山のふもとには、下界の街に出回る野菜を作る里が多数あった。
「他にも、コウセン様が話し合わねばならぬ商人がたくさん待っている。―心配するな。昼の飯も、うまいといって召し上がられた。これもしっかりと召し上がってもらうから」
約束してくれたアキラに頭を下げ、他の男たちの飯を運ぶために引き返す。
足の痛みはそれほどなかった。ただ、少し歩きにくく、筋をちがえた足首からくるぶしの方が、少し腫れている。
天宮の陽も暮れて、あたりは暗くなりはじめていた。
戻ればアシが全ての飯を握り終えており、「では、わたしはこれをシャムショへ届けてきます」その間にシュンカもしっかり食べてくださいと、テーブルに置かれた分をしめされた。
足をくじいたシュンカはここにいろということだ。
礼を言って、ひとりそれをほおばりながら、後の仕事を考えた。
リンにも食事をやって、後片付けをして、風呂は、今日は水を張ってはいけないからはいれない。それから祭壇へ夜のおつとめを――。
「・・みず・・」
祭壇にささげてある水を思い出し、シュンカは足の痛みを忘れて走った。




