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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 ななつ

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32/53

いちどきに起こる



    ― ななつ ―


 



 どうにも、納得がいかなかった。




「なんだってんだよ?絶対におかしいだろ?」

「セイテツ殿、落ち着いて。みな、同じ気持ちなんですから」

 ヒョウセツがなだめる声は、珍しく、怒りを含む低いものだった。



 『黒森』は、西の領土にある、人が住まわぬ森だ。

 暮らすのは、たくさんの動物と、そこを統括する『黒鹿』たち。

 大昔からその森に住まう黒鹿は、獣の姿そのままだが、知恵があり人の言葉も解する。気に入った人間には、頭の中に直接語りかけてくるという。


 その森が、今、燃えている。


 


 みかどからの遣いが酒の中にきえたあと、みなで顔を見合わせれば、今度はシャムショからアキラが走ってきた。


「サモン様!山が!また、山が崩れました!」


 厳しい顔で立ったサモンが、ヒョウセツを呼んでくる、と走りだす。コウセンも、こわい顔で、どこだ?と確認する。


「東と南の間の、なだらかな山です」

「あそこには、里が多い」

 ちっと舌を打ったコウセンも立ち上がる。


 だが、アキラの言伝ことづては、まだ終わりではなかった。


「――それと、スザク様、下界の織物問屋から弔いの願いが。セイテツ様、南の産婆から、難産になりそうなので、すぐ祝福に来ていただきたい、と」

 

 坊主と絵師はお互いを見る。


 先に口を開けたのは坊主だった。


「――織物問屋は、だいぶ前から寝付いている年寄りでな。昔、世話になったから、亡くなったら、おれが弔うと伝えてあった」


「まあ・・、難産の予定など、たてられないからな。南のあの婆さんがおれを呼ぶのはいつものことだし。赤子を『祝福』できる神官も、限られているし・・・」



 だが、なんだ?この、いちどきに起こったものは?



 だから、誰も納得いかなかった。



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