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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 むっつ

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31/53

変わった



「ならばスザク殿、ぼくがシュンカの足を診ましょう」


 さあ、渡せ。というように、両腕をひろげたヒョウセツを、坊主はいつもの表情の乏しい顔で見返し、抱えた子の顔を見つめ、おかしな間をとってから、「  ああ  」と返事をした。


 むこうではコウセンとセイテツがわらいをかみころす。



 スザクは自分より低い相手に、抱えた子を渡そうと身を前にかがめたのだが、そこでようやくシュンカが、歩けます平気ですと騒ぎだしたが、そんな言葉はどちらにも相手にされない。


 ヒョウセツにかかえられたシュンカをしばし見つめた坊主は、「 あれ? 」と太い首を傾けた。



「どうかしましたか?スザク殿?」

 ヒョウセツが鼻先をあげるようにきく。



「・・・・いや。べつに・・。だが・・・」ん~?と唸った坊主は、がしがしと頭をかき、太い腕を組んで眉根を寄せると、とたん、 ぱん  と手を打った。


「シュンカ、でかくなったか?」


「え?・・いえ・・あまり・・」


「・・そうか?おかしいな・・」


 首元をかいた坊主は、眉を寄せたままきびすを返し、戻った円卓で他の者たちが、一様に自分を見つめていることに気付く。


「なんだよ?てめえら」


 薄笑いを浮かべた絵師が、ごまかすように向こうへ消える子どもを抱えた背をさした。

「べつに。―― ただ、ヒョウセツが変わったなあと驚いてんだ」


 坊主が、そうかだからか、と首を叩く。

「匂いが変わった」


 坊主である弟の言葉に姉が、ヒョウセツよりもおまえのほうがよほど獣に近いと言い、コウセンが、がさついた笑いをあげながら酒の満たされた器を傾けたとき、びしゃり、と顔に何かがへばりついた。



「・・・ったく・・。化け猫のやつ」

 顔についたのは、手にした酒の中から飛び出した、みかど役神えきがみであるかわずだった。


 それが、コウセンの顔からうまく落ちた卓の上、よいしょ、と後ろ足で立ち上がり、セリを向く。



   『 参の宮大臣 ミカドが お呼びだてじゃ 』


「なんだ?やはりアレに何か凶事がおこったか?」

 女は嬉しげに扇子を口元へ当て、壱の大臣をみた。



 蛙は四の大臣に、酒の器をそこへ置けと命じると、とびこみながら言い置いた。

         



          『 黒森が燃えておる 』



    ぽしゃん、と、こぼれた酒がまわりに散った。








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