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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 いつつ

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28/53

命の恩人


 まだ向こうをむいたままのこの子どもは、伍の宮の、住人になってしまったのだ。

 スザクやセイテツのように、いつかは必ず、顔をあわすことになる。それは、わかっている。が・・。


 息を吸い、覚悟をきめた。


「――はじめまして。ぼくが、弐の宮の大臣。ヒョウセツです」


 むこうをむいたままのこどもの頭が、下げられた。

「はじめまして。伍の宮の、シュンカと申します。ヒョウセツさまのおかげで、父をここで送ることができ、おれは、スザクさまとセイテツさまに命を救っていただけました。ここにこうしておれがあるのは、ヒョウセツさまの、おかげです」



「・・・・・・・」

 考えてもいなかった。

 自分は、この子どもの、命の恩人なのだ。


「・・ぼくは、人間が嫌いです」

 思わず出たそれに、子どもは「・・・はい・・」と淋しげな返事をした。

「ですが、天上人てんじょうびとも、嫌いです。ぼくが、ほかの大臣たちとちがって、ここをあまり出ないのは、誰かに会うのが好きじゃないからで、・・・ ―――いや。こんな言葉を続けていても、しかたがない。振り向いてもらえば、すぐにわかるでしょう。いいですよ、シュンカ」

  ―― ふりむいてくださいという、自分の声が、震えるのを聞いた。

 


 子どもがふりかえる間、少しばかり離れていてよかったと、ヒョウセツは考えた。

 たとえ、慣れているとはいえ、相手の、息をのむ音など、聞きたくない。


 ゆっくりとふりかえった顔は、やはり、知っている人間の面影と重なる。


 不思議な色味のその眼も、おなじだった。



「 っつ、 」

「ヒョウセツさま?どうか、なさいましたか?ご気分でも?」


 数歩寄った子どもに、おのれの足が数歩下がる。

 

 嫌悪も、驚きも、どこにも見当たらない眼が、ヒョウセツをとらえる。

「 わあ・・・―― ヒョウセツさまは、空と、同じ色の眼を、なさってるんですね?」

 のぞきあげるように、こどもの小さな顔が寄り、微笑んだ。


 『気』にあたり、身体の毛が逆立ったヒョウセツは、声も出せず、おのれの左腕にかけられた、小さな手と、心配そうに傾いて見上げてくる顔を見比べた。



「・・・気持ち、悪く、ないのかい?」

「え?あっ、気持ち悪いのですか!?」

 子どもは、ヒョウセツの手を引き、菓子を置いたテーブル横の長椅子へと腰掛けさせると、平気ですか?とあたりをみまわし、水をお持ちしましょう、台所は?とあたふたする。


「いや、そうでは、なくて・・・ ―― きみは、ぼくが気持ち悪くないのか?と質問したんです」


 え?と首を傾いだ子どもに、馬鹿にされているような気になった。

 

 ひょっとしてこの子は、この現実さえも、みようとは、してくれないのか――。

 

      おのれの、この、人と獣の間のような、醜い姿を。

 



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