菓子
ため息がもらされ、離れる気配。
「まったく。セリ殿か?結界にすんなり入り込ませるなどと・・。おまけにサジが渡してしまった」
「すみません・・・おれがヒョウセツさまにお礼をいいたいと言ったので」
「この包みはなんですか?」
「おれの母が、よく作ってくれた菓子で、セリさまが時々食べたいと言ってくださるので、作るんです。よろしければ、食べてみてください」
テーブルにのった包みをひろげたヒョウセツは、固まった。
自分は、粉をねって窯の内側で焼くこの菓子を、・・・知っている。
―― この子は・・・じゃあ、あのサクラの子どもか・・・?
「形がうまくないんですが、味は、大丈夫だと思います。・・・スザクさまも、なにも言わなかったので」
子どもが嬉しそうに、くすりともらし、また、あたりに『気』があふれる。
それに当てられたヒョウセツは、こめかみを押さえ、あわだった肌をさする。
自分の肌を
菓子をつまみあげる。
さっきから役神のサジがじっとそれを見ているのがわかる。
さぞかし、食べたかろうが、これほどの『気』がつまった菓子など、簡単には分け与えられぬ。
「――この菓子は、もらっておきましょう」
「ありがとうございます!」
ざあああっと、子どもからそれがあふれ出た。
―― わざとだ。
セリが、子どもの蓋を緩めたのだろう。
なにを、したいのか?
「・・・シュンカ。ここに来るのに、セリ殿に何か言われましたか?」
「その・・、こうして、いきなりでないと、逃げられる。と・・」
「・・・それだけですか?」
「はい。そうです」
「・・・・・そうか」
『逃げるな』と、いうことか・・・・。




