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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 よっつ

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25/53

素直じゃない


 そもそも、シュンカたち親子の危険をみつけたのは、ヒョウセツだった。そのヒョウセツがスザクとセイテツに命じたので、けっきょくシュンカはここに来たのだ。


 だが、ヒョウセツは子どもが天宮へやってきたことを歓迎しなかった。



 さらにシュンカがきてからみた大臣たちの卦はどれも悪く、『天宮内にて凶事に通ずるさわぎあり』とでた。

「―さては、どこかの将軍が帝を狙うか?」

 コウセンが笑いとばしたのを、むっつりと黙っていたヒョウセツが「あの子どもだ」と断定した。


「おいおい。会ったこともねえくせに、何言ってやがんだ?」

 ヒョウセツに冷たい眼をおくるコウセンは、シュンカのどこに『凶』がある?とサモンとセリをみやる。


「たしかに。『気』のかさがあまりに多いので、宮の中も乱れるのはしかたがないだろう。が、あの子の気は、『凶』には結びつかん」

 サモンの言葉にセリもうなずく。


「なにも、あの子自体が凶だとは、ぼくも言わない。ただ、きっかけになりそうだとは、思っています。―― だいたい、連れて帰ってくるなんて思いもしなかった。ほんとうは下界のことだから、放っておきたかったのですが、・・・後味の悪い思いはしたくなかったですしね」


 だとすれば、とコウセンがめずらしくヒョウセツにいどむような顔をみせた。

「あの子には、関係ねえだろ」


「――どうかは、わかりませんがね。とにかくこのことは、伍の宮にはもらさぬよう願いたい。坊主と神官は、すでにもう、あの子に絡みすぎている・・・」

 




 そうしてその『天宮内』でなにか起こるはずなのを、みなで待っているところなのだ。






「シュンカが『きっかけ』ねえ・・・ま、起こってるっていえば、そうなのかなあ・・」

 のんきなセイテツのひとりごとにあわせるように、むこうから茶を載せた盆を手に、アシが現れた。

「あれ?シュンカは?」

 絵師の問いに、役神えきがみは、リンとサジが・・・とむこうをみやる。


 たしかに、むこうから子犬の鳴き声と甲高い声、それにシュンカの声がまざって響いてくる。

「・・・まったく、サジは・・」

 たち上がった弐の大臣に、にやけた四の大臣が声をかける。

「サジをむかえに行くのか?それともシュンカをむかえにいくのか?」


「・・・両方です」

 軽く肩をすくめたヒョウセツはそのまま歩いていく。



「――あいかわらず、素直じゃねえなあ」


 コウセンのにやけた声は、しっかりと聞こえていただろう。


 


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