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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 よっつ

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23/53

空がみだれる



    ― よっつ ―






「しかしまあ・・何も起こらぬな」


 ふああ、とセリがあくびする口元を扇子で隠す。


「いいじゃないか。起こらない方が良い。はずれたのかもしれないし」


 サモンのそれに、そりゃねえだろ、とコウセンが口を曲げる。


「―みな揃って、嫌な卦相があらわれたんだ」ハズレはねえだろ、といやそうに首をかくのに、セイテツが「そりゃ、初耳だ」と、同じ卓を囲む面子を見回した。


「ヒョウセツが、もらすな、と脅したからな」

「セリ殿、『脅す』などとは、覚えがないな」

 ぱしん、と勢いよく、ヒョウセツが札を叩き置いた。



天宮てんぐうでは、それぞれの宮の大臣が月に一度集まり、三月みつき後のをみるのだが、それがはずれたことなど、いままでにない。

 


「この前の『下界に凶事あり』は、当たってしまったしな」

 コウセンがもち札をにらみながら髭をかく。




 四月よつき前、下界では天候がひどく乱れた。


 長雨の時期ではないはずなのに、しとしとと降り続く寒い日が続き、場所によっては山肌がくずれる事態にもなったが、運よく山崩れに巻き込まれる里はなく、人間が天宮に助けを求めることはなかった。だが、その後も天候は回復をしめさず、全ての作物の育ちが悪くなり、人々の生活は苦しくなった。


 それでも、天宮が手助けできることはどこにもない。


 次の月に移ると、晴れ間が続く日が訪れ、人々の暮らしもようやく落ち着きだしたころに、――またしても、空が乱れ始めた。

 先の月のようにおとなしく降る雨ではなく、叩きつけるような雨が襲い、山間を流れる川が濁流となり、所々せき止められた水が鉄砲水となって、いくつもの里をのみ込んだ。



 ここにきて、東西南北の将軍たちが、ようやく揃って助けを求めてきたので、やっと、天宮は動くことができた。




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