もらえるもんは もらっとけ
「―それでね、リンが鞠を追いかけてゆくときに、そこで転んでしまって」
「・・・シュンカ。わたしに気を遣うことはない。無理に、楽しい話をしなくともいいのだよしゃべらなくとも良いから」
「・・ん、わかった・・」
箸を持ち直し、シュンカはもそもそと夕飯を食べ始めた。
この頃、夕餉のときはずっとこうだ。アシを気遣いしゃべり続けるか、黙って静かに飯を食すか。
理由がわかっているだけに、アシは何も言えない。
シュンカにひどいことを言った人間どもになにかをできるわけでもなく、ただ、言われたのは自分の責任だと思い込んでいるシュンカを、見守るしかできない。
こういう感情をなんというのかと、このごろ元気のないシュンカを目にし、悔しいような悲しいようなものを感じながら息が苦しくなる。
「おい」
いきなり、台所の入り口に、大きな影が現れた。
土間の端に置かれたテーブルに座っていたシュンカは慌てて立ち上がる。
「す、スザクさま?何か?」
「お食事が足りませんでしたか?」
坊主が、こんなところへ来るのは初めてだとアシも考えたとき、立ち上がったシュンカの前にスザクが立ちはだかった。
「―おい、シュンカ」
「は、はい」
「だれに、なにを言われたのかは、よく知らねえが、おれも、おまえに言いたいことがあんだ。テツみてえなことは言わねえが、とにかくこれだけ言っておく」
「はい」
「もらえるもんは、もらっておけ」
「・・・・はい?」
坊主が太い腕を、えらそうに組む。




