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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 みっつ と 半

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18/53

落ちつかねえ



 聞き終えたセイテツが、それはそれは、大きな息を吐いた。

「―どうもな、そういう奴らに、シュンカはいろいろと言われたようだ。コウセンや、おまえがらみのことでひどく言われ、自分を責めている・・。ああ~!!もう!シャムショに使いになんて出さなきゃよかった・・」


「出さなくとも、いつか言われたろ。だいいち、おれだって使いに出してる」


「そうかもしれないが・・・どうも、アシの話によれば、色街で坊主相手のチゴをしろとも言われたようだ・・・」

 ぐしゃぐしゃと、藁のような色の髪をかきまわす。


「ああ。あの容姿じゃ仕方ねえ」


「・・・おまえ、・・くやしくないのか?」


「あん?おれが?」


 絵師はしばらく坊主を眺め、ああそうか、と頭をかくのをやめた。

「―なんだ。まだ、おまえには謝らなくてよかったな」


「なんでえ、そりゃ」


 なんでもない、邪魔して悪かったなと膝をはたいてセイテツは立ち上がる。



「とにかく、そういうことがあったようだから、あんなになったというわけ」


「ふん。まあ、理由はわかったが、あれじゃあ、こっちが落ちつかねえ」


「・・・うん。まあねえ・・」

 おれも同じだよ、と絵師は己の髪を引っ張った。

 シュンカの、柔らかく肩まであった髪は、本人によって、ひどく短く切られてしまった。

 見かねたサモンが宮へ連れ帰り、きれいに整えてくれたが、切った理由は聞き出せなかった。


 態度も変わった。

 こちらがシュンカを見つけて抱えようとすると、するりとよけて、おとなしく挨拶されてしまう。まだ、抱きしめるのを許されるのは、セリぐらいだ。

 

 行儀のよくなったリンと、中庭で転げまわっていた姿も、みかけなくなった。

 草木が、前ほど、勢いよく成長しなくなった。

 笑い声が響かない。

 何かを悟った大人のように、静かに、口元だけで笑う。



「―― シュンカじゃ、ねえみてえだ」

「・・・・・それ、おまえ、言ってやった?」

「あん?」

「おれは、すぐに言ったよ。そうしたらあの子、なんて言ったと思う?」


  

  『一日でも早く、天宮に、伍の宮に、居ても良い人間になりたいのです』


「・・おれは、シュンカがいてくれて、嬉しいよって言ったんだけどね。ありがとうございます、なんて礼を言われてしまったよ。・・なあ、おまえが言ってやれば、あの子も少し、気を緩められるんじゃないのか?」


「性に合わねえ。だいいち、あいつが自分で考えての結果がこうなんだろう?それなら、しかたねえだろうが」


「・・でもなあ・・。コウセンも淋しがってるよ。急に大人びてしまって、菓子も渡せないって・・」


「・・・・・」


 なにか、いつものごとく、情から離れたことを言うかと思った坊主は、そのまま珍しく黙り込み、のそりと身を起こした。



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