新参者
あれは、シュンカの里の人間を弔いに行ったときのことだ。
まだシュンカは従者として付いていなかったので、スザクはいつものようにおのれで身支度を整え用意したところで、《清めの枝》を盆にのせた男が足元によった。
捧げるように頭を垂れたシャムショの若い男へ教えてやった。
「――おい。ちがうだろ」
弔いの儀式は、祭壇へ、清水を持った者が先に道を清めながらすすみ、枝を持った者が後をゆく。
位の高い者が枝を持つのだ。
自分が伍の宮の坊主だとわからぬ新参者かと思ったのに、その男は「いえ。スザク様に」とこちらの名をだした。
「 ―― おれは伍の宮の坊主だ。コウセン殿は四の宮の大臣だぞ」
すると、若い男が顔をあげ、熱のこもった目をむけた。
「 ですから、それがおかしいのです 」
「――――――」
見合って何もこたえぬ相手に、諭すように続ける。
「 スザク様のお噂は、下界の街のすみずみまで響いております。わたくしは、あなた様に憧れて高山からここへやってまいりました。 なのに、希望した職にもつけず、新参者であるというだけで、意味のない仕事ばかりをやらされております。それはまだ、我慢もいたしましょう。ですが、―― 同じシャムショ内で仕事もせず、ぶらぶらとうろつく男を見るにつけ、いつも思うのでございます。 なぜ?あのような《たいした人物》でもない者が、四の宮の大臣などであるのか? シャムショなど、チョクシ様が責任者のようなものでございます。 ―― 宮は、壱から順に位が高いと聞いておりまするが、なぜ、あなた様より上に《あの男》がおるのか、 わたしには、とうてい理解できませぬ。これには同意の者たちが―― 」
熱に浮かされたようにしゃべりつづけた男は、坊主の顔に気付いてようやく黙る。
スザクはそのまま向きを変え、ほかの者へ「清水をもてい!」と怒鳴った。
あの男とは、それきりだ。




