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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 みっつ と 半

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15/53

すまん

  ― みっつ と 半 ―





 「――というわけで、ほんとうに、すまん」


 絵師は膝に手をそろえ、頭を下げる。


 見下ろす男はしばし、その頭のてっぺんを見て黙考。

「・・・・・どれのことだ?」


 坊主に聞き返された絵師は、一瞬返答につまる。

「・・え~と・・そんなに、あったっけ?」


「色街でのツケをおれにまわそうとしたことか、それとも、」と続きそうになるのをセイテツの片手が止める。

「・・・まあ、そういうモロモロのこと以外です・・。今回は、シュンカのこと」


 そこでようやく、坊主の顔が変わる。

「原因は、おめえか?」


「いや。ちょっと待て」

 珍しくスザクの部屋を訪れて、冷えた床にかしこまっていた絵師は、またしても片手をあげた。


 なにしろ、先ほどまでベッドの上、胡坐をかいて壁にだらしなくもたれ書物を繰っていた坊主が、やおら身体をおこしたもので、慌てたのだ。


「おれ、というよりも、おれが、シュンカをシャムショへやったことに、原因が、ある、と、いうか・・」


「やっぱ、おめえじゃねえかよ」

 呆れたように書物を放った坊に、セイテツはうなだれる。


「うん。どうも、アシからきいたところによると、シャムショの若い者たちに、ひどいことを言われたようでね」



 シュンカが戻ったときから、おかしいと感じていた役神えきがみは、シュンカが口をひらくのを待っていた。

  

  ようやく、目をあわせたシュンカが聞いてきたのは、色街のことだった。


「アシは、下界のことも、知ってる?」

「ええ、少しは」

「色街ってさ、セイテツさまがよく行かれるところだよねえ?」

「・・・ですねえ・・」

「そこで、おれって、働けるの?」

「・・・・は?」

「そこって、お坊様の従者を選ぶ?」

「・・シュンカ・・。だれに、なにを、言われた?」

「な、・・なにも・・あのさ、おれ、場違いだって、思われないように、がんばるよ」

「もう、じゅうぶん、がんばってる」

「だって、おれのせいで、コウセンさまも、馬鹿にされてるんだ・・・。どうしよう、アシ。スザクさまも、セイテツさまも、おれのせいで・・・」

 それで、だいたいの察しはついた。

 


 



「―― ほら、シャムショに、数年前から、将軍たちが人を送り込むようになっただろう?」


「化け猫の気まぐれでな」

 スザクがいうように、本当にただの気まぐれである。

 



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