とりいった
周りの空気が元に戻ったのを感じたシュンカは、お忙しいところ失礼いたしました、と慌てて礼をする。
いや、おれは忙しくねえからよ、と緩く手を振るコウセンも、実は後ろのほうで様子をうかがっていたアキラにすぐ、袖を引かれて戻っていった。
自分も、セイテツに頼まれて出てきたが、今日はスザクに部屋の片づけを頼まれているのを思い出し、宮へむかう足をはやめたとき、その声に呼び止められたのだ。
―――――――― ※※ ――――――――
おい、と建物の脇から呼び止めたのは、見覚えのない若い男だった。
勢いよく茂る葉をきれいに整えられた樹木から現れた相手と目が合い、シュンカは首の後ろが逆立つような寒気に襲われる。
シャムショにいる、アキラよりも若い男たちは、シャムショの中ではなく、下界や、シャムショ奥の間で働くことが多く、シュンカには、それが誰だかわからない。
だが、相手はこちらを知るようで、「―おまえ、スザク様に、どうやって取り入った?」と怒りを含む声を出した。
「『とりいる』?って・・?」
「下界の人間のくせに、天宮で大臣方に、父親を弔わせたそうだな」
「そ、それは、ご好意で」
「そうだ。たまたまスザク様に死にかけの父親と拾われたくせに、それに紛れて宮に居座れるように、何かしたのだろう?」
「ま、紛れたわけではなく、・・・ですが、・・帝に・・」
「帝にだって!?」
そのとき、男の後ろの茂みから、さらに数人の驚く若い顔が突き出された。
「・・・スザク様の許しではなく、帝の許しを請うたのか?」
「――――」実際には、そういうことになるとシュンカは思っているので、うなずいた。




