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おとぎばなし ― ゆらぐ噺 ―  作者: ぽすしち
 みっつ

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12/53

まあいいか


 子どもの声に仕事の手を止め、挨拶のように、おう、とか、よお、とかの声を出す男たちに頭を下げ、シュンカは招いてくれた男へ、いそいで抱えたものを渡しにゆく。


「今日は表からだから、菓子はやれんな」

 すっかり馴染みになっている男が、自分の仕事をはしへ寄せ、それを受け取って言うのへシュンカは慌てて首を振った。


「そういやリンが、来ないな。綱でとめたのか?」

「いえ。阿吽が、預かってくれて、行儀を覚えました」


 そりゃよかった、とわらう男は、やわい包み紙でくるまれる紙束をテーブルの端に広げる。

 もってきた紙束が何なのか知らないシュンカは、そこから男が一枚取り出すのを目で追った。



「ほお。あいかわらず、うまい。見てみろ、みんな。セイテツ様の新作だ」

 男は手にした紙を、他の男たちへむける。

 動きを止めた男たちが、喜びの声をあげた。


 紙には、下界の色街の女が、艶っぽい目つきで着物をはだける様子があった。


「・・・あれ?シュンカ。もしかして、見たことなかったのか?」

 真っ赤になって、慌てて顔をそらせた子に、男が聞く。

 何度もうなずく様子がおかしく、男たちがどっと笑った。


「そうか。セイテツ様は下界の色街で、女たちを描くのだ。それを、欲しいという金持ちやスケベな野郎どもに、売るのさ。これなど、まだおとなしいほうだぞ。希望とあれば男とまぐわ――」

 楽しそうに講釈していた男が突然言葉をとぎらせ、「―じゃ、しっかり、下界に持っていくからな」と、素早くその絵をしまった。


「しっかり下界で売ってこい」

「あ、コウセンさま」


 にこにことした顔で奥から現れた男は、「おまえら、おれの分もしっかり働けよ」と働く男たちを見回し、いつものようにそこを通り過ぎる。

 シャムショの男たちはそれに笑って肩をすくめ、それぞれの仕事へもどる。


 満足気にうなずいた男は、シュンカへ身をかがめた。


「―― リンを、阿吽が預かったんだって?」


「はい。びっくりするほど行儀よくなって戻りました」


「ふ~ん。まあ、そりゃなによりなんだが・・しかし、あいつらが、そんな役買ってでるとはなあ・・」

 怪訝な面持ちを、奥に座るチョクシのほうへむけるが、まったく相手にされない。


 信用する男たちは、どうにも自分に隠し事があるようなのだが、戻った子犬の様子を嬉しそうに話す子に、まあいいかと、コウセンは詮索する気にもならない。



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