吉となるか 凶となるか
「コウセンは、語らぬ男よ」
「『力』も、みせたくないのだろう」
阿吽のいうように、今回の『ハンゴン』も、「帰って、他の皆に言うなよ」と、軽く口止めもされている。
チョクシでさえ、コウセンの力を目の当たりにするのは、数度しかない。
「この天宮には、シュンカの遊び相手となるような子どもがいないのを、気にされているのでしょう。だから、連れ帰りたいとおっしゃった」生き返らせたのは、言えないけれど、と。
「――吉となるか、凶となるか、わからんな」
「ああ。ヒョウセツが、われらに役神をよこした」
顔をしかめる阿吽に、チョクシとアキラは顔を合わせる。
弐の宮の大臣は、よほどのことがなければ、動かないと聞いていた。
「犬を、われらに確かめろ、と」
「リンを?まさか、なにか、おかしな病でも?」
「いや。それならコウセンが先に気付くだろう。それに、―」
今はすっかり阿吽に気を許している子犬の身体を、かかげて見る。
「―― セリの首輪が《守り》になっているからな。よほどのことがないかぎりは」
「《術》で利用されることもなかろう。だが、用心せねば」
「この犬に何かが起これば、悲しむのは」
「シュンカだ」
ヒョウセツがわれらを寄越したことは、コウセンには言うなと子犬を抱えた阿吽は立ち上がり、不安な顔色の二人を残して去って行った。




