表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
スキー旅行編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/162

85.アンジェリカ

 オレはソフィアの声が聞こえてきた方向に向かって茂みに入っていく。


 少し入ったところで草むらが見えてきた。


 そこにいるのは、どうやら彼女だけではないようだ。


「ねぇねぇカノジョ〜、おれたちとさぁ、イイコトして遊ぼうよぉ〜」


「ゴキゲンな馬車クルマ回すからさ〜、一緒に街に行こうぜ。楽しい場所に連れてってやるよぉ〜!?」


 なんなんだ。

 この一昔、いや二昔くらい前の口説き文句は。


 なんか聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた。


「ですから、何度もお断わりしているじゃないですか!」


 ソフィアが再び声を張り上げて拒否する姿勢を明らかにしている。


 どうやら、ソフィアを取り囲む7、8人の男のグループにナンパをされているらしい。


 うーん、どうしよう。


 彼女はクラスメイトで部活仲間とはいえ、他人の色恋沙汰に割り込んでいくべきか。


 でも『2、3回粘って脈が無ければ諦めて別に行く』のがナンパの鉄則だったよな、確か。


 しつこいようなら、やはり声を掛けるべきだよな。


 あれ?

 もう一人女子がいるぞ。


「こっちのカワイイ顔したカノジョもさ、一緒に行こうよ? おれたちがタップリと楽しませてあげるよ〜?」


「ヤダ、やめて! 手を離して!」


 さっきソフィアと一緒にいた女子じゃないか。


 男の一人に手首を掴まれて無理に引っ張られようとしている。


 これはもう、すぐに助けに行かないと。

 暴力はいけませんぜ!


「よぉ〜、こんなとこで何やってんのさ?」


「え? あの、この人たちに付き纏われて」


 いつもはあまり動じることのないソフィアがシドロモドロの口調になってしまってる。

 よほど嫌な思いをさせられたらしい。



「カノジョ〜、付き纏うなんて人聞きの悪いこと言わないでよぉ〜。 で、お前ナニモン? まさかカレシとか?」


「彼氏じゃねーよ。そいつのクラスメイトで部活仲間だ」


「あ!? それじゃあカンケーねーだろうが。おとなしく引っ込んでろよ!」


「そうはいかねーよ。お前らナンパの鉄則から外れてんじゃん、しつこく誘うのはやめろよな」


「なにワケワカメなこと言ってんだオラァ!」


 男の一人がいきなり殴り掛かってきたが、動きにムダが多すぎて、オレは軽く避けた。


 男は勢い余って勝手に転んじまった。


「テメェー、よくもやりやがったなぁー!?」


 オレは何もしてねーだろ。


 だけど、こっちの話を聞こうともせずに男たちが次々と殴りかかってきた。


「くそっ、何で当たんねーんだ……ぐはっ!」


 オレは攻撃を避けつつ、一人ずつ相手の背中を強く押して転がし続けた。


 だってさ、オレがこれまで戦ってきた奴らに比べたら、動きはトロいし隙だらけで、まともに相手する気になれねーんだよ。


「チキショー、覚えてろ! このままで済むと思うなよ!」


 よくある捨て台詞を吐いて男たちは逃げていった。


 おっと、それよりも、ソフィアともう一人の女子はどうなってるのか。


 ソフィアは……ちょっと泣きそうな、でも安心したような、それらが入り混じったような表情をしている。


「あの……タツロウ君、ありがとう……」


 ソフィアは礼を言いつつ、うつむき加減でゆっくりとオレに近づいてくる。


 こういう時って、どう振る舞えばいいんだろうか。


 握手する……ってなんか変だよな。


 頭をナデナデする……って彼氏でもないのにそんなことして、セクハラで訴えられたらたまらない。


 くそっ、いったいどうすれば……。



「あのっ! さっきは危ないところを助けてくださって、本っ当にありがとうございましたっ!」


 うわっ、ビックリした!


 もう一人の女子が、いきなりオレの片腕を引き寄せて抱きついてきたのだ。


 近くでよく見ると、この女子メチャクチャ可愛い。

 ソフィアも美少女だと思うが、それに負けず劣らずと言ってもいいだろう。


 お目々パッチリで真っ直ぐな眼差し、高過ぎず低過ぎずで小さめの鼻、可愛らしくて魅惑的な唇。


 肩まである髪はピンクっぽい赤髪で、前髪を留めてるクリップが印象的だ。



「タツロウ君……女子の顔を、そんなにジロジロと見ないでください……」


 今度はソフィアからお小言だ。

 そんなに見てたかな……。


 またしつこく言われるのも嫌だからすぐに目を逸らそう。


「いえ、わたしは見てもらっても全然構わないですっ!」


 赤髪女子はそう言うけど、ソフィアからの視線が痛くなってきたので、腕を離してもらって少し間合いをとった。


 あっ、そういえばこの人誰なんだ?


「わたしの名前はアンジェリカです。 ソフィアとは部活仲間なんですよ!」


 部活仲間……こんな女子、錬金術研究会にいたかな?


 あっ、演劇部の方か。

 だからハキハキした口調で喋るんだな。


 ちなみにソフィアは2つの部を掛け持ちしているのだ。


 こんなところで話し続けても寒いし、また変なのが絡んできても困るので、オレたちは宿泊所へと向かった。


 歩いて行く途中、アンジェリカがオレの方に何度も接近しながら話したがるし、ソフィアはまた機嫌が悪くなるしで、もう疲れた。


 宿泊所に戻って夕食と入浴が終わり、ようやくゆっくりできると思っていたのだけど。


 アーベル先生とゲルツ先生から急な呼び出しを受けた。


 なんだろう。

 もしかしてヤニクたちとナンパしてた件で怒られるのだろうか。



「タツロウ君、まずは私の方からお礼を言っておきますね」


「え、なんの話ですか、アーベル先生?」


「ソフィア君たちを暴漢たちから守ってくれたことです」


「あ〜、まあ、たまたま通りがかったんで」


「今回のことは緊急性もあったので、君が取った対応で良かったのですが……次からは気をつけてほしいのです」


「えーと、地元の人や他校の生徒とケンカするなってことですよね? 気をつけますけど、向こうから降りかかる火の粉はどうしようもないですよ」


 ここで話し手がゲルツ先生に代わった。

 というか、2人は何故か交代しながら話すんだけどね。


「ん〜と、そういうのとはまた違う話なのだ」


「……すみません、ちょっとオレにはわからないです、ゲルツ先生」


「まずは話の前提として、この辺りの領地を支配している諸侯は覚えているか?」


「すみません、誰でしたっけ」


「オルストレリア大公であるハプニンブルグ家の当主だ」


「で、その大公がどうかしたのですか?」


「……大公自身がどうというわけではない。問題なのは、その子息だ」


 理解できずに首を傾げるオレを見て、今度はアーベル先生が説明し始める。


「え〜とですね。子息というか、嫡男のことなんですけどね」


「はあ」


「まあ、いわゆるその、俗な言い方をすれば、ドラ息子というやつなんですよ」


「わぁ……そうなんですか」


「で、そのドラ息子は、世間の評判も良くなくてね。本人や、その子分とか手下のグループがいろいろ問題を起こしているらしくて」


「なんかやな感じですね」


 先生たちはどちらもウンザリした顔で、こういうのは勘弁してくれとばかりに苦々しく話を続けた。


「この辺りに旅行に来た学校の生徒たちと、トラブルになることもしょっちゅうと聞きます」


「ただ、相手が大公の嫡男ということで、揉めた挙げ句にウヤムヤにされたり、下手をすると泣き寝入りになってしまうという噂なのだ」


「噂って、なんで実際のことがわからないんですか?」


「どこの学校もそんな話を公表したがらないしな」


「なるほど。で、結局オレはどうすればいいんですか?」


「今回のようなトラブルを見かけたりしたら、自分でどうにかしようとせずに、すぐに我々に知らせてほしいのです。あとのことはこちらで処理しますので」


「……そうですか」



 あんなこと言われても、目の前で仲間が危害を加えられてるのに助けに行かないってのも、なんか納得いかないな。


 もちろんケンカが苦手なやつは無理しなくてもいいけどさ。


 モヤモヤした気持ちのまま部屋に戻ると、もうみんなベッドで休んでいた。


 一緒にナンパした奴らは、まあ精神的ショックで今日は立ち直れないのであろう。


 それ以外のメンバーも気を使ってくれてるようだ。


 オレも今日はもう休むよ、おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ