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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
スキー旅行編

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84.ナンパしよーぜ

 オレはマルコとヤニク、それと宿泊所のルームメイトたちと外に出た。


 どこに行こうか……といっても寒いし、自由時間内に行けるところは限られている。


 宿泊所があちこち並んでいる現在地から少し下ったところにある商店街を目指して歩いていく。


「なあ、マルコは何か買いたい物はあるのか?」


「そうだな……お洒落なネックレスとか。地元の天然石とか加工したやつがあったら欲しいね。タツロウは?」


「オレはだな……」


「タツロウっち、買い物もいいけどさあ。せっかく人通りの多いところに行くんだし、アレやろうぜ」


「アレ? なんだよヤニク、意味わかんねんだけど」


「ナンパだよ、ナ・ン・パ!」


「マジかよ!? でもオレみたいな硬派な男には似合わないんじゃないか」


「冗談はそのくらいにしてさ。旅先でやらないでいつやるってんだよ?」


 冗談ってなんだよ、腹立つなあ!


 ……それはともかく、実のところ前世も合わせてナンパなんてやったことないのだ。

 それを見透かしたかのように、ヤニクはオレをそそのかすべく話を続けた。



「大丈夫、心配すんなって。なんとこのメンバーの中に、ナンパの達人がいるのさ!」


「どーもー、只今ご紹介に預かりましたアドリアンでーす。もっこりこり!」


「ぎゃははは!」


 しまった、不意打ちの下品なギャグに大笑いしてしまった。


 まあ、みんな笑ってるからいいか。


 アドリアンは今回のルームメイトでヤニクのクラスメイトだ。


 部屋の中でもギャクを連発して笑わせてくれているが、コイツがナンパの達人?


 どう見てもお笑い芸人という感じで、イケメンでもなくナンパ師には見えないんだがな。



「ん!? タツロウ君、ワイのことを疑っとるな? せやけどな、ワイの言う通りにしたらモテモテのウハウハになれまっせ!」


 コイツはちょっと訛りがあって、日本で言えば古い感じの関西弁のような喋り方なのだ。



「いやだって、実際の効果のほどを見てねーし」


「まあ、こういうのは実践あるのみ! 現地に着いたらいろいろとアドバイスしたるさかい、楽しみにしとってや!」


「わかったよ……待てよ、ヤニクは彼女持ちだろうが! こんなことしていいのか?」


「それはそれ、これはこれ。カタいこというなよタツロウっち。本気で付き合うってわけじゃなく、ちょっと地元とか他校の女子と仲良くなりたいってだけじゃん?」


 まあそれならいいのか……な?

 どうなっても、オレには関係ないからいいか。



「マルコはどうするよ?」


「そうだな、俺もいこうかな。なんか面白そう」


 普段はこういうことにノリが悪いマルコが珍しく積極的だ。


 やはりどんな奴でも旅先だとハイテンションになってしまうのだろう。



 そしてオレたちは商店街に着いた。


 寒いにもかかわらず、多くの人出でにぎわっている。

 まあ、その大半がオレたちみたいな学生なんだけど。


 ここら辺のスキー場は、ウチだけじゃなくて帝国各地の学校が旅行先にしているので、シーズン中はそれで商店街も繁盛してるってわけだ。


 オレたちは一旦人通りを避けて立ち止まり、アドリアンの話を聞くことにした。



「それじゃあ、まずは誰かに試しにやってもらおか」


「ええっ、アドバイスしてくれるんじゃなかったのかよ」


「あれこれ理屈だけ先に言うより、実際に試してから解説とアドバイスした方がわかりやすいやろ」


「なるほどそうだね。じゃあ、俺がやってみるよ」


 おお、マルコが一番手か。


 でもイケメンのマルコがやればアッサリ成功して参考にならないんじゃねーの?



「やあ、お嬢さん方。俺と、お茶しなーい?」


「……いえ、結構です」


 なんと、マルコがいくら声をかけても一向に上手くいかない。

 これはオレにとっては予想外過ぎる、なぜなんだ?



「理由は簡単、会話の掴みがなってへんのや」


「掴み?」


「大体の女子は多かれ少なかれ警戒心を持って歩いとる。特にこんな人通りの多いところではな。せやのに、あんな誘い方したら下心もろバレやんけ」


「イケメンでも通じないのか?」


「そんなん関係ない。警戒しとる相手からしたら余計に気味が悪い、何を企んでるんやってな」


「じゃあ、どうすればいいってんだよ?」


「まずは相手を立ち止まらせて、こっちの会話に引き込むんや。そのための掴みが重要、まあ見とけや」


 アドリアンはそう言うと、通りを歩いている女子に声をかけに行った。



「すんまへーん! ちょっといいですかー?」


 奴は笑顔で明るく大きな声を出してゆっくりと歩いていく。

 そして、思わず立ち止まったという感じの女子に、そのまま明るく声をかけ続ける。



「このあたりで、美味しいパスタ食べさせてくれる店、教えてもらえませんか?」


「パスタ、ですか? わたし、スキー旅行でここに来ただけだから、ちょっとわからないですけど」


「そうですか、残念。僕、旅行先で一番おいしいやつを食べるのが趣味なんですわ」


「へぇー。これまで、どんなパスタを食べてきたの?」


 おおっ、女子が早速会話に食いついてきた。

 すげー、さすが達人。


 そしてアドリアンは女子と短いながらも楽しく会話して、あとで落ち合う約束までして戻ってきた。



「まあ、ざっとこんなもんや」


「実演あざっす! ぜひ師匠と呼ばせてください!」


「さっきのは一つの例やさかい、掴みで出す話題は自分の得意なこと考えてからにしてや。あと、粘るのは2、3回が限度。それで脈がなければ諦めて次行くこと」


「了解っす!」


「それと、マルコ君は別のやり方がええかもしれん。せっかくイケメンなんやから、もっとキザな声掛けした方が上手くいくかも」


「ありがとう、やってみるよ」



 そしてオレたちは師匠のアドバイスを元に声をかけ始めた。


 さすがに最初からうまくはいかないが、何回かやってると手ごたえをつかみ、会話に持ち込むことが出来始めたのだ。


 ……オレ以外の奴らは。


 オレも笑顔で声をかけているはずなのに、なぜか一目でみんな逃げていくのだ。


 これじゃあ、会話に持ち込む以前の問題じゃあないか。


 くそっ、でもめげずに続けるぞ。



 ドン!


「痛っ!」


 おっと、後ろから歩いてきた女性とぶつかってしまった。


 そうだ、これをきっかけに会話に持ち込めば。


「すみませーん、ケガはないです……か」


「あー、ウチは別に大丈夫だけど……それよりさあ、これは一体、何やってるわけ?」


 ゲゲッ、見覚えのあるギャルファッションの女子!


 ヤニクの彼女ギーゼラじゃないか!


 そして後ろにも3人、ギャル軍団が鬼の形相でこちらを睨みつけている。


「ヤニク、コレどーゆーこと!? ウチというものがありながら!」


「い、いや、これはちょっとした遊びで……なあタツロウっち」


 うわ、この状況でオレに話を振るんじゃねえ!


「タツロウ、アンタさあ、ヤニクと友だちなんだよねえ? なんで止めてくんないワケ!?」


 ひええ、やっぱりトバッチリがきた!


「ウチの話はまだ終わりじゃねーから。向こうでじっくり話を聞かせてもらうよ、ヤニク!」


 ヤニクは半泣きでギーゼラに連行されていった。

 オレにはどうすることもできない、許せヤニク。


 そしてあと3人のギャルも他のルームメイトたちを引っ張っていく。

 なんだよ、あいつらも彼女持ちだったのか。


「堪忍や〜、つい出来心でやってしもたんや〜!」


 アドリアンも連れて行かれた……。


 オレとマルコは呆然と見送るしかできなかった。


「買い物にでも行こうか」


「そうだな」


 オレたちはお互いに頷きながら商店街を進んで行くが、また後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。



「ちょっとマルコ! ギーゼラから聞いたよ、アンタたちが女の子に声かけまくってるって」


 今度はサンドラが眼の前で仁王立ちしている。


 後ろにはソフィアと、あと一人知らない女子がいる。


 マルコはサンドラに苦しい言い訳をし始めた。


「いや、それはさ、男同士の付き合いってやつだよ。ただそれだけなんだ」


「言い訳無用! ちょっとこっち来なさい!」


「……うん」


「タツロウもなんで一緒になってやってんのよ!? 友だちだったらマルコを止めるべきなんじゃないの!?」


 だから、なんでオレに引き止める役目を期待するんだよ、トバッチリもいいところだ。


 マルコはサンドラに連れて行かれてしまった。


 そして、ソフィアは何故か汚物を見るような目でオレをジーッと見続けている。


「なんだよ、オレはフリーなんだから、ナンパしたって別に構わないだろ!」


「……そうですね、もちろん貴方の自由です。私には関係ないことですから。もう行きます」


 ソフィアはクルッと後ろを向くとスタスタと歩いて行ってしまった。


 知らない女子の方は、少しこちらの方を気にしながらも、結局はソフィアについて行った。


 あーもう、散々な目にあったぜ。


 オレは商店街を一通り見て回った。


 でも一人だと面白くないんで、結局何も買わなかった。


 もうそろそろ宿泊所に戻ろうかな。


 商店街の入口まで戻って帰り道につこうとしたオレだが、道の横にある茂みから声が聞こえてきた。


「貴方たち、いい加減にしなさい!」


 女子の声……ソフィアか。

 どうしたんだろうか、彼女が声を張り上げることなんてあまりないのに。


 気になるな……一応様子を見に行くか。

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