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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
スキー旅行編

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83.初心者講習

 今はスキー旅行2日目の午前中。

 早速スキー実習が始まっているのだ。


 見よ!

 オレ様がカッコ良くゲレンデを滑走するところを!


 と言いたいところだが、オレは斜面に対して横を向き、板のエッジを立てながら一歩ずつ横歩きをしている。


 そう、初心者がまずやらされるカニ歩きで斜面を登っているのだ。


 なぜならオレは前世も含めて一度もスキーなんてやったことないからだ。


 カニ歩きは面倒だしはっきり言ってダルいが、まだこれ以外では登れないからしょうがない。

 地元のインストラクターの人に従って黙々と登っていく。


 ちなみに今日の初心者講習は下級貴族だけだ。

 爵位持ち連中はオレたちより1日前に到着している。


 同じ初心者でも、下級貴族にカッコ悪いところを見せたくないって配慮でもされてんじゃないの、多分。



「あれ? タツロウはスキーを滑ったことなかったんだ」


「意外ねー。まあ最終日までにはあたしたちと一緒に滑れるように頑張りなさいよね!」


 マルコとサンドラが颯爽と滑り降りてきた。

 コイツらなんか知らんがメッチャ上手い。


「言われなくてもすぐ追いついてやるよ。それより2人ともなんでそんなに上手いんだ?」


「俺たちの故郷はここから割と近くてさ、西の王国との国境付近にあるんだよ」


「だからあたしたちは、小さいときから山とスキーには馴染みがあるってわけ」


「そうだっけ、スマンが忘れてた。いいなー、オレもそっちに生まれたかったぜ」


「でもその代わり、山がちな地形で移動が面倒だし不便なことも多いよ」


「そうそう、冬なんてそれこそスキーくらいしか楽しみがないんだから。マルコ、そろそろ上に行こうよ」


 2人はまた上から滑るべくリフトの方に行ってしまった。


 中世ヨーロッパ風の世界なのになんでリフトがあるんだよって?


 まだ言ってなかったが、この世界にも魔石はあるのだ。


 それらに秘められた魔力を動力源に変換する技術は既にあって、それでリフトを動かしているのだ。


 だけど滅茶苦茶高価だから、こういう観光地のかきいれ時とか大規模な生産設備とかで使われることが多いけどね。



 バサアッ!


 なんだ、いきなり雪の塊が前から振りかかってきた。

 頭からモロに被ってしまい、前がまともに見えない。


 吹雪、いや雪崩でも発生したか!?

 たまらず斜面に倒れ込むオレに向かって、聞き覚えのあるイヤミったらしい声が聞こえてきた。


「やあ、そこにいるのはタツロウじゃないか。キミにはそうやって、頭から雪を被って斜面に這いつくばる姿がお似合いさ、ハッハッハ!」


「マクシミリアン! テメエの仕業か!」


「ボクは斜面を滑り降りてきただけさ。丁度ブレーキをかけて止まろうとしたところにキミがいたけど、あれくらいは避けられると思ってたのに。まさか、ノロノロとカニ歩きしかできないとはね!」


 コノヤロー、つまりワザと雪をオレの方に跳ね飛ばしやがったな!


「フザケンじゃねえぞ! テメー、今すぐオレと勝負しろ!」


「スキー初心者のキミじゃあ、まるで相手にならないな。せめてここの上級者コースを自在に滑り降りられるようになってから出直したまえ、ハッハッハ!」


「くそっ……ちょっと待てよ、なんでお前がここにいるんだよ。ひょっとしてお前、3年に進級できなくて留年したんじゃないのか?」


「相変わらず失敬なやつだな! ボクは学校側の依頼でここにいるんだ。地元のインストラクターだけじゃ手が足りないからって、指導役を引き受けたのさ」


「えー、そんなのアリかよ! 2回も旅行ができるなんてズルいぞ!」


「さっきも言っただろう、ボクは遊びで来ているんじゃない。キミみたいに気楽にカニ歩きしているヒマはないんだよ」


「なんだとー!」


「……あの、私にも雪がかかったのですが」


 いきなり後ろから声がして、驚いて振り向くと雪まみれになったソフィアがいた。

 どうやら、とばっちりを食ったらしい。


「あ……これはとんだ失礼を、レディ。お詫びに後で高級なお茶とスイーツをご馳走させていただきます」


 マクシミリアンがこれまたキザな態度とセリフでソフィアに詫びを入れる。


 ヤツの整った顔と真摯な態度にイチコロとなる女子は多いだろう。


「……いえ、結構です。謝罪の言葉だけ頂いておきますね」


「そ、そうですか……もし気が変わったらいつでも声をかけてください」


 ソフィアのにべもない反応に、ヤツは明らかに動揺を隠せず、どこかに退散してしまった。


 今まで女子にああいう態度取られたことなかったんだろう、いいザマだ。


「ソフィア、大丈夫なのか? ところでなんで初心者講習受けてんだよ、お前北方の出身だろ」


「別に問題はありません。それと、フリシュタイン公国は暖流の影響で冬もそんなに寒くないのです。地形も平坦なところが多いですから」


 ふーん、それでスキーをやる機会が無かったってわけか。


 ここで彼女はしまったという顔をしてからオレに冷たく言い放った。


「……私と貴方はケンカ中なのです。気安く話しかけないでください」


 そしてプイッと横を向いて登っていってしまった。

 なんだよ、まだこの前のこと根に持ってんのか。


 オレの仲間内で彼女以外は初心者はいないし、やってることが単調っていうこともあって、なんかイマイチ楽しくない。


 ゲレンデの方を見ると、ヤニクとその彼女のギーゼラが2人仲良く滑っている。

 コイツらもなかなか上手い、さすがヤンチャなグループだな。


 ノアとクリスもいた。

 2人とも初心者以上中級者未満ってところだが、お互いに教えあって滑っているという感じで微笑ましい。


 くうっ、どいつもこいつも恋愛脳かよ。

 この前のことを思い出してしまったじゃねーか。


 見てろよ、オレもすぐに颯爽と滑り降りて女子たちの注目を浴びてやる。

 そしてあわよくばその中から彼女をゲットだぜ!


 オレは午後も頑張って黙々と練習に励んだ。


 カニ歩きからV字歩行で斜面を登れるようになり、まだハの字型ではあるが、ある程度は思うように滑走してターンもできるようになった。



 そうして1日目のスキー講習は、終わってみればあっという間に終了してしまった。

 明日からはもっと積極的にゲレンデを滑って、トコトン楽しむぞ。


 講習から戻って、夕食までにはしばらく自由時間がある。


 さあて、いよいよお待ちかね。

 ちょっくら宿泊所の外に繰り出そう!

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