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08.神学校に到着

「あ〜、まだ着かないのか〜」


 ケイン大司教領にある神学校へ向かうために居城を出発してから3日目。さすがに疲れが出てきて馬車の中であくびが何度も出る。


 先に言っておくが、3日間ずっと馬車に乗っていたわけではない。それだと何日もかかってしまうので、大司教領に通じている河川の船も使ってる。


 1日目は居城から乗った馬車で港まで行き宿泊。2日目は河川で大司教領に入ってから宿泊。そして現在馬車に乗車中だ。


「若様、旅も3日目でお疲れでしょうが、既に相手の領地に入っております。気を引き締めてください」


「……わかったよ、セバスチャン」


 セバスチャンはウチの使用人のまとめ役だ。学校の寮まではオレの付き添い兼ボディガードとしてついてきてくれるが、寮に入ればオレは一人での生活になる。


 使用人も一緒に寮に入るのは別に問題ない。神学校と言っても聖職者志望者だけでなく、要するに帝国各地の諸侯や貴族、大商人などのセレブの子息御用達の学校なのだ。


 だがオレは使用人は不要と断った。予算の問題もあるが、そもそも人質として行くのだから、いざ逃げ出すときには身軽な方がいい。


 幸いというべきか、ウチは予算不足で使用人やメイドは必要最低限の人数に抑えてるので、オレは身の回りのことはだいたい出来る。皇帝の跡継ぎとしては悲しいことだけど、今の状況だと逆に助かった。


 この旅も一人で行くつもりだったのだが、さすがにオヤジが心配して、寮に到着するまではセバスチャンだけ付けてくれた。


 セバスチャンは経験豊富だし、大柄ではないが肩が盛り上がって胸板も厚く、実際に格闘技も強いのでボディガードとして申し分ない。


 それによく考えたらオレは馬車も船も宿も手配したことないから、どのみち一人はムリだった。


 そんなことを考えているうちに、学校らしき大きな建物が見えてきた。その前に広い庭があり、立派な門が構えられている。建物を囲む壁は端までかなり距離がある。はっきり言ってウチの居城より広そうだ。


 なんかとんでもないところに来てしまった感があるが、もう後には引けない。


 門の前で馬車を止め、オレとセバスチャンは降りた。積んでいた荷物を降ろしていると、中から門を開けて誰か近づいてくる。


「お待ちしておりました、ルド……タツロウ殿。私は寮の管理人を務めるクリストフ・グーテンベルクと申します」


 コイツはオレの正体知ってるようだな。今回の留学に際しては大司教側から


「皇帝陛下のご子息とわかると学内に混乱を招きかねないため、身分を偽っていただきたい」


 と要望があったのだ。そこでオレの身分はここでは『ドラゴベルク領内の貧乏貴族の息子 タツロウ・タカツキー』とすることにしたのだ。この名前は前世のもの(高月龍狼)そのまんまだ。


 アイツは要警戒だな。まあそれはともかくとして、ここでセバスチャンとはお別れだ。


「若様、それでは失礼いたします。健康にはお気をつけなさいませ」


「ありがとう。世話になったな。気をつけて帰ってくれよ」


 オレが門から中に入って姿が見えなくなるまでセバスチャンは見送ってくれた。出来れば生きてまた会いたいものだ。

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