表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
学園祭編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/162

60.手首と首筋

「オラッ、オラァッ!」


 ブルーノがバールを乱れ打ちしてきた。


 後ろに下がって避けるが、なかなか反撃する隙がない。


 このままじゃ埒があかねえし勝負をかけるか。


「うりゃあ!」


 バールが振り下ろされるタイミングに合わせて木刀を振っていく。


 ガシーン! と互いの武器がぶつかって鈍い反響音が廊下に響く。


 さて、動きを止めたのはいいがどうしたものか。


 なにせ、こっちは両手で木刀を握っているのに、ヤツは片手で鍔迫り合いを続けているのだ。


 なんつー腕力してんだよ。


「いつまでもうっとーしいんだよボケェ!」


 苛立ったブルーノは空いている左腕でパンチを放ってきた。


 くそ、この状況では避けられない。


 バシッとヤツの拳がオレの顔面にヒットする。


 向こうも腰が入らない状態なのに、それでも一瞬クラクラさせられる威力がある。


 続けてバシッ、バシッと拳を入れられ、たまらず鍔迫り合いを解いて後ろに下がってしまった。


「死ねやクソがッ!」


 ヤツは渾身の力で振り下ろしてきやがった。


 グシャアーッ!


 肉を叩き潰すような音が響く。

 今度は左上腕に打ち下ろされてしまった!


 声すら出ないほどの激痛だが堪えないと。


 というのもヤツの右腕がプルプル震えだして威力が落ちてるのだ。


 さすがに連続してフルパワーで振りすぎたのだ。


 ここからオレの反撃の時間だ……いやそうはいきそうにない。


「右がだめなら左でやるだけだぁ!」


 なんと、ブルーノはバールをサッと左手に持ち変えるとまた乱れ打ちを始めた。


 左は利き腕では無さそうだからスピードと威力が若干落ちるがそれでも一撃当たればかなりのダメージだ。


 何とか動きを止めるには、危険だが懐に飛び込むしかない。


 オレは木刀を右肩に乗せて首筋を隠すようにして、バールが右上から振り下ろされる瞬間に飛び込んでいった。


 首筋あたりでバールの柄をガシィっと受け止めると首に衝撃が走った。


 だがそのままヤツの右肩の服を左手でつかみ、渾身の頭突きを食らわしてやった!


 ぐうっ!


 ヤツも痛がってるがオレも痛い、石頭かよ。


 仕方がない、このまま投げ技に移るか。

 でも左腕が痛くて思うように相手を引き付けられない。


 もたついてると、ブルーノは不敵な笑みを浮かべながら右手をオレの顔に向けてきた。


「へっへっへ、俺は魔法は苦手だけどよぉ、この距離なら当てるくらいわけねーぜ!」


 ブワッ!


 ヤツは手のひらをオレの顔に押し付けると水魔法を繰り出してきた。


 しまった、水を飲まされて息が出来ない。


「ゲボッ、ゴボボボッ!」


「ギャハハハ、このまま溺れ死ねぇ!」


 マズい、このままじゃほんとに窒息死しそうだ。


 顔からヤツの手を剥がしたいがアイアンクローかと思うくらいの握力で顔を握って放さない。


 クソッ、こんなヤツにこのまま殺されてたまるか。


 俺は必死でヤツの顔面のあたりに左拳を何度も振り下ろす。

 この野郎、いい加減に手を放しやがれ!


「ぶはっ! ハー、ハー……ゲホゲホッ!」


 やっとの思いでヤツの手を引き剥がしたが、かなりの水を飲まされた。


「ヒャッハー! 死ね死ね死ねぇッ!」


「グウッ、ゲホゲホッ」


 ブルーノが狂ったように連続でバールを振り下ろしてくる。


 咳もまだ治まらないオレは木刀で頭部を防御するので精一杯だ。


 肩や背中には多数の切り傷や刺し傷ができている。


 おまけに水で腹が膨れて身体が重い。


「オラァッ!」


「やられるかよ!」


 ガッ!


 だけどヤツが力を込めた攻撃は木刀でなんとか凌いだ。


 ヤツもさすがに左腕が疲れたのかバールを持つ手を変えたが、あまり隙を作らずにすぐに攻撃しようとしている。


 だが一瞬でも時間があればいい。

 オレは左手の指を自分の喉に突っ込んだ。


「ゲエッ! ゲボオッ!」


 さっき飲まされた水を腹から出しているのだ。

 でないと身体が重たくて仕方がない。


 オレが吐いたあと、ブルーノは怒りが頂点に達したという感じで言い放った。


「テメエ、よくもオレのズボンに汚えモン引っ掛けやがって……もうこれでトドメじゃあ〜!」


 ブルーノは両手でバールの柄を掴んで上に思いっきり振りかぶった。


 待ってたぜぇ、ボディがガラ空きになる瞬間をなあ!


 オレはヤツのみぞおちの辺りに突進して頭突きを喰らわせた!


「グアッ……ゲホッ、ゲホッ」


「残念だったな、トドメを刺すのはオレの方だ」


「ゲホ……クソがあっ!」


 ブルーノは倒れずに向かってこようとする。

 だがお前はもう詰んでるんだよ。


 身体が正面に開いてバールを持った右手の手首が見えちまってるんだ。


「でりゃあ!」


 バキィッ!


「うぎゃあああ! て、手首があ!」


 オレは渾身の力を込めてヤツの右手首に木刀を振り下ろした。

 あの音だと折れたかもしれんが、手加減する余裕はねぇンだわ。


「こ、こっち来んなぁ!」


 ヤツはバールを落とし、右手首を左手で押さえながら左足で蹴りを出してきた。


 根性とタフさには感心するよ。

 でも腰が入ってない蹴りをあっさり躱してヤツの左斜め後ろに回り込む。


 そしてヤツが左手でバールを取ろうと屈んだところで、木刀を振り下ろす。


 バシイッ!


 木刀がブルーノの首元から鎖骨の辺りに食い込んでいる。


 ヤツはプルプル痙攣したあとに気絶して前のめりに床に倒れた。


 ようやく、仕留めることができたのだ!


「やっと終わったのかい? やれやれ、ボクならこの程度の連中は30秒もかからずに全員仕留められたけどね」


 いつの間にか部室の中に入っていたマクシミリアンから声をかけられた。


 いつものことだが第一声がイヤミかよ、まったくコイツは!


 でもコイツがいなければ危なかった、それは事実だ。


 しかも中にいたザコ敵も片付けてノアたちや客を助けてくれたようだし。


「今回は本当に助かったよ、ありがとうな」


「べ、別にキミを助けたわけじゃない。降りかかる火の粉を払ったまでだ」


 マクシミリアンは顔をそむけながら素っ気なく言った。


 普通にどういたしましてって返せばいいのに素直じゃないなあ。


「おっ、こっちも終わったみたいだな」


「おう、アンドレアス。お前にも随分助けられたよ、ありがとうな。ところでゲーツとカスパーは?」


「ああ、彼らなら中でグッスリと休んでいるよ。有意義な会話もできたしね」


 休んでいる、ねぇ……会話も『拳で語り合った』ってやつじゃないのか?


 その割には傷ひとつ無く息も乱れてないし、馬術大会とはいえオレはよくこんなヤツに勝てたもんだ。


「タツロウ、大丈夫かい!? みんなも無事なの?」


 ここでフェルディナント、というか実行委員の連中がようやくお出ましだ。


「まあなんとか……それよりこのヤンキーどもを捕縛するのを手伝ってくれよ」


「それはもちろんさ。実は不良グループが中に入り込んだって情報があって探し回っていたんだけど、まさかこっちに来てるなんて……」


 周囲にいる男子生徒にも手伝ってもらってブルーノたちを捕縛し始める。


「やめろ、放せやコラァ!」


 往生際の悪いヤツがいるようだな。

 もうお前らは終わりなんだよ、諦めろっての。


「か、仮面のダンナ! そんなとこで見てないで助けてくださいよぉーッ!」


 な、なんだ、仮面のダンナってのは一体?


 ヤツが叫んだ方向を見ると、少し離れたところに全身グレーの服装をしている男がいた。


 顔には仮面を着けてフードを被り、腕組みをしながら壁にもたれかかってこちらの様子を覗っている。


 しかしデカい奴だな、190センチは超えてる。

 それにあのガッチリした上半身……。


 そうだ、しばらく前にウチの部室に来たリュストゥングフットボール部の男爵の男じゃないのか?


 そうだとすると、今回のことはアイツらが裏で糸を引いていたんじゃないのか?


 自分たちの手を汚さずにウチの部を潰そうとしたってことかもしれない。


 あっ!

 仮面の男が逃げ出しやがった!


 どう見ても男爵のヤツだが、逃げ切られてトボけられたら関与を追及するのは難しくなる。


 絶対にとっ捕まえて関係を吐かせてやる!


「待てこらあっ、逃がさねーぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ