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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
学園祭編

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58.波乱の2日目

 学園祭も2日目に突入だ。


 今日は一般開放なので朝から多くの客が学校に来ている。


 その大半は生徒の保護者や近隣の街の住人で、純粋に学園祭を楽しみに来ている人たちだ。


 その一方で毎年遠方からやってくる固定客も一定数いるらしい。


 卒業生などの学校と関わりがあった人たちがほとんどだろうとは思うが。


 この辺一体の領地を支配する諸侯、ケイン大司教は選帝候でもあるので、学園祭への来訪のついでという口実で政治的・経済的な目的を果たそうとする連中もいるんじゃないかな。


 それはともかくとして、オレはヤニクに手伝ってもらって入場してくる客に錬金術研究会の存在をアピールしている。


 今日は朝開門して客が入場し始めてからの短時間、校舎への道端でのアピールが許されるのだ。


 オレは今度は敢えて最初から傾奇者風のメイクをして臨んだ。


 昨日ウチを訪れた生徒たちに聞くと、前夜祭のメイクが良くも悪くも印象に残ったということだったのでこちらのほうがいいと判断したのだ。


 何でもいいから興味を持ってもらって、客がウチの部室に足を運ぼうと思ってもらえればいい。


 その甲斐があったのか、部室の前にチラホラと一般客が見に来てくれた。


 生徒たちの方にも昨日の評判が広まったのか、そこそこの数が入ってくれている。


 生徒が部室の中に入って行くのを見て様子見していた一般客も入って来る。


 それで他の生徒や一般客もちょっと入ってみようという好循環が生まれているようだ。


 そういうわけで、2日目は午前中から昨日の開始時点とは比較にならない来客数で結構忙しい。


「あ〜、忙しいのに人手が足りなくてキツイぜ。休憩は取れねえかな、フェルディナント」


「今日はマグダレナが実行委員の仕事で殆ど不在だからその分厳しいね。でもしばらくすればお昼時だから客入りも落ち着くと思うよ」


「お昼になったら短時間でも交代で休憩を取るってことでいいかな?」


「オレはクリスの案に賛成」


「みんなもそれでいいかい? じゃあもうひと踏ん張り、頑張ろう」



 ようやく昼時となって落ち着いたので、すでに休憩を回し始めている。

 腹が減って仕方がないのだが、オレの順番は最後の方なのでもうしばらく辛抱せねばならない。


「休憩から戻ってきたッス! パパ、ママ、また閉店後にね」


 マヌエラの両親が丁度昼前に来店したので、一緒に昼休憩を取ってもらったのだ。


 他にも午前中にノアとクリスそれぞれの両親が来てたし、マグダレナ、フェルディナントそれぞれの家族も夕方に時間があれば寄ってくれるらしい。


 オレんちは……まあオヤジは立場上来るわけにはいかないしハナから諦めてる。


 ソフィアとヨハネスはどちらも遠方だから来ないらしい。

 さすがに気の毒なので、2人にはまた後日部員たちで労いをしようとフェルディナントと話してる。


「それじゃあ、休憩に行ってくるね〜。タツロウ、しばらくの間よろしく〜」


「おうよ、ヨハネス」


「この次はタツロウが休憩に行っていいよ……ん? えっ、それ本当なの?」


 ヨハネスと入れ違いで部室に入ってきた生徒から耳打ちされたフェルディナントはしかめっ面になった。


「みんなごめん、実行委員で急用ができてしまったんだ。悪いんだけど、しばらく今の人数で凌いでほしい」


 それだけ言うと急ぎ足で部室を出ていった。

 何があったんだろうか、ロクでもないことじゃなければいいけど。


「あの……こんな時に申し訳ないのですが、私も少しの間この場を離れたいです。できる限り早く戻ってきますので」


「わかったよソフィア。それでどこに何しに行くんだ?」


 彼女はオレの質問に反応して、珍しく顔を赤らめて頬を膨らませながら抗議してきた。


「……女子に行き先や用事を一々尋ねるのは、とても失礼なことだと思います」


「タツロウ、今のはわたしもヒドいと思う」


「タツロウ先輩のことはもちろん尊敬してるッス……でもこれはデリカシー無さすぎッス!」


 うわ、女子たちから総攻撃を喰らってしまった。

 もう何となくわかったけど、さっきはわからなかったんだから仕方がないじゃないか。


 でもそう反論すると余計に炎上しそうなので謝罪だけしてあとは口をつぐむことにした。


 そしてソフィアが部屋を出て女子からの攻撃が止んだと安心したのも束の間。


 その直後から客がポツポツ来店しだした。

 とにかくヨハネスたちが戻ってくるまでは残った人数で対応するしかない。


 忙しくて目が回りそうになっていたオレだが、何となく不穏な雰囲気を感じ取った。


 部室の前をドタドタと足音を立てながら数人がドアに向かってくる。


 そしてドアの前に現れたのは、派手なガラのシャツと上着にボンタンのようなズボンを履いた男たちのグループだった。


 10人前後いるだろうか、はっきり言えば見た目はガラの悪いヤンキーといった感じの連中だ。


 まあでも、見た目だけで判断するのはよろしくない。

 他にもヤンキーぽい服装の客もいたが店内では大人しくしていたしね。


「……ここだなぁ、錬金術研究会とかいう奴らの部室っていうのはよぉ」


「いらっしゃいませ。さあどうぞ中へ、説明しますね」


 クリスがヤツらを案内しようとした矢先のことだった。


 バリーン! ガシャーン!


 ヤツらの一人が隠し持っていたバールでショーケースのガラスを割り始めたのだ。


「キャーッ!」


 クリスと店内の客たちから悲鳴が上がり、部室内は騒然となった。


「ギャーハハハ、オラオラァ!」


 バール男はショーケースを破壊し続け、その仲間たちは部室内に乱入して机の上の用具を壊しだした。


 こいつら、オレがいるところで何してくれてんだよ!?


 念の為と部室内に置いておいたアレ、木刀を片手にオレはバール男へ突進していった。


「いい加減にしやがれ、おらあ!」


「おっと、そんな攻撃当たるかよ、バーカ!」


 思いっきり振り下ろした木刀はあっさり避けられてしまった。


「クソがぁ! うら、うらあ!」


 続けざまに攻撃したが巧みな後ろステップで躱されて当たらない。


「ちょこまか逃げやがって、この野郎が!」


「へっへっへ……」


 横から嘲笑するような声が聞こえてきて我に返ると、オレはヤツらに周りを囲まれてしまっていた。


 しまった、オレとしたことがやっちまった。


 だがここで動揺してはヤツらの思うつぼだ、何とか脱出する隙間を探さないと。


「よぉ〜、久しぶりだなぁ、タツロウ!」


 後ろからオレの名を呼ぶ声が聞こえてきた。

 こんなヤツらに知り合いはいないはずだが……でも聞いた覚えのある声だな。


 前方に注意を残しつつ後方をチラ見すると、そこには見覚えのある顔が2つ並んでいた。


 あっ! ゲーツとカスパーじゃないか。


 コイツらは前の学期中に寮内で事件を起こし、普段からの素行不良も相まって退学処分になった元クラスメイトだ。


 そしてオレが決闘した相手で同じく退学したヒューゴの取り巻き連中でもあったのだ。


「ヒッヒッヒ、いつぞやは世話になったなぁ……今日はその礼をしにきたぜぇ!」

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