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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
学園祭編

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53.部活動の目標

「全く、あなたという人は! これくらいの礼儀は知っていて当たり前でしょう!」


「ひえぇ、ごめんなさいッス!」


 あー、またなんかマヌエラが失礼をやらかしたのか……。

 マイペースなマヌエラはマグダレナに時々厳しい指摘を受けている。


 と、他人事のように言っているオレも5回くらいは怒られたけど。


 それに注意されていないのはフェルディナントだけであとのメンバーも1度や2度は受けているのだ。


 マグダレナを初めて見かけたのは馬術大会直前の頃だったが、正直に言えば傲岸不遜な人という印象だった。

  

 しかしこうして身近に接してみると、口うるさい面はあるが言うべきことはハッキリ言う、筋の通った人物だというのがわかってきた。


 それに親分肌というか、なんだかんだ面倒見が良い人でもある。


「……まあこれくらいにしておきましょう。次からは気をつけなさい、マヌエラ」


「うぅ、わかりましたです」


「さあ、皆さんひと息ついてお茶でも飲みましょう。クリス、悪いけどお願いね」


「はい、かしこまりましたマグダレナさま」


「クリス、前にも申しましたけど、この部室内ではわたくしたちは部活仲間です。『さま』は不要ですよ」


「すみません、マグダレナ……」


「恐縮し過ぎ! まあそのうち慣れるでしょう。それより皆さん集まってください、話があります」


 オレたちはマグダレナを中心として集まり、クリスとソフィアが入れてくれたお茶を飲みながら全員が落ち着くのを待つ。


 女子にばっかりお茶を入れさせてお前は何もしないのかって?


 オレとフェルディナントで入れる日もあるよ。

 フェルディナントはお茶の入れ方がエレガントで味も美味しく、そこいらの執事顔負けだ。


「それでどのようなお話でしょうか、マグダレナ」


 フェルディナントが頃合いをみて話を切り出して場を仕切る。


 まだ言ってなかったがフェルディナントは副部長、マグダレナは部長を引き受けてもらった。

 さすがにコイツらを下級貴族の下につけるわけにはいかないからだ。


 でもお陰で部活の承認審査は迅速に完了し予算もそれなりにつけてもらった。

 オレやマヌエラが部長ではこんなに順調にはいかなかっただろう。


「では早速本題に入りましょう。来たる学園祭にて、我らが錬金術研究会は何を成すべきか」


「え、学園祭って何だよ……いえ、何でしょうか?」


「そういえばタツロウは4月からの転入生だったね。説明するからソフィアとマヌエラも聞いておいて」


「もしかしてこの学期中にやるってこと、でしょうか?」


「タツロウ、ぼくにはもっと砕けた感じの話し方でいいよ。で、学園祭は来月上旬に行われる、この神学校最大のイベントさ」


「それで何が行われるんだ?」


「大まかに言えば、これまでの学園生活の成果を披露する場ってところかな。部活動で培ってきたモノや練習で身につけた能力を披露したり、クラスで何かを作り上げるとか様々だよ」


 内容的にはオレが元いた世界の文化祭と同じようなもんかな。

 まだ聞きたいことはあるが先にマヌエラとソフィアが立て続けに質問を出してきた。


「あの、1年生でも参加出来るッスか?」


「もちろんだよ。でも入学して間がないから上級生の手伝いっていうパターンが多い。マヌエラはメインで頑張ってもらうけどね」


「……これは生徒全員が強制的に参加するイベントなのでしょうか?」


「いや、あくまで参加したい人が自主的に参加するものだよ。もちろん観客として眺めるだけでもいいし、自由なのさ」


「どういうことだよソフィア、この部活で参加したくないってことかよ」


「違います、タツロウ君。クラスと部活の両方参加することになったら大変だなと思っただけです」


「まあまあ2人とも、さっきも言ったように参加は自由なんだから。でも人数が少ない部だから可能な限り手伝ってもらえるとありがたいけどね」


「タツロウ、先程のような乱暴な言葉使いは慎みなさい。次は部室から退席してもらいますわよ」


 思わずムキになってフェルディナントとマグダレナから注意を受けてしまった。


 でもせっかく立ち上げた部なので、どうせやるならみんなで協力して面白いモノにしたいというだけなのだ。


 ……いや違うな。


 部活仲間となったが、彼女とはどうも考えが合わないのだ。

 そういう不満がつい出てしまったのは自分でも良くないと思う。


 少し不穏な空気となったのを察してか、クリスが質問を出して雰囲気を変えてくれた。


「わたしも昨年は見る側だったからよくわかってないんですけど、発表するテーマは何でもいいんですか? それとも制限はあるのですか?」


「基本的には何でもOKだけど、暴力的とか危険なものは当然NG。学校の規則に反しているのもダメだけど、詳しくは都度確認したほうがいいよ」


「提案です! 自分は錬金術の実演をやりたいッス!」


「良い案だとは思いますが、それだけでは観客へのアピールが物足りないですわ。やるからには集客数トップを目指しましょう!」


「……マグダレナの指摘通りだと思います、私も。実験の内容をわかりやすく伝えないと見向きもされないかもしれません」


「それじゃあ、方向性はマヌエラの提案を基本にしようか。具体的な案は次回の全員出席時までの課題として、みんな考えてきてね」


 フェルディナントの纏めでひとまずミーティングは終了した。


 それにしても集客数トップが目標とは、まさかマグダレナがこんなに熱い人だとは思っていなかった。


 次回のミーティングまでに良い考えが思いつくか自信がないなぁ。


 ちなみにほぼ毎日出席してるのはマヌエラとヨハネス、それにオレくらいだ。


 ソフィアとクリスは2日に1回くらいだし、マグダレナとフェルディナントは忙しい身なので3〜4日に1回程度である。


 そういやヨハネスは何も発言してなかったけど、気後れしたんだろうか。


「ヨハネス、お前何か意見はないのか? 今のうちに遠慮なく言っといたほうがいいぞ」


「ん〜、難しい話はいいよ。とにかく楽しく実験ができれば満足だから」


 なんか主体性の無い返答だ。


 能力は凄いのに、周りに流されて自分の意見があまり無いのがヨハネスの特徴とも言える。

 傍から見るとじれったいが無理強いするのもおかしいし、本人が変わるのを待つしかない。


 それはともかくとして課題を考えないと。


 派手に爆発する組み合わせで実験して人目を引くとか面白くないか?


 ……ダメだ、危険なことはできないのだった。

 寧ろそうなる恐れがある組み合わせは排除しておく必要がある。


 そうだ、女子たちにメイドのコスプレして教室の入口に立ってもらうのはどうだろうか?


 特にソフィアなんて男子を多数引っ張り込めそうだ。


 と思ったがやめておこう。


 それで客を集めたところで実験をまともに見るやつは少ないだろうし、効果があるのは最初のうちだけだ。


 個人的にはコスプレは見たいけど、まあマグダレナが承認するとも思えないしボツだな。


「どうしたのですかタツロウ君。顔がニヤついてますが面白いことでもありましたか?」


 急にソフィアから声をかけられてびっくりした。

 そんなにニヤニヤしてたのかオレ。

 まさか女子たちのメイド姿を妄想してたとか言えないしとにかく誤魔化そう。


「ああ、その、今日の晩メシ楽しみだな〜って思ってただけだよ」


「えっと、まだ寮の夕食まで時間がありますけどそんなにお腹が空いているのですか?」


「もちろん。育ち盛りの男子は放課後になるともう腹減り過ぎになってるよ、なあヨハネス」


「え〜、確かにちょっと減ってるけどそこまではいかないなあ。そんなこと言ってるのタツロウだけだよ」


「そんなことないッス! 自分もなんだかお腹ペコペコで早く食べたくなってきたッス!」


「皆さん、わたくしので良ければコレでも摘みながら実験を続けましょう」


 マグダレナが高級そうな包み紙を机の上で広げると、中から美味しそうなクッキーが出てきた。

 ホントにお腹が空いてきたのでありがたい。


「わーい、早速いただくッス! ありがとうございますマグダレナ!」


「ふふ、どういたしまして」


 マヌエラが一番にマグダレナの元に行く。

 あの遠慮のなさはある意味羨ましい。


 さてオレもいただくとするか。

 クッキーをひとつまみいただきに行くと、ソフィアも同じく横で摘み、話しかけてきた。


「タツロウ君、私はみんなと仲良くしたいだけなのです。でも自分の気持ちを上手く伝えられなくて。気に触ることがあれば遠慮なく言ってください」


「ああ、こちらこそさっきはゴメン。ちょっと機嫌が悪かっただけなんだ、気にしないで」


 今日は部活のメンバーとの距離が一段と近づいた気がする。

 これからもっと楽しい部にするぞ、そう思いながら実験を頑張ったのだった。

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