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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
馬術競技大会編

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40/162

40.開幕

 いよいよ馬術競技大会の開幕日を迎えた。


 全然興味無かったのにこうやって待ち望むことになろうとは思わなかったが、ようやく借りを返す機会を得られるのだ。


 でもまずは初日の馬術審査を通過しなければならない。これまでの練習の成果を本番で出せるのか……いや自信持ってやれば大丈夫、それぐらいの練習は積んできた。


 午前中の授業と昼食を終えて会場の芝競技場に行くと既に何人か来ている。


 その中にはサンドラとマチルデの姿も見える。あいつら結構やる気十分だな。


 今日は競技用の服装を貸してもらえるのでクラブハウスの更衣室で着替える。練習のときに着替えてた職員室のとは違ってキレイに掃除も整理もされている上にやたらと広い。


 服装はシャツと乗馬用ズボンに手袋とタイは全て白色だ。これは色も規定されているので選びようがない。


 あとは黒か紺色のヘルメットとジャケット、ブーツは黒か茶色が用意されていた。オレは全て黒で統一した。


 競技場に出ると観客が周りに入って来ていたが、ほとんどが生徒か先生だ。保護者と思われる貴族的な服装の人たちもいるがごく少数だ。まあ今日は下級貴族がメインだからかもしれんけど。


「タツロウじゃない! まあまあ似合ってるわよ、乗馬服。馬子にも衣装ってやつね」


 サンドラが声をかけてきたのだが、なんと失礼な! というかコイツ意味分からずに言ってるんじゃないか? ツッコむの面倒だからいいけど。


「そっちこそビシッと決まってるじゃん。気合十分って感じだな、やっぱりマチルデには負けたくないんだろう」


 サンドラは赤というかえんじ色っぽいジャケットで普段はツインテールの髪もキチンとヘルメットに収めて好印象にまとめている。


「か、関係ないわよマチルデは! あたしはクラスの代表として少しでもいい演技を……」


 ムキになって反論するその反応でよくわかったよ。


「ちょっと、私がいないところで勝手に話題にしないでちょうだい。そうしていいのはマルコだけなんだから」


 おっと、マチルデに聞こえてたようだ。また一触即発の雰囲気になると大変なのでこれ以上はやめておこう。


 ちなみにマチルデはオレと同じく黒で統一した服装で違いは首元をアスコットタイにしているだけだが、より女性らしさを感じさせるシルエットに仕上がってる。


「タ、タツロウ、こんにちは。今日はお互い頑張ろうね」


 クリスからも声をかけられた。こちらはヘルメットとジャケットが紺色だが、なんか2人と比べて地味……いや素朴な印象だ。何が違うというわけでもないんだけどね。


 端から見るとオレは3人の女子に囲まれてモテモテに見えるかもしれない。気分はいいのでしばらくこの状態をキープしたいな。


「ん? 誰この子。タツロウの知り合い?」


「彼女は練習仲間のクリス。聖職者クラスの代表だよ」


「あ〜、そんなこと言ってたわね。あたしアレクサンドラ。タツロウとは同じクラスの友人よ」


 別にサンドラに気があるわけじゃないが、目の前でキッパリと友人と断言されると折角のモテモテ気分が台無しだ。


「あ、はい。わたしはクリスティーネです、よろしくお願いしますアレクサンドラさん」


「そんなかしこまらなくてもいいわよ、サンドラでいいから」


「私はマチルデ。スイーツのことならいつでも話に乗ってあげますわよ」


「はあ、そうなんですね。よろしくお願いします」


 結局女子3人で話が盛り上がってきたのでオレは場を離れることにした。競技場内をうろついて気分を落ち着けよう。


 何度も練習でまわったコースなので改めて確認するものは無いのだが、それでも今日の状態を確認しておくのは無駄ではない。


 今日は天候がいいのでコンディションは良好だからいつも通りにすればそれなりの結果は出せると思う。


「おーい、タツロウっち〜!」


 聞き慣れた声が聞こえてきた。ヤニクが観客席から声をかけるかけてきたのだ。近くに寄ってこちらからも声をかける。


「よおヤニク。こういうの興味無さそうなのにどうしたんだ?」


「おれっちのクラスで代表を応援しようって盛り上がっちゃってさ、ノリで来ることになったってワケ」


「そうか、でも結構面白いからゆっくり見てけよ」


「うん、それからおれっちの心の中ではタツロウも応援してっからさ、頑張れよな」


「ありがと、嬉しいぜ!」


 今のところ同じクラスの奴らはあまり見かけないのでちょっと寂しかったが友人からの応援で力も湧いてきた。


 マルコとノアは……いたいた。


 マルコは奥であまり目立たないところにいる。サンドラとマチルデどっちかに肩入れしにくいだろうから仕方ないか。


 ノアは別の集団の中にいる。聖職者クラスの応援団といったところかな。


 さて、そろそろ開幕式が始まりそうだから戻ろう。競技場の観覧席の近くに台が置かれており、その前に選手が集まる。


 選手の人数は男女それぞれ12人ずつ計24人だから多くはないが乗馬服で集まるとなんか華やかに感じる。


 台に登るのは……え〜と、誰だっけあのおっさん。


「え〜、皆さんこんにちは。校長のハイルマンです」


 ああ、そうだ思い出した。ここに転入したときに会ったきりだからすっかり忘れてたよ。


「え〜、本日はお日柄もよく――」


 どこの世界でも校長先生の話は長いな、じっと立ってるの疲れちゃうよ。


 ところでこの集まったメンバーの内何人が騎士階級なんだろうか。もしかして平貴族はオレとクリスだけか?


 マクシミリアンへのリベンジの前にまずはこいつらの大半よりいい成績を上げないと話にならないのだが、みんな馬の扱いに慣れてそうに見えてしまう。


 いや落ち着け、自分で自分に余計なプレッシャー与えてどうすんだ。練習した通り出来れば問題ない。


「え〜、それでは、ここに当神学校杯 馬術競技大会の開幕を宣言したいと思います」


 やっと終わったか。それにしても締まらない開幕宣言だな。


「続けて競技内容を説明しますのでこちらに注目してください」


 ここでようやくワグナー先生の登場だ。早いとこ説明おねがいします、すでにクタクタだよ。


「当馬術競技大会の初日に行う馬術審査は総合馬術競技を簡易的にした独自のプログラムで実施します」


 総合馬術というのは馬上馬術と障害馬術とクロスカントリーの3種類の競技を3日間かけて行い全ての点数を競う競技のことだ。


 ここでは日程的にも設備的にも無理なので内容を簡単にして一つの競技としてやるということだ。


「最初に馬上馬術の基本的なステップをいくつか披露して、次に障害を越えていってもらいます。最後にクロスカントリー的な要素のある障害を越えてフィニッシュとなります」


 クロスカントリー的……ゴール近くのバンケットや柵と水濠のことかな。順番は本来クロスカントリーの方が先だが独自プログラムだからどうこう言っても意味はない。


「それでは今年は先に男子から競技を開始します。少し休憩を取ってから始めますので準備をしておいてください」


 今年はってことは毎年順番を入れ替えてるってことか。男女で差別が無いようにっていう配慮なんだろうか、まあどっちでもいいよ。


「ちなみに明日のトーナメントに進めるのは男女それぞれ4名ですので、皆さんの健闘を期待しています」


 4名だけか、思ってたより少ない。気合いと集中力を最大値に高めて臨まないと厳しいな。


 幸いにも順番は中盤の少し後くらいだから時間はある。それまでに身体のコンディションを上げていこう。

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