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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
馬術競技大会編

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29.男女6人でお出かけ

 そして馬術競技大会の我がクラス代表者の件は、全然決まらないままに2日過ぎて、今日はもう週末だ。まあ、オレが気にすることじゃないからどうでもいい。


 それよりも待ちに待った美味しいスイーツをみんなで食べに行くというイベントを存分に楽しむこととしよう。


 参加者はこの前約束した5人に加えて、ノアも参加することになった。こういうのはやっぱり人数が多い方が盛り上がるから歓迎だ。


 寮で昼食を急いで食べ終わり、待ち合わせ場所の正門に行ったが、先に来ていたのはノアだけだった。


「やあノア、随分と早いね。」


「やあ。今日は誘ってくれて嬉しいよ。僕はあまり外に出かけないから、楽しみで仕方なくってさ。落ち着かないんで、早いけど来ちゃった」


「それは誘った方としても嬉しいね。そういえばノアの姿を食堂で見かけないけど、食事は全部自室で取ってるの?」


「うん、ばあやが用意してくれるからね。実家から野菜や果物を沢山仕送りしてくれるし、食堂に行く必要はないかな」


 ばあや? ああ、使用人のことか。ノアん家はかなりベテランの使用人を送り込んでるみたいだな。家が元農家の地主だからか、仕送りが充実してるのは羨ましい。


「お待たせ〜。おや、いるのは2人だけかい?」


「2人共、ちーっす! 今日が楽しみで仕方なかったおれっちより早く来てるとは、気合入りまくりじゃん」


 マルコとヤニクが一緒に歩きながらやってきた。賑やかなのが揃って、一遍に雰囲気が明るくなった。あとは女子2人か、まあ気長に待つとしよう。


「タツロウっち、今日はスイーツ賭けて勝負しようぜ〜」


 オレとヤニクは時々こうやって賭け事をして楽しんでるのだ。といっても、賭けるのはせいぜい昼食のサンドイッチ1つとか、夕食のおかず1品とかだけの慎ましいもので、ちょっとした刺激が欲しいだけなのだ。


「フッ、このタツロウに勝負を挑むとはいい度胸だ。この前のように返り討ちにしてくれるッ!」


 前回はオレが勝って夕食のソーセージ1本ゲットしたのだ。


「おっ、ほざいたねタツロウっち。でも今日はおれっちが勝たせてもらうよ〜、そんでスイーツはいただきだ!」


 ここまでの煽り合いがいつものパターンだ。マルコとノアにはウケたのか結構笑ってる。こうやってお互い気分を盛り上げてるんだが、今日の勝負はいつもより気合が入るってもんよ。


「皆さん、お待たせしました〜。マルコ、今日は一緒にスイーツを楽しみましょうね〜」


「お待たせ。さあ、さっさと行きましょうか」


 いつの間にか女子2人がオレたちのところまで来ていた。マチルデはスカート丈が長くちょっとドレスっぽいワンピースの服装で、カラフルな日傘をさしている。サンドラはシンプルかつシックな色合いのワンピースに、つばが大きくない麦わらみたいな帽子だ。


 なんとなく2人の間に緊張感が走ってるように感じるのはオレだけではなさそうで、しばらくみんな無言のまま歩いていく。


 だが、3分くらい経ったところでマチルデが仕掛けてきた。マルコに近づいて横並びになり、さり気なく日傘を差し掛けて距離を縮めながら話しかける。


「ねえねえ、マルコはスイーツをいただく時って、いつも何を合わせて飲んでるの?」


「コーヒー……かな。でも、何も頼まずに水を飲むだけってことも多いよ」


「あら勿体ない。やはりスイーツには、特に今日いただく予定なのはタルトだから、紅茶が良く合うのよ」


「そうなの? でもな〜、今日はスイーツだけでもギリギリなのに、飲み物まで頼む余裕はないかな」


「この前にも言った通り、それなら私が援助しますわ。どの種類の紅茶が合うかも、私が選んであげる」


「いいのかい? それじゃお言葉に甘えてご馳走になろうかな」


 マルコとマチルデの会話が弾む一方で、サンドラからは目には見えないが強い負のオーラを感じる。何となくヤバいと感じたオレたち男子3人は、そっと前に出て距離を開け、当たり障りのない世間話を楽しむことにした。


「そういえば、ノアは何で聖職者クラスに入ったの? オレにはよくわからんが、司祭に憧れてるとかなの?」


「そうだね、両親は熱心で敬虔な教徒だから、僕も自然と憧れを持ったというのはあるね」


「でもそれだけだったら、わざわざここまで来なくても、ノアちんの地元の神学校で良かったんじゃね?」


「ああ〜、そこはね、また別の理由があるというか。順番に話すと、まず僕は次男坊なんだよね」


 なるほどな、なんでか大体わかってきた。


「実家は長男の兄貴が継ぐことが決まってるから、何もしないと僕は少しの土地を分けてもらってひっそりと暮らすことになる。だけどそれだけの人生はつまらないから、別に生きる道を探してみようかなって」


「で、司祭を目指そうと」


「そうだね、両親も、子供にそうなってほしいって希望してるしね」


「エラいぜノアちん! おれっちも三男坊だけど、将来なんてまだボンヤリとしか考えてねえし」


「はは、でも成り行きでそうなったところもあるから、そんなに偉くないよ。それに他にも理由があるし……」


「家の将来を考えて、てことか」


「何それ、どういうことなん?」


「タツロウには前にも言ったけど、ウチは2代前に自営農家から地主になって貴族に成り上がったばかりだから、まだまだ地盤が弱いんだよ」


「で、各地の貴族と繋がりを持ちたいと」


「そのとおり。ここの神学校は、帝国各地の貴族の子弟が入学してくるからね。このままここで司祭になれれば教会とも繋がりが強くなるしね」


 この世界での教会の力はかなり強大だ。そもそも大司教が諸侯化して帝国内で力を振るってるくらいだからな。


「おれっちのアタマじゃ、やっぱりよくわかんないけど、ゆくゆくはケイン大司教の座を狙ってるってことなのか?」


「いやいや、そんな大それた目標は持ってないよ。もし司教まで上り詰められたら、もう万々歳さ」


 ノアの実家の話で思わず盛り上がったが、もうすぐ商店街に到着だ。まずは必要な買い物をサッサと済ませて、それからみんなが楽しみのスイーツを食べに行くぞ。

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