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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
決闘裁判編

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25.その後の展開

 決闘から一夜明けて、今日は朝からずっとゴロゴロしてる。頭を怪我していることもあり、特別休暇が言い渡されたのだ。


 昨日の夜は大変だった。風呂に行けば居合わせた連中に声をかけられまくり、食堂でも使った技のこととか聞かれ続けて余計に疲れた。一晩寝ただけでは疲労が抜けず、起き上がるのは食事とトイレに行くときだけだ。


 時々ウトウトしながら、昨日のことを思い出したり、考えたりしてる。決闘中もだが、そのあともちょっといろいろあったのだ。


 オレが勝利宣言を受けたあと、立ち会いの司教の一人からイチャモン……反則技の使用が疑われたのだ。


 自分の木刀を回転させながら投げつけたのがヒューゴの顔面付近に跳んだのは、危険な攻撃だったのではないか、ということだった。


 でも事前に見た危険技一覧に無かったし、2回バウンドしてるのに、あれを反則と言われてもなあ。


 司教たちと審判のロレンツ先生で協議した結果、立ち会い責任者のシーラッハ司教の裁定で、有効な攻撃と認定された。もしそのまま当たってもバウンドで威力が削がれているから、重傷となる可能性は低いとの理由だ。


 協議の間、オレはヒューゴと会話してた。聞きたいこともあったしね。


「オイ、オレに絡んできたもう一つの理由は何だったんだよ?」


 ヒューゴはオレが話しかけてから少し間を置いてから反応して顔を上げ、返答した。


「……んっ!? 何の話だ……?」


「何のじゃねぇよ、決闘中になんか言いかけてやめただろうが」

 

「ああ、あれか……。お前のやることが、いちいちカンに障るんだよ」


 えっ、それは1つ目の理由と同じじゃないのか? オレにもわかるように詳しく言ってくれよ。


「お前の家、この前の反乱鎮圧の遠征に参加してないんじゃないのか?」


 この前……ああ、オレが選帝侯相手にやらかした会議で議題になった、あの遠征のことか。


「あれね、まあ、ウチは領内に留まっての守備担当を、主人の子爵様に仰せつかったからね……」


 さすがに、自分の家が皇帝家だからとは言えないので、視線を逸らしながら適当な嘘をついた。


 でも、貴族全員が遠征に出たら、領内がガラ空きになるから守備部隊も残すのは嘘じゃない。諸侯の直臣たちがまず召集するのは、攻撃力が高く、平貴族よりは経済的に余裕のある騎士たちからになるのが普通だ。


「やっぱりな。お前の家みたいな貧乏貴族が遠征で金を使ってたら、今頃にこの神学校に転入できる余裕なんて無いはずだ」


「何が言いたいんだ? それとお前と何が関係あるんだよ」


 ヒューゴは苛立った表情を見せて強い口調でまくしたてる。


「ウチは、代々騎士としてドラゴベルク家に仕えてきたが、皇帝に即位してからは家臣にろくな報奨を出さないくせに、こっちは主従関係で出兵はキッチリやらされるんだよ!」


 痛いとこ突いてきやがる。でも、オヤジもじいちゃんも、たぶん報奨をたっぷり払いたくても払えなかったんだよ。ウチも選帝侯たちに搾り取られてばかりだしな。


「でも父上は、騎士の務めは果たさなければと、あの遠征も無理して装備を揃えて、領民から兵士も集めて参加したんだ。なのに……」


 聞いてて辛くなってきた。それで何があったんだよ?


「遠征して早々に重傷を負って戻ってきたんだ。それで手柄無しと判定されて報奨は見込めない。おまけに連れて行った領民の兵士たちも多く死なせてしまったから、遺族を放ったらかしにはできない。自分は、もうここにいるのが難しい状態なんだよ!」


 なるほどな。2、3ヶ月前からヒューゴが荒れ出したっていう、マルコの話とこれで辻褄が合った。遠征に参加した貴族たちが負担が重くて困ってるのに、オレがここに来れる状態なのは不公平だろ! ってことだな。


 でもオレは人質としてここに来てるのであって、不公平とか言われても困るけどね。ヒューゴはそんな事情知らないし、説明するわけにもいかないから、どうしようもない話ではあるが。


「それにお前が、皇帝のアホの跡取り息子を思わせて腹が立つ」


 ハァ!? それオレのことじゃん! いやアホじゃないけど! オレはお前に領内で会ったこともないぞ!


「自分たち家臣や領民が苦しいのに、わがまま放題で食事は贅沢三昧とか、気に入らない家来を風烈弾の的代わりにして、いたぶって遊んでるとか、ろくでもない噂ばっかりだ」


 そういうことなのか……だから実習でオレが風烈弾を使った時に顔色が変わったんだな。それはそうと、その嘘だらけの噂どこから出てるんだよ!?


 ウチの食事は殆んどが粗末な一汁三菜だし、風烈弾の練習の的は家来じゃなく、ちゃんとした普通の的ですから! わがままだったのは認める。


「まだ納得できねぇこともあるけど……お前に2度負けたのは事実。完敗だ。だから、自分たちのやったことは、自分でケリをつける」


 そう言うとヒューゴは野次馬たちがいる実習場に向かって、こっちの鼓膜が破けそうな大声で叫んだ。


「お前ら、よ〜く聞け! 自分らをタツロウ・タカツキーがそそのかして一緒に覗きをやったって話は、ぜ〜んぶ、ウソだ! 自分らの罪を軽くしたくてついた大嘘だー! わかったか!!」


 野次馬たちは一瞬静まり返ったが、すぐに女子全員から罵詈雑言の嵐で非難轟々だ。男子も大半が痛烈なヤジを飛ばしている。やったことを思えば当然だろう。だがオレは何も言わないことにした。


 今日はこのことをずっと考えていた。結局は、ウチが不甲斐ないから家臣に重い負担や嫌な思いをさせてたわけだ。どうにか出来なかったのかと考えては、でもこれまでの、そして今のオレに何が出来ると、頭の中で繰り返してる。


 果たして、オレがドラゴベルク領の跡を継いで家臣や領民を上手く導けるだろうか。不安ばかり募ってくる。勝利したのに嬉しさより苦い思いの方が強く残ってる。


 あとは、この件についての処分だが、昨夜の理事会で正式に決まったとグーテンベルクから教えてもらった。


 まずヒューゴの取り巻き2人は、即刻の退学処分となった。コイツらは入学当初から素行が悪く、問題行動を起こしては他の学生にも迷惑をかけて先生たちも扱いに困っていたそうだ。


 だがコイツらは腕っぷしが強くないんで校内であまりイキれなかったらしい。そこで荒れ出したヒューゴに目をつけ、いろいろワルいことを吹き込み、自分たちは取り巻きとしてその力を利用していたようだ。


 次にヒューゴの処分だが、先の2人よりは素行不良の歴が浅く、また騎士として有望ということもあって、長期間の停学処分を予定していたが、本人の希望で自主退学となった。自分の領地に戻って、イチからやり直したいそうだ。オレはノーコメントとさせてもらう。


 最後にオレについてだが、当然嫌疑なし、無罪であることが正式に認定された。なんたって神のご裁定によりオレが『正しい者』として選ばれたのだから。


 それと再発防止策については、早急に女子寮の屋外換気口の蓋に鍵が取り付けられるそうだ。


 いろいろ考えてたら、もう夕方になってきた。今日は、夕食をとったらすぐに寝よう。明日からようやく普通の学園生活に戻れる。以前と同じように過ごせるかはわからないが、まあなんとかなるさ。

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