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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
決闘裁判編

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23.もう少しのところで

 管理人たちに連れられて、オレたちは実習場にやってきた。既に審判役のロレンツ先生、それと司教の服を着た連中が数人待っていた。


 司教の中には、立ち会い責任者のシーラッハもいる。ということは、あれは理事たちなのか。


 隣の実習場には、数十人の学生たちがこちらを眺めて立っている。午後からの授業は休みなんだろうか。どう見ても観客というか、野次馬たちだな。


 オレとヒューゴは、実習場の真ん中付近に引かれた2つの白線の手前までそれぞれ歩いた。


 それを見届けると、ロレンツ先生は周囲を見回した後、シーラッハの顔を見る。


 シーラッハが黙って頷くと、先生はすうっと息を吸い込んでから、実習場全体に聞こえるように大きな声量で宣言した。


「これより、当神学校において約60年ぶりとなる、『決闘裁判』の開催を宣言する!」


 野次馬たちがワァーッと歓声を上げる。くそ、見世物じゃないっての。


「両者、位置に着き、まずは右側から名乗りを上げなさい」


 先生から右側、オレの方だな。白線の上まで歩を進め、深呼吸してから名乗りを上げる。


「タツロウ・タカツキー。ドラゴベルク領出身、年齢は15」


「ヒューゴ・ザイドリッツ。同じくドラゴベルク領にて代々騎士の家系、16だ」


 ゲッ、まさかのウチの領内出身、というか家臣じゃねえか! ただ、少なくともオレはアイツと会った記憶はない。


 なぜなら、諸侯と直接の主従関係、つまり直臣なのは爵位持ちの家臣たち、そして騎士や平貴族たちと直接主従関係を結んでいるのは直臣たちだからだ。


 アイツがオレを目の敵にするのは、これと関係あるのだろうか。向こうはオレの正体に気付いてるとか、まさかな。


「お互い構えよ」


 おっと、今は余計な事を考えてる暇はない。構えて、闘いに集中だ。


「はじめーっ!!」


 始まりと同時にヒューゴが一気に突進してきた! 唸り声を上げながら攻撃を仕掛けてくる。


「ウラァーッ!」


 上段から思いっきり振り下ろしてくる。それをガッと防御した後の連続攻撃を捌いていく。ここまではこの前と同じ、というか予想通りの展開だ。


 連撃の最後は正面で受け止め、鍔迫り合いのような状態になり、ヒューゴと正面から向き合った。コイツにはいろいろ鬱憤が溜まってるせいか、オレは思わず聞いてしまった。


「テメェー、一体なんの恨みで、オレが覗きをそそのかしたとか大嘘こきやがったんだよ!? おかげでオレの学園生活メチャクチャじゃねーか!」


 ヒューゴは口元を歪めて歯を剥き出しにしながら、苦々しげに言い返してきた。


「ハァ!? そんなもん、お前を初めて見たときからそのツラ、いや、存在自体が気に食わねーんだよ!」


 うわぁ、サイアク。とにかく気に入らねえから因縁つけるとか、中学生レベルの理由じゃん。こんなのこっちは対処できねえよ!


「それに……」


 ん? 他にも理由があるのか? どうせくだらねーことだろうけど、言ってみろよ。


「いや、なんでもねーよ!!」


 言葉の最後に力を込めながら、ヤツはオレを刀の鍔で押してオレを数メートルふっとばした。


 体勢を崩されながらも何とか堪えたが、ヤツが木刀の先に魔力を集中してるのが見えた。オレも魔力で風の壁を前面に出すが、はっきり言ってショボい。


 ヤツが魔力を解放すると、ブワーッと風圧が襲ってきた。ほとんど防御できずに食らってしまい、木刀を手から離さないようにして堪えるのが精一杯だ。


 そこへまたヤツが突っ込んできて木刀が振り下ろされる。なんとか木刀を動かし受け止めたが、防御態勢が崩れた。そこへ追撃が来る!


 だがオレは右に大きくステップして追撃を躱し、ようやく連続攻撃を切ることができた。よし、これで体勢を立て直せる。


 ステップの正体は、最小限の風を体に纏わせて横に飛行魔法を使っただけのもので、前世でやったゲームのロボットの動きを参考にした。どうせ実戦で通用するレベルで飛べないので、相手の攻撃を躱すことにのみ使用すると決めていたのだ。


 オレのプランは、基本的にはヤツの攻撃を凌ぎ切り、少ないチャンスで武器を弾き飛ばして一本取りに行くことだ。だからステップは重要な戦術になる。


 ここで野次馬たちから、おぉ〜と歓声が聞こえてきた。コイツらなかなかやるじゃん、とか感想も聞こえてくるが、今はこういうのがウザくてしょうがない。何度もいうが、見世物じゃねえ。


 さて、向こうも体勢を立て直し、お互い構えのまま睨み合う。オレはまだ仕掛けどころが見えてこない。ジリジリとした緊張感が場に漂う。


 んっ、体に風を纏い始めてるな……。そしていきなり飛行を始めやがった! オレよりもかなり高く、そして遥かに速いスピードで真上まで飛んできた。同時に剣先に魔力を集中してやがる!


 ヤバい、止まってると空中から簡単に狙い撃ちされる。俺はとにかくジグザグに走ったり、急に方向転換したりして狙いを絞らせないようにする。


 ヤツが溜めた魔力を解放するたびに、ボン、ボンと風圧の塊が上から襲ってくる。風で体を巻き上げられたら、そこを一気に決めに来るに違いない。足とステップで辛うじて躱し続けるが、反撃どころじゃない。


「オイッ、さっきから逃げ回ってばかりで、ヤル気あんのかコラッ! 俺に勝つ気があるなら、攻撃を避けずに反撃してこいや!」


 ヒューゴのヤツ、挑発してきやがって。誰がその手に乗るか。でも、野次馬たちからも、そうだそうだとヤジが飛んでくる。うっせぇーんだよ、こっちはオレとオレんちの命運がかかってんだ。


 攻撃を何回躱し続けてるんだろうか、オレも自分の位置がワケわからなくなってきた。するとそれを見透かしたかのように、ヤツが俺の背後に回るように空中移動し、これまでより魔力を溜めて威力を上げた風圧魔法を放ってきた。


 クソッ、避けきれない! オレは風圧をモロに浴びて前後左右がわからなくなるくらい体を巻き上げられた。そこへヒューゴが急降下して迫ってくる。


 咄嗟に立ち上がり構えを取ろうとしたが……ない! 木刀はどこにいった! 周りを見渡しても全く見当たらない。ヤバい、このままでは一本取られる!


 ガ ッ シ ャ ー ン !


 うわ、何だ!? オレとヤツとの間に、上から何かが割って入ってきた!


 見ると、木刀が回転しながら、地面から跳ね上がってる。もしかしてオレのか? 丁度手が届く高さで跳ね上がりが止まった木刀を、バシッと手に取った。


 そして、突然の邪魔が入って動きの止まったヒューゴの間合いに入り、木刀をヤツの手首に向けて振り下ろした! コレは貰った!


「クッ、クソがーっ!」


 ヤツはそう叫ぶと、渾身の力で飛行魔法を逆噴射させて木刀を躱し、5メートル以上後ろに下がった。


 惜しい、もうちょっとだったのに! 千載一遇のチャンスを逃したのは非常に痛い。だがまだ終わってないのだから、もう一度チャンスを狙うしかない。


 向こうも次の責め手が決まらないのか、息を切らしながら、再度構えを取った。オレも構え直して、少しの間睨み合いが続いたのだ。 

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