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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
決闘裁判編

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22.お待ちかねのアレが来た

 部屋に戻ってからは、明日の決闘のことばかり考えた。時間が無いし、今から戦い方をシュミレーションしておかないと間に合わない。


 戦いの方法は何だろうか。剣技か魔法か。それとも何でもあり? それによって状況が大きく変わるので早く詳細な情報がほしい。


 もし剣技だけだとこっちが圧倒的に不利だ。向こうは親が騎士身分のヒューゴがいる。先週の剣技実習でアイツの実力はよくわかってる。


 この前のように燕返しを使えばいいだろうって? あの技はいわばフェイント技だ。残念ながら、一度見せた相手には当分の間は通用しないので、今回は使えない。


 でも魔法戦なら勝てるかというと……。オレの魔法が大したことないのはわかってる。問題は、ヒューゴの実力がよくわからないってことだ。


 ただ、相手がどうであれ、少なくとも空中戦にはしたくないな。オレの飛行速度じゃいい的だ。


 一番いいのはステゴロタイマンなんだよなぁ。ヒューゴの方が少し体格が大きいが、リーチの差はそれほどではない。


 何より、ウチにいたときにセバスチャンに教えてもらった格闘技のワザがある。接近戦なら五分五分かそれ以上にやり合える自信がある。


 そんなことを考えてるうちに夕食の時間帯になった。早く管理人から差し入れが来ないかな。


 おっと、コンコンコンッとノックの音が聞こえた。ドアを急いで開けに行く。昼はまともに食べられなかったから腹ペコだ。


「タツロウ殿、少し気力が回復してきましたか? 夕食をお渡しする前に……、これがお待ちかねのアレです。先にご説明しますね」


 おお、アレがついにきたか。明日の決闘の詳細、早く聞きたい。でも食欲が先に立っていたので、お預け食らった気分だ。


「それでは、書面をこちらで読み上げますね……。神学校内における『決闘裁判』実施の意義について」


 グーテンベルクが読み上げてくれるが、どうも長くなりそうだ。この手の書類は、理念とかを先に説明したがるよな。早く具体的なやり方を聞きたいのに。


「当神学校において約60年ぶりに実施されるこの裁判は、互いの主張が真っ向から対立し、解決される見込みのない争いにおいて、神のご意思にその決着を委ねるものである」


 そんなに長い間実施されてなかったのか。それはともかく、要するに、自分たちじゃワカランから解決は神頼みってことかよ。


「争い事の真実は神のみぞ知るものであるから、『正しい者』が決闘の勝利者として神に導かれるであろう」


 ん〜、もっと古い時代ならまだしも、この時代でもそんなこと信じてるやつは、ほとんどいないと思うけどね。


「……と、古来からそう信じられているようです」


 ほうらね、やっぱりこんなもんですよ。それから次は、何故実施することになったかが読み上げられた。そんなのもうわかってるって。でもそろそろ本題かな。


「では、今回の決闘方法について、具体的に説明する。


・決闘で用いられる戦闘手段は、剣術、魔法、体術とする。但し、攻撃能力が高い技や、身体に深刻な傷害を与える攻撃手段は使用を禁じる。


・使用できる武器は木刀のみ。


・馬の使用は認めない。


・一対多の場合は、多数側は代表者1名を立てる。代表者以外の参戦、妨害行為は認めず、即時に多数側の敗北となる。


・降参、相手有効打による戦闘不能、武器喪失時に喉元に武器を突きつけられた場合を敗北とする。


・相手の生命を奪うことは禁じる。奪った場合は敗北となり、奪われた側の名誉が守られる。


これらの条件を守り、審判より勝利宣告を受けたものを勝利者とする。以上です、何かご質問は?」


 思ってたより細かく条件が定められてるな。でも、具体的に何が対象なのかがわからないものがある。


「使用禁止の技は具体的には何でしょうか?」


 グーテンベルクからは、こちらをどうぞ、と別紙を渡された。禁止技一覧、か。


 じっくり眺めてみたが、ほとんどの技は俺が習得していないものばかりなので、幸か不幸か気にする必要がない。あ、でも風烈弾もあるな。あれしかまともな魔法の技がないので結構ヤバい。


 あとは、目潰しや急所蹴り、頭部を地面に叩きつける投げ技とか、単なる怪我じゃ済まない攻撃も禁止だ。


 他にもいくつか聞いておいた。有効打とは、禁止攻撃以外で体にヒットさせたもの。防具は剣術実習でつけるものは認められる。実習場より外に出たら敗北。こんなところかな。


「あとは余談ですが、なぜタツロウ殿はご実家への連絡を断ったのですか? 近年決闘裁判が行われていないのは、学生同士の揉め事は、互いの親御様の間で話し合って解決してるからですよ」


 そういうことだったのか……。でもオレの場合は、こんなことで連絡しにくい状況だし、そもそも身分偽ってるからなあ。


「いや……、まあいろいろ事情がありまして」


 笑ってごまかすしかなかった。大体、名ばかりとはいえ皇帝が交渉相手に出ていくのは、相手側としてはどうなんだろうか。それかオヤジにも『貧乏貴族のタカツキー家』として演技してもらうか。どっちにしろだめな気がする。


 ん? でもグーテンベルクはオレの正体知ってるハズ。うっかり忘れてるのか、とぼけて聞いてきたのか、ちょっと不気味だ。でもここは、こちらも知らない振りしておこう。


「まあ、今回は相手側も全員連絡を拒否してますから、どの道こうなったかもしれませんね」


 そりゃそうだろうな、こんな恥ずかしい事件起こしたなんて親に言えないよな。最終的には言うことになるけど、従犯ならまだ言い訳立つし。


「最後に、書面を持ってきて頂いたゲルツ先生より伝言です。『我々の力では、ここまで持っていくのが精一杯だった。あとは、君の武運を祈る』とのことです」


 先生たち、頑張ってくれたんだな。そこまでしてもらったら十分だ。


 オレは差し入れられた夕食をすぐに平らげてしまった。かなりピンチな状況なのに、力が湧いてくるのを感じる。でも食ったら眠くなったので、そのまま朝までぐっすり寝入ってしまった。



 気づいたら朝になっていた。良く寝たのでスッキリした気分だ。起き上がって着替えてると、ノックが聞こえてきた。グーテンベルクが朝食を差し入れに来たんだなと、急いでドアを開けると、キンケルさんが立っていた。


「おはようタツロウ君、朝食です。ここで渡してもいいかな」


 もちろん、キンケルさんが悪いわけでも何でもないのはわかってる。でも、今日という日に朝からこの人と会うのは、何だか縁起が悪い気がする。


「はい、いいですよ」


 オレは簡単な返事のみで朝食を受け取り、すぐにドアを閉めた。いきなり出鼻をくじかれた感じで、昨日からのやる気漲り状態は終了してしまった。


 いや、でもそんなこと気にしてる場合じゃない。今は決闘に勝利する方法を考えることが最優先だ。


 決闘方法はオレに有利なこともいくつかある。まずは剣技のみではなかったこと。魔法に体術、これらを組み合わせて戦う作戦を考えないといけない。


 次に、馬の禁止。ヒューゴは、恐らく馬の扱いに慣れてるだろうから、これはかなり大きい。オレは嗜み程度の乗馬経験しかないから、端から勝負にならない。


 あとは、オレだけ有利なことではないが、何とか武器を弾き飛ばしてやりたい。まともに打ち合いを続けるのはオレの方が不利だ。


 そうして考えてると、すぐに午後が来てしまった。もう覚悟を決めるしかない。いろいろシュミレーションして考えたプランで相手を仕留める、それだけに集中するんだ。


 そしてついに、キンケルさんが迎えに来たので部屋の外に出る。と、ここで予想外のことが起きた。何と、ヒューゴたち3人が隣の部屋から、別の管理人の迎えで出てきたのだ。


 そういうことか、ここは単なる倉庫じゃなくて、謹慎部屋を兼ねてるんだな。だからオレの部屋にも元々洗面所があったのか……。


 ちょっと驚きはしたが、オレはヤツらを睨みつけた。取り巻き2人は目を逸らしたが、ヒューゴは睨み返してきた。いいぜ、この方が気合が入ってきた。絶対お前らに勝ってやるからな!

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