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名ばかり皇帝の跡継ぎに転生させられたけど、オレはこのまま終わるつもりはない  作者: ウエス 端
決闘裁判編

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19/162

19.事件です

 窓から差し込む朝日で目が覚めた。う〜ん、よく寝た。とても爽やかな気分だ。


 しかしゆっくりはしてられない。今日は休息日だがやるべき用事は多い。意を決してベッドから起き上がり、まずは顔を洗って制服に着替え、パンを一つ頬張りながら学校へ向かった。


 休みじゃないのかって? 朝の礼拝があるのだよ。これは毎日行われるので、これだけのために登校しなければならない。


 教室でマルコやサンドラたちと挨拶を交わし、教会から派遣された司祭の挨拶の後に祈りを捧げた。アーベル先生始め教師たちは休日は不在だ。そりゃそうだよな、もし休みなしとかだったら、流石にブラック職場すぎる。


 終わるとオレはさっさと寮に帰って溜まった用事をこなしていく。その中でも一番しんどいのはやはり洗濯だ。手で洗うの自体が重労働だし、何より屋上まで干しに行かねばならない。これだけでグッタリだ。


 そんな調子なので、全て完了したのは夕方になってしまった。腹が減ったので時間が来たら速攻で入浴を済ませて食堂に行き、夕食を貪るように食った。自分が用意した味気ない食事と違ってやはり美味すぎる。


 満足したので自分の部屋に戻る途中、ハタと気づいた。夕方に回収した洗濯物の中に運動着が入っていないことを。あれだけ別の干し台に干してたのだ。ヤバい、明日の魔法実習で必要だというのに!


 オレはやむなくまた階段を屋上まで上っていった。着いた頃には汗をダラダラ流してしまった。せっかく入浴したのになぁ。しばらく休憩してから回収し階段を降りていく。


 やっと1階に到着して部屋に向かう。と言っても手前にあるのは寮の管理人室だけなのですぐだ。


 ドーン!


 その管理人室のドアが突然開いて管理人が飛び出してきたのでオレは回避する間もなく、顔と顔が強くぶつかった。


「イタタタ……、すまない、ぶつかっちゃった。あ、タツロウ君だね、大丈夫?」


 今日の管理人当番はグーテンベルクじゃないな。名前は何だっけな、まだ覚えきれてない。


「いえ、大丈夫です……」


 鼻とおでこが痛いが、まあ大したことは無さそうだ。管理人相手に事を大きくしたくないので、オレはこう呟いたらそそくさと部屋に入った。


 しかし何だったんだろうな。随分慌てた様子だったけど、オレに関することではなさそうだ。疲れていたこともあって、オレはあまり気にせずに間もなく眠りについた。



 さて、今日から週明けでいつもの学園生活だ。少しでもみんなに追いつけるように頑張ろう。そんなことを考えながら登校し教室に入った。


 しかし入ってすぐ、いつもと雰囲気が違うことに気がついた。何というか、全然落ち着かないんだよな。


 騒がしくはないが、何となくみんな会話を聞かれないように喋ってるみたいな感じ。それに、男子と女子の間に壁があるかのようによそよそしく見える。


 いつもの席でマルコに話しかける。いや、ここでもいつもと違ってる。サンドラがマルコの隣にいないのだ。


「なんか、変な空気感じるんだけど、何かあったのか?」


 マルコは一瞬、コイツ何言ってるんだと言いたげな表情を見せたあと、口元に左手を添えてから小声で周りを気にしながら話をしてきた。


「タツロウ、ひょっとして昨日の晩に寮で起きた事知らないのかい?」


 昨日は疲れてたので、入浴と夕食を速攻で済ませてすぐ寝たと答えると、なるほどと納得した表情に変わった。


「実は、結構ヤバい事件が起きてね。それで女子側がかなり騒いでるんだよ。あんなことがあったら仕方ないけどね……」


 何だよ、その事件っていうのは、教えてくれよ……と言いかけたところでアーベル先生が教室に入ってきた。


「みなさん、おはようございます。昨日からちょっと騒がしい状況ですけど、それはひとまず置いといて、朝の礼拝と授業に集中しましょう。詳しいことは、できる限り早く調査結果を報告しますから」


 まだ教室内はぎこちない雰囲気だが、先生に従って、オレたちは祈りを捧げた。やれやれ、何があったのか知らないが、人騒がせな話だ。


 礼拝が終わったところで、アーベル先生がオレに向かって大声で話しかけてきた。


「タツロウくーん! 転入の際の手続きに不備が有ってね〜、今からちょっとこっち来てくれるかな」


 何だよ今になって不備とか。やれやれちょっと行ってくるか。


 オレは軽い気持ちで先生の元に歩いていくが、やたら目線を感じる。男子はそこそこだが、女子からはかなり強く感じる。ものすごく嫌な感じだが、ここでいちいち相手してられない。無視してアーベル先生の後に付いて教室を出た。


 先生は無言のまま進んで行き、教室とは違う部屋の前で止まってドアをノックして中に呼びかける。


「アーベルです。タツロウ君を連れてきました」


 手続きの不備だから、ここは事務関係の部屋なんだろうか。しかし中から聞こえてきたのは、どうぞというゲルツ先生の声だった。


 中に入ると、3〜4人用の大型の机と簡単な作りの木の椅子が4つ置かれていて、奥にゲルツ先生が座っていた。何だか生徒指導室みたいなところだな。


「さあ、君はこちらに座って」


 アーベル先生に促されて手前側の席に恐る恐る座る。これから何が始まるのか、どうも嫌な予感がする。


 俺が座ったのを確認後、アーベル先生は奥側に廻り、席に座りながら話しかけてくる。


「申し訳ない、手続きの不備というのはウソです。実は、ちょっとタツロウ君に聞きたいことがありましてね」


 やっぱり、完全に事情聴取モードだ。オレ、週末になんかやらかしたか? でも何も思い当たるものがない。


「まず、昨日の18時頃は何をしてましたか?」


「昨日の18時頃、ですか……。寮の食堂で夕食を食べていました」


 オレは素直に答えた。何もやましいことは無いのだからそのまま答えるしかない。


「食堂を出たのは何時頃?」


「18時10分から15分頃です」


 2人の顔に少し反応があった。いい方なのか悪い方なのかはまだ読み取れないな。


「そうですか……、ちょっと出るのが早すぎませんか?」


「とてもお腹が空いていたので、早食いしてしまいました。それと疲れていたので早く部屋に戻って寝たかったんです」


 2人はまだ少しなんとも言えない反応をしたままだ。そして今度はゲルツ先生から質問が来た。


「自室は1階だったかな? そこにはどうやって戻ったんだ?」


 どうやってって、そんなの玄関側の階段降りなきゃ戻れないだろうが。あ、でもあれのことも一応言っておくか。


「はい、自室は1階で玄関側の階段を降りて戻るのですが、降りる直前に、屋上の干場に洗濯物を干したままにしていたことを思い出して、屋上まで上がりました」


 ここでまた2人に反応があった。若干、しかめっ面になった気がするがどう受け止められたんだろう。


「2階から屋上まで玄関側の階段を上って、洗濯物を取り入れて、また階段を1階まで降りたということで間違いないんだな。時間はどれくらいかかったんだ? 他に一緒に行った者はいなかったのか?」


「はい、それで間違いないです。時間は、往復で30分程度かかったと思います。上ったあと足が疲れて、屋上で休憩もしたので。あと、一人で行きましたし誰ともすれ違っていません」


 30分と一人でというキーワードで反応があった。ちょっと考え込んでる様子だが、何か意味があるんだろうか。


「部屋に戻る直前に何もなかったのか?」


「あ、はい。そうだ、管理人さんが急に部屋から出てきてぶつかってしまいました」


 ここで2人は納得の表情を見せて最後の質問をしてきた。


「その管理人はキンケルさんじゃなかったですか?」


 ああそうだ思い出した、昨日の管理人の名前はキンケルだった。おれはこの問いを肯定した。


「わかりました……。タツロウ君、君も知っての通り、昨日は女子寮の風呂場で覗きがあってね」


「えっ?!」


「んっ?」


 お互いにちょっとニュアンスの違う驚きを返してしまった。覗きなんてオレ知らねーぞ。早く寝たから朝まで誰とも会話してねーし。向こうは意外というか、とぼけてるんじゃないかと疑いが入り混じってる感じだ。


「なるほど、知らなかったと。うーん、それじゃ経緯から話しましょうか。昨日の18時半過ぎ頃に女子寮の管理人に、風呂場の天井の換気口の隙間から覗かれていると通報がありましてね」


 うわぁ、そんなことやるやついるんだな。一体どこのどいつだそのバカは。


「君のクラスメートのヒューゴ君、ゲーツ君、カスパー君だよ」


 ヒューゴのやつ、とうとうやらかしやがったか! あとの二人は、たぶん取り巻きの二人だな。


「それとあと一人、犯人がいるんじゃないかという疑いもありましてね。それがタツロウ君、君なんですよ」


「はぁぁ?」


 ちょっと待てよ! なんでオレが疑われなきゃならないんだよ!

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